【番外編3話】万事解決!
それから数日。
ゲストルームには、アンバー、リゼリオ、ジャックの三人が集まっていた。
「仲直りの準備ができたって話だけどよ……本当か?」
「本当よ。ジャック、準備はいい?」
「…………おう。頼む」
頷いたアンバーは、リゼリオへと視線を送る。
受け取ったリゼリオは、指をパチン鳴らした。
部屋の隅に置いてあった大きな彫像の陰から、モルガナが姿を現す。
合図をするまで隠れているように、と彼女には事前に言い含めてあった。
モルガナを見たジャックは、大きく目を見張った。
「お前、そのドレス……!」
「うん。アンバーと旦那様が買ってきてくれたの。……似合ってる、かな?」
モルガナが着ているのは、深い青色のバルーンドレス。
ウエストに巻かれた水色のサッシュリボンが印象的な、とても可愛らしいドレスだ。
ジャックから聞いた情報を元に、昨日、アンバーとリゼリオが街のドレスショップで購入してきたのだ。
「あぁ。とっても似合うぜ。最高だ。やっぱり俺の予感は間違っていなかった」
「……あ、ありがとう」
顔を赤くしたモルガナは、バツが悪そうに顔を下に向けた。
きっと照れているのだろう。
こんなにもしおらしいモルガナは初めてだ。新鮮で、それでいてとても可愛らしい。
「あ、あのねジャック!」
俯いていた顔をモルガナが上に上げた。
真剣にジャックを見つめる。
「私、あなたに言わなきゃいけないことがあるの……!」
「……俺もだ。お前に謝りたい」
(どうやら一件落着のようね。邪魔者は退散しましょうか)
あとは二人の時間だ。
これ以上ここにいても、邪魔になるだけだろう。
リゼリオの肩を、指でつんつんと叩く。
お熱い二人に悟られないよう細心の注意を払いながら、アンバーとリゼリオは、そっとゲストルームから出て行った。
「丸く収まって良かった。あいつらのことを気遣ってくれて、本当にありがとう」
「ジャックもモルガナも私の大切な友人。当然のことをしたまでです。それでは私、夕食の仕込みに行ってきますね」
今晩の夕食は、オリビア一人で作る予定だ。
今日ばかりは、ジャックを休ませてあげたかった。
「ちょっと待ってくれ。今から俺の部屋へ来てくれないだろうか。そこまで時間はかからないはずだ」
「かしこまりました」
キッチンへ向かおうとしたのだが、予定変更。
その前に、リゼリオの私室へと向かう。
「これを君に渡しくてな」
リゼリオから手渡されたのは、燃えるような真紅のバルーンドレス。
モルガナが着ていたものと、それは色違いだった。
「君の姿が目に浮かんでな。思わず買ってしまったんだ」
モルガナのドレスを買いに行ったタイミングで、リゼリオが購入したのだろう。
会計はすべてリゼリオが行ってくれたので、今の今までまったく知らなかった。
完全なるサプライズだ。
「喜んでくれるだろうか?」
「もちろんです!」
好きな人からプレゼントを貰って、嬉しくない訳がない。
とめどない喜びと感謝が、胸からいっぱいに溢れ出していく。
(それにしても、リゼリオ様にしては器用すぎる立ち回りね)
できすぎたスマートさに、なんだか違和感を感じてしまう。
不器用なリゼリオらしくない。
「ところで、ジャックが言っていたのだが、俺の発言で困っているというのは本当か? それならば、具体的にどこがどう困っているのか教えてくれないか。今すぐ改善するから」
(あ、いつものリゼリオ様に戻ったわ)
必死なその姿は、よく見知ったリゼリオだった。
帰ってきてくれたことに安心感を覚える。
「困ることがあるのは本当です。でも、教えてあげません」
「なぜだ……。それでは、治しようがないではないか」
「それはですね……今のままのリゼリオ様が大好きだからです!」
生真面目で不器用。
そんなリゼリオのことが、アンバーは世界一大好きなのだ。
これからもずっと、今のままでいて欲しいと願っている。
そんな気持ちを伝えられたリゼリオは、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
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それではまた、次回作でお会いしましょう!




