クマと令嬢と発情状態
「アルルさん起きてください!あの2人がいなくなったそうです!集会所に来てください!」
夜中に起こされアルルは集会所に向かった。
「気付いたらあの2人がいなかったんです、誰も見てないって」
「村を見回ったが見つからなかったぞ、もしかして村の外に」
「...そうみたいです。私達が村に来た方向に向かったそうです」
「わかるのかアルル、さっき起きて来たばかりだろ」
アルルは腕にある機械を見せる。
機械には画面に回りの生命反応を点で表示する機能がある。2つの点が村から離れるように動いている。
* * *
2人は逃げた、逃げた理由はそれぞれ違う。
ミドリは盗み聞きで領主と聞き、エルフが自分の魅力を理解できないダメなヤツ等だが領主が私を見ればその美しさに惚れ込み、働かずにすむ贅沢三昧が始まると思っているのだ。そのために薬を売ったお金を元手にして儲けるよりそのお金で身綺麗にし、確実に落とせるようにしようと考えている。
もちろん想像の中の領主は領主な容姿ではなくキラキラ光る王子様なイケメンだ。
ほんの少しの苦労も嫌で、早く贅沢三昧したいとピーコロ村を目指すことにした。
グリーンは見る目のないエルフじゃなく、やはり領主を落とすことにした。
ミドリを皆の前で盗みを働いた泥棒だと断罪して、その功績で領主にお眼鏡に叶おうと考えたのだ。
村の外に馬車があるためそれで逃げるつもりだ。馬の扱いを2人は知らない、ムチで叩けば動くんでしょと思っている。
何もかもが完璧なガバガバな作戦である。
熊や猪がいるのにこんな行動にでたのは、獣も夜は寝てるでしょという慢心からである。
だが森の中は荒れていた、アルル達がダンジョンに向かう途中に倒した黒化した巨大猪によってこの森に獣達は逃げてきたのだ。
黒化した巨大猪が死んだことを知らない獣達により、この森の危険度は上がっている。
複数人でいれば獣も警戒して襲って来ないだろうがたった2人で動いてるのは格好の獲物だ。案の定2人は獣に襲われバラバラに逃げてしまった。
そして
「来ないで~!!」
グリーンは巨大な生き物に追われていた、巨体はグリーンへの距離をどんどん縮めて行く。
そしてその巨体の手はミドリを乱暴に掴んだ。
「いや~!!助けて領主様~!!」
「いい加減にしろ!!この馬鹿ものが!!」
追っていた巨体は神父だった、遅れて一緒に行動してた者も追いつく。
グリーンを狙っていた獣は突然現れた巨体とその仲間に獲物を諦め気づかれずに去っていった。
グリーンは神父の脇に抱えられ暴れている。
嫌!離して!犯される!とか叫んでいる。
仲間が空に向かって火の魔法を放つ見つかったという合図だ。
「すぐに村に戻るぞ、こいつを届けたらアルルの方に向かう」
グリーンの確保が終わった一方アルルの方は。
1人機械で位置を確認しながらツタで木に飛び移りながら素早く移動していた。
仲間達には方角を示し遠く離れてる方を追った。
センサーの点は生命反応を表している、特定の生命反応に点の色や形を変えて表すこともできる。ミドリの点である赤いドクロマークに何らかの生き物の点が近くにいる。アルルは更に速度を上げる。ちなみにグリーンの点も赤いドクロマークだ。
その頃ミドリは。
「ギャーーー!!クマーーー!!誰か助けてーーー!!こっち来ないでーーー!!」
熊に遭遇していた。腰を抜かしたため熊へ視線を向けたままだ、もし腰を抜かしてなかったら振り返り逃げようとした所を一気に襲われただろう。
ミドリは近くに会ったものを手当たり次第に投げる、石や木の棒や葉っぱなどを。運がいいことに投げたものが熊に全然当たらない。当たってたら熊が興奮して一気に襲いかかってただろう。
ガチャーーーン!!
あっ、当たっちゃった。
どうやら投げたのはアルルの薬入りの瓶のようだ。熊の顔に当たり、顔は液体まみれだ。
ミドリの顔も液体まみれだ、熊に当たっても薬入りの瓶を更に投げた。その瓶は近くの木に当たり、ミドリに跳ね返り、瓶の中身をぶち撒ける。
顔に当たったミドリと熊の口の中に薬が入ってしまった。顔に瓶が当たったことで熊は獲物を睨む、ミドリも恐怖の表情を浮かべながら熊を見る。
熊は酷い興奮状態だ。
ミドリも酷い興奮状態だ。
ミドリと熊はものすごいムラムラした。
瓶の中身の薬は強力な媚薬だ、性欲がほとんどないエルフですらも獣の如く変えるほどの。
エルフは長寿種で子供を残す本能が滅多に沸かない、そのため絶滅の危険がある。異世界人が広めた普通の媚薬は効果があったが微々たるものだ。
だがアルルのは違う。
アルラウネには媚薬効果がある、アルルのお風呂の湯から凝縮した成分も混ぜて作った媚薬だ。
アルルの植物操作で、自分の体からその成分をお風呂に出して作った強力なやつだ。
エルフ以外の普通の生き物なら理性が持たないほど強力で、3日は休まず続けられるほどだ。
熊がミドリに覆いかぶさる。熊は運がいいことに雄だ、雌なら食われてた可能性がある。
あまりにムラムラしたミドリは熊がイケメン熊に見えてしまう。我慢できず、もう熊でもいいやと思ってしまってる。
暗い森に月の光が2人を祝福するかのように照らす。
月の光により何かが月の光を反射し光る。
アルルの斧だ。
アルルの斧は熊の後頭部に突き刺さり一撃で絶命させる。
ミドリが呻く、覆いかぶさった熊の下敷きになったのだ。
「んううぅぅぅ!」
「無事だったか、んっ!?」
アルルの目に割れた媚薬の瓶が映る、アルルは怒った低い声で言った。
「みんな必死に探してたのに熊とよろしくやってたんですか?」
「んぐううぅぅぅ!」
アルルは呆れながら皆に見つけたと連絡するため照明弾を撃とうとしたが。
「ガアアアアアア!!!」
突然別の熊が草木を掻き分け襲いかかって来た。
アルルはその音に気づき熊のヒヅメを回避し対峙した。
その熊は普通の熊に比べ巨大な熊であった。
今ここで木の上に避難したり逃げたりすれば、熊の下敷きになってるミドリが狙われるだろう。
アルルは戦う選択を取り、体から黒い霧を出し戦闘力を上げた。
月の光がお互いを照らす、それはアルルにとって好都合だった。
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