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黒い霧と夢の記憶

 階層が進むほどモンスターが強くなるものだが上の階のモンスターの数が増えたのがでたり強さにあまり差がないようなのがでたりクウガにとってあまりに温すぎるダンジョンだった。そして出で来るものは既存の生物を元にしたものばかりだ。そして階層ごとに階層の中身が違った。


 最初に入ったときの階層のみが普通の洞窟で、進むと壁が煉瓦だったり土の塊だったり草原や廃墟だったりした。この異質な感じは異世界人のダンジョンなのはほぼ間違いないとクウガは肌で感じた。そして未完成と言うのが本当ならこの難易度も納得がいった。


 罠が全ての宝物に凶悪なのが掛けられていて酷かったのも未完成だからだといいんだがと思った。


 グリーンの4度目の宝箱の後もう一つ宝箱があったが、縛られたまま宝箱に向かおうとするグリーンを兵士2人が取り押さえてるうちに、アルルが部屋の外からツタで開けようとしたが開かず地面に叩き壊すこととなった。


 壊れた箱からは針が飛び出してきたが部屋の中の明後日の方向に飛んでいった。


 扉を開けるが見た目の大きさとは違い軽く開く。扉のみを開いて中を見るとそこは広い石造りの部屋であり、向こうには扉の前に3体の中身の無い鎧が剣と盾を持っている。


 真ん中の鎧が剣でこっちに来なと誘っている、全員今までの敵とは違う感じた。


「ファイア・アロー!」


「ロックショット!」


 打ち合わせ通り部屋の外から攻撃を仕掛ける、兵士2人の矢のように飛ぶ炎と石を放つ魔法、そしてアルルのツタが数本掴みに行く。敵の距離がいきなり近づく、まるでテレポートしたかのように。


 違う、アルル達が5人が部屋の中にテレポートしたのだ、入口は閉まってしまった。


 セコいまねは通用しなかったかとクウガは思った、この未完成のダンジョンなら他のダンジョンで通じた手が通じるかもと考えたのだ。


 兵士の魔法は盾で防がれ、アルルのツタは突然のテレポートで距離感が狂い軌道修正する。その隙を突いてツタに狙われた空洞鎧はツタを切りながらアルルを標的と定め切り進む。


 クウガはそこに割って入ろうとするがもう1体が剣を突きだし割ってはいる。その空洞鎧はお前の相手は俺だと言うような雰囲気を醸し出しクウガに対峙する。


 2人の兵士の前には残りの1体が立ち塞がる、お前らは俺と遊ぼうぜと声をだせたなら言っていただろう。


 グリーンは簀巻き状態で体をイモムシみたいに必死に動かし部屋の隅へと避難した。


 アルルに突っ込んできた空洞鎧は剣を突きだすが、アルルは剣を槍で防御しツタで武器を持ち攻撃するがツタに持たせた武器での攻撃の威力が小さくダメージはない。


 剣による攻撃と槍による防御が繰り返されるなかツタによる攻撃は無視されていたが、空洞鎧は左手に握っていた盾を腕に通し空いた手でツタを掴みに引っ張る、がアルルはそのツタを腕から分離する。


 ツタを引っ張り相手の体勢を崩して隙を作ろうとした空洞鎧の方に隙ができる。アルルは自らの背後にいくつものツタで束ね持たせた戦斧でその隙を狙う。


 だが空洞鎧は自分に隙ができたときに下がる行動を選択しており、その斧は躱される。アルルが槍で防御してた時の戦い方から何かを狙ってるのを感じていた。躱した空洞鎧は戦斧を持ったツタを剣で切り裂き、斧を握ったツタは空洞鎧の近くに落ちた。


 空洞鎧はアルルに顔を向けこれが狙っていたことかい?とでも言うような雰囲気を見せた後近づいてくる。


 アルルの狙いはそれであった、その狙いが空洞鎧の片足を吹き飛ばす。戦斧を持った切り裂かれたツタが空洞鎧を狙って動いたのである。アルルはツタを束ねて斧を握ったのは威力を増すためだけではない。


 束ねたツタに特定の動きをするように命令を与えていた。


”近くで動く物に攻撃しろ”それがツタに与えられた行動だ。


 自分のツタに行動を指定し、ツタを離れたところでも動かせるアルルのアルラウネとしての能力である。




 クウガも体から黒い霧を発生させている。クウガの前に立ち塞がった空洞鎧は剣で斬りかかるもクウガのランスのさばきに圧され後方に吹き飛ばされる。


 その瞬間クウガは必殺の構えに入る、ランスの先の溝のある円錐形が回転し身体能力強化の魔法を発揮させる。


 空洞鎧は何か来ると思った瞬間それはとてつもない速度で突撃してきた。


 剣を突きだそうとすれば剣ごと体を破壊される、躱そうとしても完全に回避はできず大きい損傷を負いその先は敗北しかない。その技は空洞鎧の体を破壊した、空洞鎧のとった行動は盾での防御だった。


 その選択はなんの意味も成さずに空洞鎧は敗北した。




 2人の兵士を相手にした空洞鎧は押されていた。兵士の中でも上位の実力がある2人の連携によって成す術がない。空洞鎧は1体1だったとしても兵士に勝つことはできない程技量に差があった、勝負がすぐつかないのは鎧のみの体の頑丈さがあるからだ。


 肉体があったら鎧の隙間を狙われ早々倒されていただろう。


 兵士の1人がナイフを出し全力で投げる、魔法による身体能力強化をナイフを投げるのに有効な筋肉にのみ施した投合は足の関節部分に突き刺さる。


 突き刺さったナイフが動きを妨げ、さらに追い込まれ勝敗は決まった。




「たいしたことない奴らね」


 部屋のすみにのグリーンがいつの間にか口のツタをずらして勝ち誇っていた。


 3体の空洞鎧の体が突然粒子となり分解されていく。


「これが他のダンジョンならこの先に地上に戻れる装置があることが多いんだがあるといいな。帰ったらひと風呂浴びたい」


「村に帰ったら光合成しながらピザ食べたい」


「飼ってる猫に子供が産まれるからなんとしてでも帰ってみせる」


「帰れたら俺、告白するんだ」


 フラグを空洞鎧は裏切らなかった。


 粒子は1ヶ所に集まり混ざり、先程の空洞鎧よりも頭1つ高く頑丈そうな見た目で2本の剣を持ち復活する。


 アルル達に第2ラウンドといこうぜとも言うような雰囲気を見せる。


 アルルは腰の入れ物から丸薬を取り出し噛み砕く、父に調合してもらった高栄養の補給薬だ。ここに来るまでと先の戦いでエネルギーを使いすぎたのだ。


「何度甦えっても同じよ!さあ僕達!やっておしまい!!」


「ファイア・アロー」


 牽制の攻撃を放った兵士に向け突撃しながら炎を斬り裂さく。


 でかくなったのに速度は上がっておりその速度と上がった力から振るわれた剣は槍で防御した兵士を飛ばす。その隙をつきもう1人の兵士が攻撃をするがもう1つの剣で武器を払われ蹴りを受けた。


 その瞬間クウガの必殺技がすぐそこまで迫る、攻撃を空洞鎧は無理矢理体勢を整えながら剣で流そうとする。受け流しは成功したが剣が1つ砕け散る、受け流されるままクウガは相手との距離をとる。


 距離をとったクウガが見たのは空洞鎧の両手両足をアルルのツタが掴んでいる光景だった。


 敵の背後から掴んだアルルはツタでバランスを崩すのと、束ねたツタの斧での攻撃を同時に行う瞬間、空洞鎧はそれを無視しクウガに突撃した。


 その突撃によりアルルは引きずられる形になり頭を狙った斧は空洞鎧の肩に突き刺さる。突撃してくる空洞鎧にクウガは必殺技の構えを取る間がなくランスと剣の攻防が始まる。


 立ち上がったアルルは攻撃を遅らせるためツタを手も使って引っ張る、そのツタには斧を持ったツタも含まれている。突き刺さった斧は抜ける様子をみせなかった。その攻防に参加した兵士の槍が当たるが分厚くなった鎧には浅い傷を付けるだけだった。


 蹴り飛ばされた兵士の足の関節を狙った投げナイフは足を反らし関節からずらされる。足の鎧の丸みもあって刺さることはなく、ナイフを投げた兵士は気を失った。蹴りにより気を失う前の最後の攻撃だったようだ。


 足をあげバランスが悪くなった所をクウガは狙うが剣で阻まれそこを突いてきた兵士の槍を引っ張り兵士を引き込んだ。クウガと空洞鎧の間に挟まる形となった兵士を空洞鎧はクウガに突飛ばす。


 空洞鎧は兵士を受け取ったクウガごと蹴り飛ばした。


 空洞鎧は両手両足のツタを切りクウガへと向かうがクウガは覆い被さった気絶した兵士から完全に抜け出せておらず、動きもぎこちないものとなっていた。


 回復系統の薬や魔法の使いすぎによる身体への負担は予想以上にでていたのである。上半身だけ立ち上がった状態から振り下ろされた剣をランスで受け再び蹴りが放たれる。


 蹴りを食らったクウガはなんとか立ち上がりランスを構えようとするがランスの柄が後の壁にぶつかる、蹴りにより壁際まで吹き飛ばされたのだ。


 その壁の近くにいたグリーンは悲鳴を上げ逃げ出すが空洞鎧からは完全に無視されている。クウガに近づこうとする空洞鎧の背中に衝撃が伝わる。


 アルルが全力で槍で突いたのである。


 しかしアルルは消耗が早くなる植物操作で自身の身体能力を上げた力でも突き刺ささらずアルルは掴まれクウガの元に投げ飛ばされる。


「大丈夫か、アルル」


「私はまだいける、どうしたらいい兄さん?」


「すまん、策もないし体もまともに動かない」


 クウガは現状を変えたいがどうすればいいかわからない表情をする。空洞鎧は余裕なのかゆっくりとした足取りで近づいてくる。


 アルルの頭に何かが過る、それは策ではない。


 時々思い出す子供の頃に見た風景、そこは間違いなくこの大陸の村がある場所だ。だけど村はなく、ただ広い平原に今とは違う自分がずっと一人でいたこと。


 だけどそこに明らかに栄養が足りてない肌の色が違う少年が来た。ときおり襲ってくる生き物と違い敵意はなかったし似たような形をしてたから仲間だと思った。


 断片的にしか覚えてないがその少年と一緒に行動するようになり口から食事をし、光合成も土から栄養もとらない少年を同族ではないと理解した。


 敵意が沸いた。


 他の生き物のように自らの栄養にしなければいけない感覚。


 だけど少年も同じ感情を抱かなければいけないのにそんな感情を見せない。


 好奇心に負けたと言うのだろう、そのアルラウネは少年を殺さないと言う間違いを犯した。




 間違えた 間違えた 間違えた 間違えた 間違えた 間違えた 間違えた 間違えた 間違えた 間違えた 間違えた 間違えた 間違えた 間違えた 間違えた 間違えた




 お前が間違えたから世界が壊れた



 血まみれで息を引き取った少年がいる。


 少年は口からしか食べることができないから、少年はいつものように森に食べ物を探しに行った。


 いつもより遅いから森に迎えに行った。


 足に大きな花の生えたアルラウネの足取りは遅かった。


 他の生き物に食われている。


 気づいたら少年の亡骸の前で立ち尽くしていた、近くには少年を食っていた生き物の死骸。


 どうしたらいいか分からない、何をすればいいか分からない。


 ただ間違った相手に本来ないはずの感情を向けた感覚。


 その夢を今までよりも強く思い出す。




 クウガは目を見開く、自分の黒い靄がアルルの中に”帰っていく”のを。かつてアルルの体から自分へ与えられたかのような黒い霧が戻る。


 アルルの身体は黒い靄をだし始める。


 五感が冴え渡り力が湧く感覚がした。


 初めてその夢を見た後、足の大きな花を切り落として足を生やしたことも思い出す。


 口の中に丸薬を全て放り込む。


 兄が持っていたランスを持ち構える、その構えは兄の必殺技と同じ構え。


 空洞鎧は構える、クウガの必殺の危険さを分かっているから。


 アルルの必殺が放たれる。



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