他国にダンジョンを知られたくない
「ピザが食べたい」
ピーコロ村のピザ狂い3人衆の1人アルルは身体からピザを切らしていた。
いつもなら自警団の訓練が終わるとツタで体を持ち上げ障害物や家を飛び越し、他の2人よりも早くパン屋に到着していた。
しかし訓練と言うなの畑仕事や建設・土木作業により終わるのが遅くなったのだ。
忙しくなったのはアルルだけではなくピーコロ村の住民だけでなくナツメグ国全体が忙しくなったのだ。
ダンジョン調査後、国がダンジョンを成長させようとダンジョンマスターの青年に協力し、いい感じにダンジョンは成長と調整をし外海からの人間を沢山呼び寄せられると判断したのだ。
多くの人間を受け入れるのに今のナツメグ国は発展不足、今まで島に来る人間のための宿屋も小さいのが数件しか国にない始末である。
他国の協力を借りれば国の権利にも経済にも大きく利益を取られてしまうため、他国には知られないようになるべく自国のみで発展させようという目論見だ。
ピーコロ村にいる領主は嘆く。
「人も物も足りない」
この国の王都は人はなんとか足りていて物資は国外からダンジョンのことを気づかれないように手に入れている。
港がある王都からピーコロ村まで2つの村があり人も物資も中々回ってこない。
ダンジョンのことは遅かれ早かれ国外に漏れる。すぐには大量の人間が来ないだろうがその準備をしなければならない。
領主が優先したのは宿と食料、そして村に録でもない人間から守るための外壁と村を守る人間。
2番目にダンジョンから近いこの村は王都並みに発展するだろう、だからこそ外壁も警備も大きく必要になる。1番はゴリラの獣人の村だがストレスに弱い獣人なためスローライフを続けたいと関わるのを辞退した。
ダンジョンの近くや村との間に新たな村は作らない、ダンジョンマスターが死亡したさいダンジョンのモンスターが暴走し外にあふれ出てくる可能性があるからだ。
ダンジョンマスターが死亡してもダンジョンの機能を残してる場合もあるし譲渡される場合が多い。
ダンジョンの管理を譲渡できる機関には連絡したいがダンジョンのことはまだ外には...いや、そこには連絡できない。
この国の権利も利益も根こそぎ持っていかれるからだ。それに領主には譲ることのできないある計画がある。
「それで、エルフの交渉に送るアルラウネはアルルのみでよいのですかな?」
老執事が領主に訪ねる。
「それしかないな、村長の妻と娘のアルラウネ3人はそういったのできないからな」
アルルは人間とマンドラゴラから産まれたマンドラゴラの変種でありアルラウネの原種である。
村長の妻と娘はアルラウネから産まれたアルラウネであり植物的種族の特徴が強いのだ。
アルルの思考や肉体は母親である猿人よりであるが、植物の種族は基本のんびりして経口摂取を殆どせず肉体も植物よりだ。
ピザの奪い合いをし、ピザに執着し、機敏に動き回り、能力を試行錯誤し戦略的に器用に使うアルルはアルラウネの中ではとてつもなく変わり者なのだ。
「食糧の生産よりも木材の方を優先しなくてはいけないからな、他のアルラウネもアルルのように器用なら3人を食料にまわせるんだが」
普通のアルラウネの場合能力の使い方は単純だ、それと違いアルルの植物操作は繊細である。
作物を育てる場合普通のアルラウネに植物操作で成長させた場合、一気に成長させるだけで味も栄養バランスも悪く最悪だ。
木を成長させても中身の密度は薄く大きいだけの色々と弱い木にしかならない。
アルルに任せた場合味や栄養バランスはアルルにも難しいため成長を味も栄養も損なわない程度に成長促進を数日に分けて行い、味も栄養も落とさない少し大きい作物を少し早く収穫できる。
アルルはその能力と薬屋として作ったある薬のお陰でこの国に住むエルフ達から友好的で木材の交渉に有効だ。
「木材の交渉代わりにしばらくこき使われそうだから帰るのは遅くなりそうだな」
執務室の扉をノックする音がする。
入ってきたのは。
「なにかようかワトソン」
「ワトソンじゃありません、村長が引退したいようです」
「村長殿が?理由はなんですかな?」
「新しくなる村に古い人間では対応した考えができないからな若い者に任せたいとのことです」
領主は否定しない。ダンジョンについての会議を何度か開いたが話しについていけない感じだったからだ。
「わかった、受理しよう。今まで頑張ってくれてたのを労いたい。なんかいい贈り物とかないか?」
「妊娠しましたから酸っぱいものとかどうでしょう?」
領主と老執事は固まる、村長は男のはずだぞと。
ああ、そういえば妻はアルラウネだったな、男が妊娠しても可笑しくないなと2人は思った。
村長は妊娠したのもあっての引退だった。
ちなみに2人の娘も村長が産んでいる。
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