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火力の高い兄と元令嬢は鍵開けに自信あり

 調査隊の人数は16人、移動はクウガの軽トラに改造した荷車を連結する形となった。


 道中巨大な猪が現れたがそれは様子が違った、身体から黒い靄を出しているのだ。だがクウガが出していた霧とは見た目が少し違う。


「黒化した猪か、駆除しといた方がいいな」


 この世界には黒化と言う現象がある。

 黒化する生き物は種類種族性別問わず、生まれつきも突然なることもあり遺伝はしないことが確認されている。黒化すると身体能力が上がり狂暴化すると言われている。


 だが狂暴化は絶対ではない、今こちらを襲おうとしてる巨大な猪は元から狂暴な生き物で黒化したことで身体能力が上がり他の生き物を蹂躙し気が大きく成りすぎているのだ。逃げたり放って置けば誰かが襲われるのは自警団も兵士も見逃せなかった。


 だが理由はそれだけではない。

 調査隊の殆どと巨大猪は思った。


『肉だ』


 獲物を見るような目で巨大猪は見てるがまた自分も同じような目で見られてるのは気が大きくなりすぎた巨大猪は気づかない。


「ほらあんた達、出番よ。私を守るために戦いなさい」


 グリーンが皆を鼓舞する、皆の士気を下げることに成功した。


 突っ込んでくる巨大猪に弓矢が放たれるが黒化により頑丈に成った皮膚には

 浅くしか刺さらず勢いを保ったまま出血しながら突っ込んでくる。


 アルルは言った。


「私にやらせて」


 前の自分だったら無理だったが兵士長から貰ったあれならいけると。アルルは身体から6本のツタを生やす。そのツタには身体や太股、マントに付けている武器が握られていた。


 巨大猪の身体を切り刻もうとするが浅くしか切り付けず効果は薄い




 ように思えた。


 突然巨大猪の脳天が割れて勢いよく進行方向に転がり倒れる。巨大猪は何が起きたのかも知ることなく絶命した。6本のツタは気をまぎらわせ視界を遮るための囮。本命は相手に見えないように隠してた4本のツタで握った兵士長から貰った分厚く頑丈な戦斧である。


 アルルの身体能力は特別高いわけでもなく自警団では同じ年頃のものたちと比べ平均的だ。戦闘技術に関してはアルラウネとしての能力を使わない場合は同じ年頃のなかでは 1・2を争う。


だがアルルには悩みがあった、火力不足だ。


 兄が前に帰国したとき見せて貰ったランスの円錐形部分を回転させ身体能力を魔術で強化させて突撃する攻撃は凄まじかった。


 木を貫き倒したのだ。


 アルルは驚いた。


 エルフは怒った。


 木がものすごい音を立てて変な壊れかで倒し、他の木に倒れかかるようにして折れた。許可をとってたとはいえそういうことするなら先に言ってと怒られた。2人は謝った。


 その結果アルルは強力な攻撃を求めアルラウネとしての能力を模索もしたが問題があり断念した。兄の破壊力に及ばないがツタで斧を叩きつけるのは十分威力はあることで問題を解決したことにした。



     *     *     *



 黒化した生き物は食べても身体に異常はでないが問題があった。肉が固くて味も落ちるのだ。


 クウガが帰ってきた時の猪より味は劣るが肉が満たしてくれるものは変わらない、アルルは身体から出したツタで消耗したエネルギーを補充するため多めに食べた。


 移動が再開される、何故かアルルはツタを出したままだ。今のアルルは出したツタを邪魔にならないように身体に纏わせている。


 グリーンは文句を言った。


「ちょっとあんた、そのツタ仕舞えないの?馬車が狭くなるでしょ」


「戻すことはできないんだよ、外すことはできるけど。作るのに使った栄養が勿体ないので調査が終わるまでこのままいくよ」


 アルラウネとしての能力を使うのは体のエネルギーを必要とする、そのため消費と栄養補給は大切にしているのだ。



     *     *     *



 調査隊はダンジョンの入口に到着した、報告と同じ内容が書かれた看板が立てられている。


『ドラゴンのダンジョン(未完成)』


『パーティーは6人まで』


 来る途中誰が入るかは決めてある。大型クランで色々な冒険、ダンジョン探索の経験のあるクウガ。手練れの兵士3人、自警団からはアルルだ。宝物の鍵開けにグリーン。そして7人目が入れるのか確かめるためもう1人兵士がいる。


 残ったもの立ちは間を空けて入るのと外で待機するもので分けてある。最初のメンバーが入り7人目が入ろうとするが入れない。


 いや、6人目もだ。透明な壁に阻まれ入ることができない。6人目の兵士が入ることができなかった。



     *     *     *



 ダンジョンに入ったクウガは驚いた。


「入口が消えた...」


 今までにないパターンのようだ。そして人数制限通りじゃないのも始めてだった。グリーンが何よこれ!なんで5人しかいないのよと騒いでいる。


「入口の看板から罠だった?」


「ダンジョンの設計ミスか」


 クウガが潜ってきたダンジョンがこの世界の力でできた場合、どういうダンジョンか一切情報はなく手探りで調べていくことになる。異世界人が作った場合は情報が何らかの形で一部開示されてることもある。


 この状況がダンジョン側でない者のイタズラならまだましだ、しかしこれがダンジョン側が悪意をもってやったことならこのダンジョンは危険すぎる。このダンジョンに設計者がいるならミスであって欲しいと願いながら、クウガはランスを構え入口があった場所に技を放った。


 壁は破壊されず欠けることもなかった。この状況にあってもグリーン以外目に見えて慌てるものはいなかった。クランでいくつもの修羅場を潜り抜けてきた2人、兵士として自警団として訓練を受けてきた3人は慌てても行動がろくにできなくなることがわかっているからだ。


 ギャーギャー騒いでるのはグリーンのみである。

 兵士の1人がダンジョンの唯一の経験者のクウガに聞いた。


「こういう場合はどうしたらいいですか?」


「ダンジョンが階層型なら5階層や10階層ごとに外に出られる仕掛けがあるパターンと

どこかに出口に通じる仕掛けがあるパターンがある。回りを慎重に調べながら進んでいこう」


 ダンジョンの中は何故か明るく視界には問題なかった。アルルの伸ばしたツタが進行方向の上下左右の床や壁、怪しいと言われた場所をツタで叩いてみる、このダンジョンの罠がどいういものか探るためだ。


 入口と人数制限の件が悪意あるものなら酷い仕掛けも当然あるだろうと警戒する。慎重にゆっくり進むとドタドタとしたあ足音が聞こえてくる。足音をあげて現れたのは背がとても小さく、角の生えた醜い顔で知性のない表情と細い手足と腹が出てる体をし、緑色の肌をして木の棒を持ったゴブリンである。


 この時異世界人が作ったダンジョンである可能性が高くなった、なぜならこの世界のゴブリンとは見た目が違う。異世界人のダンジョンでよくいるタイプのゴブリンだからだ。この世界のゴブリンは背が少し低く肌が緑色で小さな角が付いてる、見た目も特別醜くはなく知性もある。


 この世界産のダンジョンには表に存在しない生き物や異型の化け物だ。だが異世界人のダンジョンには既存の生物を元にした生物が多い。クウガが異世界人のダンジョンでアルラウネを元にしたようなモンスターが出た時には嫌な気持ちになったものである。


「何よそいつ!気持ち悪い!早くぶっ殺しなさい!あたしを守るのがあんたらの仕事でしょ!!」


 アルルはグリーンのキーキー声にムカつきながら、木の棒を振り上げながら突っ込んでくる異世界ゴブリンをツタで両手両足を拘束すると武器をしまい意志疎通ができるか確認した。


「そちらが戦うつもりがないのならこちらも戦う気はありません......言葉通じてます?」


 ゴブリンはグリーンのようにギャーギャー騒ぎながら握った木の棒を振り回すだけだ。


 アルルはグリーンを除いた3人に目配せすると頷かれ敵を地面に何度も叩きつけ倒した。敵が息をしなくなると溶けて消えていき何も残らなかった。


 その後もゆっくり慎重に進むと出てくるのは大きいネズミやコウモリ等が1匹づつ、最初の入口消失の仕掛け?が嘘のように弱いのしか出てこなかった。まともな装備をしてれば素人でも倒せる敵ばかりである。


「油断はしない方がいい、突然桁違いに強いのがでてくる場合がある」


 調査を続けると行き止まりの部屋に鍵穴の付いた宝箱を見つけた。アルルは部屋の外からツタで宝箱を開けるか叩きつけて壊して開けるかしようとしたが。


「ここはあたしの出番ね!任せなさい!」(お宝キターー!)


 突然グリーンが自信満々で割り込む。


「待て!勝手に行動するなと言っただろ!」


 止めようとしたが間に合わずは素早く宝物を開けようとしていた。クウガは慌てて言った。


「全員!部屋の入口から離れろ!!」


 全員離れたと同時だった。


「開いたわ」


 宝箱の鍵を一瞬で開けたが宝箱の後の壁から平たい何かがグリーンの頭の上を通りすぎる。何かは入口を通り抜け部屋の外の壁を跳ね返り、





 アルルの腕を切断した。


 部屋の外のアルル以外の3人はアルルのなくなった腕を見て呆然とする。


 3人の視線からアルルは自分の腕に気づき自分の落ちた腕と切断した血の付いた刃物を見つけると大声を上げた。


「グリーンさん!何が任せてですか!腕が切られましたよ!!」


「失敗なんかしてないわよ!ちゃんと宝物は開いたでしょ!何よこれ!ゴミじゃない」


 そういってボロボロの片足のみのブーツを見せてくる。アルルはこんなゴミのために自分の腕が台無しなったのかとうんざりした顔をする。兵士の1人が慌てだす。


「早く腕をくっ付けて回復薬を!」


 だがアルルは無くなった腕を伸ばし体にに力を入れると、、突然腕が生えてきた。少し疲れたかのような荒い息をしたアルルは、息を整えると回復薬を薦めた兵士に言った。


「薬使わなくても大丈夫です」


 アルラウネは植物を操る力があるのは知られてるが、自分の体も植物としてある程度操つれて再生できるのは知らない者もいる。アルルが調査に選ばれたのはツタで色々できる応用力と回復力があるからだ。


この場で知らなかったのは兵士の1人と回復薬でくっ付ければ大丈夫だろと思っていたグリーンだけである。


「大丈夫か、少し休むか?」


「大丈夫、兄さん肉と水頂戴」


 受け取ったアルルは再生に使ったエネルギーを補充するためダンジョンに来る途中に狩った猪肉と水を飲んだ。


 妹の腕を吹き飛ばされ怒ったクウガはグリーンに怒った。


「俺は言ったはずだよな!勝手に動くなって!」


「わ、悪かったわよ。勝手なことしなければいいんでしょ」


 グリーンは心の底から申し訳なさそうな顔をした。


 その後、下り階段を見つけこのダンジョンが階層式であることがわかった。調査のためすぐには降りず、最初の階層を全部調べた結果下に行く階段しか見つからなかった。下の階は扉だけがある部屋で開けると上の岩のような洞窟の壁ではなくレンガの壁になっていた。モンスターは弱く上と大差がなく感じた。


 そして再び宝物を見つけた。


「名誉挽回よ!」


 汚名返上である、グリーンがまた止める間もなく勝手に動く。部屋の外に避難してたのに4人は宝物のトラップにより床が開き落ちる。


 アルルがツタをさらに増やし3人を掴んで下に支えるためツタを伸ばして4人とも串刺しにならずにすむ。


 怒った4人にグリーンは心の底から申し訳なさそうに許しをこいた。


「三度目の正直よ!」


 足を引っ張ってる扱いが癪にさわるのでお宝目当てと自分の有能さを見せるため動いた。


 宝物部屋の扉が閉まり部屋の外に避難してた4人に巨大な岩が転がってくる。クウガが技で破壊し4人は生還。


 三度目は許さない仏よりも罵詈雑言で許す心優しい4人にグリーンは本当に心の底から申し訳なさそうに許しをこいた。


「ひゃっほー、宝ーー!」


 学習能力のないグリーンはまたもお宝に飛びつく。実はグリーンは5回世界を死に戻りループしている、だが性根が腐りきっているのと薄っぺらい人間性のせいで禄に学んでいないのだ。


 今度は5人とも宝物部屋にいるが天井が迫ってくる、降りてくる天井に4人が気を取られている間にいつの間にか部屋の外にいるグリーンと閉まっていく入口の扉。グリーンは悪運と危機回避能力が何気に高い、本来なら100回死んでも可笑しくない状況を体験しているが5回の死に戻りですんでいるのだ。


 兵士2人が閉じる扉に間に合い、閉じる重い扉を反対方向に押し閉じるのを防いでなんとか4人は脱出。


 仏よりも優しい4人はツタでグルグル巻きにした後、交代で引きずって行く。グリーンは何かを言ってるが口もツタで巻いてある。


「兄さん、次宝物があったら私がやるね」


「ああ、そうしてくれ」


 曲がり角を曲がったところで兵士が声をかけてきた。


「クウガ、あのドでかい扉ってもしかして」


 今いる階層はキリのいい10階層、そしてあからさまな大きく質のいい扉。


「...ボス部屋だろうな」


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