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脱獄と裏切り

 アルルの母とラティが出会った次の日、2人の面会が領主により許可された。


 昨日は手当てを兵士の方で行うことになりその手で治療はさせてもらえなかったが領主に姪っ子であることを伝えてもらい許可が降りた。


 その許可の決め手となったのは姉妹での手紙のやり取りが途絶えた年月と、手紙と一緒に送られた親子の写真と礼人ゼロである。その写真に写る子供の見た目と今のおおよその見た目年齢が近いことと、礼人ゼロの鑑定により名前に間違いがないことが決め手だ。


 面会は許可されたが兵士の数は多くアルルとクウガも連れてくるよう領主は言った。


「私たちも呼ばれたのは良かったね、自警団をちゃんと休めてお母さんを守れるし」


「兵士達がへましたから守るのに警戒心が強い家族が呼ばれたんだろうな」


「お母さん、ほんとに写真のこの子だったの?」


 そこに写ってたのは父母娘の3人の写真だ。


「ええ、間違いないわ。妹の名前も合ってたし」


「似た容姿に変装して偽ってるかも知れないよ、見た目も10年以上前なんだし」


「そいつが言った雪村不動産ならその可能性はある、大陸で悪質と有名で鑑定の能力を誤魔化すすべもあると思う」


「......間違いないと思うのよ」


 アルル達は地下牢へと通された。


「来てくれたんだ伯母さん」


「手のほうは大丈夫?」


 腕の痛みと時間の経過によりラティは冷静さを取り戻していた。


「うん、大丈夫。そっちの人達は?」


「うちの子供達よ、兄のクウガと妹のアルルよ」


「あ!兄と妹!!?」


 取り戻した冷静さは再び失わされ一気にテンションが上がった。


「クウガお兄ちゃんとアルルちゃんね!!わ、私はラティ!よろしく!!」


 あまりのテンションの高さにアルルとクウガは引いてしまう。


「あ、ああよろしく」


「...よろしく」


「なあアルルちょっとこっち来い」


 クウガとアルルはラティのいる牢から離れて話した。


「色々と可笑しいが油断させようとしてるのかも知れんから気をつけた方がいい」


「分かってる、ちゃんと警戒しておく」


 それから数日、アルルとクウガを連れて母は毎日訪れた。


 ラティは何でも話した、過去に何があり組織や会社の細かい事情までも。兵士に言われアルルとクウガも同じ質問をしたが内容は同じであった。


 謎のままの過去の事件や、世間では知られてない裏の出来事に、闇の取引等何でも話してくれた。


 アルルとクウガは領主のいる執務室にいた。


「彼女が言ってることは国の外のことだから一部しか確認が取れてないが信憑性は高いようだ」


「でも怪しいんですよ、今日も」


『アルルちゃんピザが好物なんだぁ、お姉ちゃんピザ作れるんだ。お外に出れたら好きなだけピザ作って上げるね』


「って牢の外に出ることを主張してますし牢から出るチャンスを狙ってるように思えます」


「アルル、流石にそれで牢から出すべきだと少しも思ってないよな?」


「............」


「ゆさぶられてるんじゃねえか」


「よし、牢から出そう」


「おい、領主!何言ってんだ!」


「流石にそれは、もちろん拘束してですよね?」


「......今すぐにって訳ではない、もう少し様子を見てからだ」


 その日の夜、牢屋で再び事件が起こった。



   *    *     *



 グリーンは牢屋で自分のブラジャーを外した。


「汚いもの見せるんじゃないわよ。ストリップでも始めるつもり」


「黙れ汚物、ここからだ出するのよ」


「色仕掛けでもするつもり?あんたじゃ底辺の非モテすら落とせないわよ」


 ミドリが地球で婚活してた時の実体験からくる言葉である。もちろんそんな体験しておきながら自分の場合は同じような形になっただけで相手に見る目がないからと思い込んでる。


「あたしの貴重な魅惑の体を価値のない男なんかに見せるわけ無いでしょ。これを使うのよ」


 グリーンはブラジャーからワイヤーを取り出し捻じ曲げて、牢屋の鍵に差し込み鍵を開けた。

 だが腕の良いグリーンにしては異様に時間が掛かった。鍵を開けた後苦戦したかのように倒れ込んだ。


「難解な錠だったわ、もう疲れちゃった。あなただけでも逃げて、ミドリ。私は逃げるのを諦めたわ。あなたの王子様とお幸せにね」


「ありがとうグリーン。安心して、あなたの優しさはちゃんと伝えておくわ」


 グリーンはミドリを逃がしてそれを囮に逃げるつもりである。馬鹿な女だとグリーンはほくそ笑んだ。

 ミドリが出ていった後もう1人も逃がしてチャンスを増やそうと、ラティの牢の鍵を開け壁に固定された手錠も外した。


「あんたも逃げなさい、そして脱出できたら私に一生感謝して貢物を捧げなさい。貢物は高価な貴金属ぐらいでいいわよ」


 グリーンがラティの牢から出るとすぐに外に出たはずのミドリは兵士を連れ戻って来た。

 ラティは牢の扉を閉めて手錠が掛かってる時の姿勢に戻った。


「この女が牢の鍵を開けて逃げようとしたんです。私はちゃんと償うつもりだったのに!!」


 罪と向かい合う強く清らかな女性を演じその綺麗な心で領主を射止めるのがミドリ計画だ。


「この糞女!!恩を仇で返す気か!!!」


「この醜い表情がこの女の本性です!私は逃げたりしません!早く捕まえて下さい!そして私の清らかさを領主にお伝えください!!」


 2人は再び牢屋へ入れられた。


「出せーー!!」


「私はこの女に無理矢理逃げらされただけなんです!!」


 ラティは、なんなのこの人達、怖いと思った。

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