ダンジョンマスターと神に背いた男
アルルの必殺が放たれる。
その一撃は敵を貫くこともなく簡単に下から払われた。
その武器は最初に使った持ち主が生きてるうちは他の者は使えないクウガがダンジョンで得た武器だ。そのため回転することはない。そしてアルルは魔力がなく魔法を使うことができないためクウガのような身体強化での加速ができない。
黒い靄によって感覚は研ぎ澄まされたて力が湧いたがそれは微々たるもの。思っていたよりも遅すぎる攻撃に払う行動にでられた。
空洞鎧は払った剣を斬るために振り上げて下ろす。槍の柄の部分で受けることもできる、後ろに下がって回避もできる。
だがアルルは前にでた。
アルルの腕が切り落とされ鎧は壊れ服も破れる。
アルルは切り落とされた腕に集中する、それは最初の宝箱の罠で腕を生やしたときと同じように。
どれだけ強力な石ころでも川の流れには逆らうことはできない、そういう光景がクウガの目に映る。
空洞鎧に向けられた切られた腕から放射状に植物のツタが放たれ石は壁に打ち付けられた。剣を持った腕を動かすが押し返される、ツタの圧力が増していく。
抵抗しようと動かした両手両足が全く動かない。
ツタの圧力がじわじわと増していく、空洞鎧が悲鳴を上げる。
鎧から鉄が曲がり潰れていく悲鳴が。
全身の鎧が潰れた瞬間、空洞鎧は粒子になり打ち付けられた壁に吸い込まれていく。
アルルはツタの中にあった物がなくなった感覚を感じるとその場に崩れ落ちる。
「アルル!」
クウガはまともに動かない身体を無理にでも動かし駆け寄る。
「......食べ物」
「グリーン!荷物持ってこい!」
体に巻き付いていたツタを壁に擦り付けて壊し、脱出に成功したばかりのグリーンに声がかかる。
「それが人に物を頼む態度!私に頼み事するならそれ相応の!」
「宝箱の鍵を開けて調査に貢献したことの報告と領主への面会でどうだ」
グリーンが荷物を持ち走ってくる、気持ち悪い笑顔だ。頭の中はついに始まるイケメン領主とあれこれで賑やかだ。
だが頭の中が賑やかで足元がお留守になり、アルルの前で転ぶ。思わずアルルの壊れた鎧と服に手を伸ばし掴んで倒れ、さらに壊してしまう。
グリーンはアルルの足の間に倒れ痛がりながら顔を上げる。
「え!?つ、付いてるぅ!!」
クウガは無視して食べ物と飲み物をアルルに与える。植物の種族は両性が割といる、男性のものと女性の物語付いてる場合もある。アルラウネの種族は両性だ。
つまりどっちも付いてお得と言うことである。
その後気絶した兵士達を起こし、破けた服は鎧の当て布(鎧と体の間に入れる布)とツタでなんとかした。大量のツタを見て兵士達が驚きの表情をした後、その場で休憩が行われた。
休憩が終わり扉を正面から離れて開ける。
そこにあったのは蒼く輝く魔方陣と下に続く階段、そして異質な鍵のかかった扉があった。
「この魔方陣が地上に戻るものでいいのか?」
「そうじゃないのか?看板にも書いてあるし」
ご丁寧に近くの看板にも『こちらから地上に戻れます』と書かれているのだ。
「入り口の件といいさっきの弱い雑魚からの強すぎるボスといいこの魔方陣も信用できないな」
「下の階をちょっと見てから考えましょう」
下には工事中と書かれた看板があり行き止まりとなっていた。
嬉しそうな声が響く。
「開いたわ!」
グリーンが勝手に異質な扉の鍵を解錠して開けたようだ。
「全員下がれ!」
グリーン以外の全員が扉から離れる。
......しかし何も起こらなかった。
「勝手に行動するなと何度言ったら!」
クウガはグリーンに怒りながら近づき扉に目をやると。
目があった。
そこには男の異世界人がだらしない部屋着で納豆をかき混ぜていた、食事中だった。
「えっ?誰?」
青年が驚いた顔で見てくる。
「このダンジョンを作った異世界人だな?」
「そうだけど、どうやって入ったの?入ると分かるはずなのに?」
「それと異世界人ってよく分かったね、って当たり前か...こんな格好してたら」
「それもあるが、これがないからだ」
クウガが尻尾を見せる。
「何それ!?」
兵士も自分の尻尾を見せる、グリーンにも付いている。異世界人から見てこの世界の人間に当たる種族は猿人である。
この世界のでは対話ができる知能ある生き物は種族が違えど人間と言われる。つまり異世界人は人間の種族は猿人だが尻尾がない生き物として見られている。
「こっちの世界の人間って尻尾が生えてるの!?」
アルルも尻尾を見せる。
「その子も!?」
ツタで生やした偽物である、驚きっぷりが面白くからかってしまったのだ、つまりお茶目なのである。
「俺達はこのダンジョンの調査でここに来た」
そしてクウガ達はこのダンジョンの疑問を聞いていった。
「え!?5人しか入れなかった!?そんな馬鹿な!?」
「出口がなくなった?10階層ごとに外に脱出できるからいいかなと」
「モンスターが弱いのはまだダンジョンのポイントが足りないから強いのが配置できないんだよ」
「階層の雰囲気が階層ごとに違うのは階層ごとにランダムにしてるんだよ。入る度に違うダンジョンにしたかったからね」
「宝箱が全部鍵付きでトラップがエグい?両方とも確率は低くしてるんだけど?」
「モンスターが弱いのに鎧が強すぎた?あれ、10階層で一番低確率なのに」
「鎧が合体した!?あれは今のこのダンジョン1番強いからもっと下の階層用にでする予定だったんだけど鎧たちに話し聞いてみる」
そういって現れたのは3体の空洞鎧達、この青年は空洞鎧と話せるようだ。
「自分達がランダムで選ばれたうえにずっと待ってたお客さんがやっと来てくれたから楽しくなっちゃっただって」
「自分達はイレギュラー過ぎるから殺さず倒したら魔方陣に放り込むつもりだったんだって」
とりあえず色々聞いたがこのダンジョンは調整不十分らしい。
この世界のダンジョンに出てくる異形のモンスターと異世界人のモンスターの違いを言ったが選べるのが決まってるらしい、一応ポイントを使うがカスタマイズはできるようだ。
この世界に来て2週間程立つらしい。青年が今のところ動けるのはダンジョン内部のみだと言う。クウガ達が何で調査でしたかも説明した。結果、こちらに協力してくれるそうだ。
ダンジョンが発展すれば国に人が来て潤う、国に人が来てダンジョンに来る人が増えればダンジョンが発展する、WinWinだ。これから何度も打合せしてダンジョンも調整していくことになった。
「参考までに君たちのステータス見せてよ」
この世界にはステータスを見る能力や物はないが異世界人は持ってるのもいる、青年は持ってるようだ。兵士達にどれくらいでその強さになったのかを聞いた、そしてグリーンも見た。
「えっ!?死に戻り!異世界人の子孫!」
「お前、そんな能力持ってたのか。なのになんであんな行動にでたんだ、もしかして俺達を」
「違うわよ!この島に来たのは今回のループが初めてよ!知ってたらこんなゴミばかり手に入れてないわよ!」
グリーンが入手した宝箱の中身をリュックから見せる、ボロボロの片足のブーツの他に竹とんぼとけん玉である。ちなみに竹とんぼとけん玉もこの世界では広まっていて全く珍しくない。
4つ目のアルルが開けたものは拳の半分の大きさの銅の塊である。
「私がなんで死に戻りできるのかと思ってたけど先祖に異世界人がいたからなのね」
異世界に来て能力を得た異世界人から産まれた子供は何らかの能力を手に入れる可能性がある。手に入れる確率は代を重ねるごとに減っていく。
「死に戻りだけじゃない、不幸と悪運も付いてる」
まさかの3つの能力持ちだった、異世界人の子孫でこれはとんでもないレアである。
兵士は怒った。
「やっぱりあんたのせいで俺達は酷い目に遭ったということか、グリーン!あんたは2度ダンジョンに入るな!」
「そんな!あたしの一攫千金!」
「そんなに入りたかったら自分1人だけで入ってくれ!」
グリーンと兵士がギャーギャー言っているのを青年は無視してアルルとクウガのを見た。
クウガとアルルのステータスは見ることができなかった。
「何も見えない」
「ステータスを見るのも不備があるのか?」
「ダンジョンに配置するモンスターで試してきたけど今まで大丈夫だったんだよ」
「もしかして異能事態になんらか不備があるのか?」
青年がこの世界に来て2週間程、使い始めたばかりの能力の不備も探すのに協力していくことになった。
そして5人は地上に戻った。
数日後の領主の屋敷の執務室、そこには領主とアルル達と一緒にダンジョンに入った兵士2人がいる。
「報告は以上か?」
「はい、最初のダンジョン調査から地上に戻り何度かメンバーも入れ替えましたが報告は以上です」
「その報告の内容は彼らは気づいてないんだな?」
「彼らはダンジョンの不備としか思ってしかいません」
「彼らが2人がメンバーとして入った時だけ5人しか入れないか...」
「ナイフを投げた後気を失いましたが、すぐに目を覚まし見た黒い靄が移り変わるのを見るとやはり普通の黒化とは違うようです」
「その後の2人の人格に変わったところは有りませんが、クウガが意識していないと靄で強化できないのと違いアルルは意識しないでも使えるようでした」
「やはり普通の黒化とは根本的に違うのか、引き続き気づいたことがあったら報告頼む」
「何故そこまで気になるのですか?通常の黒化と違い僅かな強化しかされてないようですが」
もう1人の兵士が答える。
「黒化した王子暴走の事件があるだろ、頭にまで黒化の影響がでて見境なく暴れ多くの人間を殺した事件、黒化した人間で唯一狂った事件が。変わった黒化だから同じ可能性があるんじゃないか?」
「その事件はそれが真実ではないという説もある、それに新しい現象なら調べて起きたいからな」
そして兵士2人は部屋を後にした。
領主が呟く。
「神の啓示なんて言ったら正気を疑われるだろうし困ったもんだ、私が神に中指を立てていられるよう友人のままでいて欲しいもんだ」
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