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オークの神父と2人の令嬢

 どうやらグリーンは馬車の荷台に隠れて付いてきたようだ。なんで付いてきたかと言うと領主に会わせてもらえず気が立ってエルフ達なら自分の美貌で新しい女王としてちやほやしてくれると思い行動にでたそうだ。


 どうして修道女のミドリがここにいるのかと言うと老朽化した修道院からピーコロ村に移動する最中に立ち寄ったエルフの村で脱走したようだ。エルフ達なら自分を美の精霊として崇め奉ってくれると思い行動にでたそうだ。


 脱走に気づいて戻ったところ心優しいエルフたちは修道院ができるまで1人ぐらい預かってても構わないと申し出てくれた。ミドリの”私、辛かったの”話を聞いて静かな森で心安らいで欲しいと思ったのだ。


 もちろんすぐ化けの皮は剥がれた。ちょっとした手伝いも嫌がり文句ばかり言う、それはもうとにかく嫌になるほど文句を言う。


 エルフが無線機でピーコロ村にすまないがなんとかしてと言い腕っぷしの強い教会の神父がアルル達より先に向かったそうだ。そこにアルル達の荷台に隠れていたグリーンがエルフの村に忍び込みミドリと遭遇。ちょうどミドリが連れ戻される所だった。


 グリーンが”あんたなんかが崇められるわけないでしょ、ほらエルフの皆さん。あたしを見なさい、新しい女王よ”と振る舞うもエルフ達はまた厄介なのが増えたと頭を抱えた。


 そこに現れたオーク神父、グリーンはオークを見たのは初めてで恐怖。グリーンに近づいてきたため周りに助けを求めるも誰も助けてくれず、周りのエルフも化け物の仲間と思った。捕まったら無理矢理奴隷として働かされると判断したグリーンは恐怖のあまり「化け物!!」と叫んで逃げ出した。


 ミドリも逃げた。


 前日に神父が来た時、帰るのには暗くて今日帰る時の間まで酷い目(野菜の皮むき)に合わされたからだ。


 そしてこの2人はお互いを嫌っている、それはもうとてつもなく。

 同族嫌悪なんて言葉がシャボン玉みたいに感じるほどの嫌いっぷりだ。

 

 そして現在。


 ここはエルフの村の調理場、エルフの村人達とピーコロ村への木材を入手するために来た人達のために料理を作ってる最中である。


「なんで私が働かないといけないのよ!そんなのこいつにやらせとけばいいでしょ!!」


「あんたがやりなさいよ!自分がやりたくないからってひとに押し付けないでよ!!」


「「ぎゃっ!!」」


 2人の尻が先に衝撃を申し訳程度に逃すための布で巻かれた棒で叩かれる。


 神父に叩かれる尻を押さえてうずくまるミドリとグリーンを真面目に野菜の皮剥きをしている他のエルフ達が冷ややかな目で見ている。

 

「料理の手伝いくらいでガタガタ抜かすな、回りの者を見習え」


 2人はしぶしぶ野菜の皮剥きを始めた。


「私の綺麗な手がまた切れたらどうするのよ」


「こんなの貴族の私がやることじゃないわ」


 2人は文句言いつつも他の者の野菜が入ったカゴに自分の切る分の野菜を入れる手を止めない。


 2人分の尻を叩く音が調理場に鳴り響く。



    *    *     *



 アルルはエルフ達の集会所で手伝う内容を聞いていた。


「畑と家と倉庫の建設ですね」


「はい、そちらの村が大きくなるなら取引が増えますので畑を増やそうかと思っておるのですよ。そのための倉庫も必要ですしそちらの村を訪れたエルフがこの国に住みたいとなったら家も必要ですから」


 エルフは寿命の長く気の長い種族だ。色んな種族の住む場所ではエルフにとって色々とハイペース過ぎてあまりやっていけるものが少ない。


 ピーコロ村にもエルフはいるがエルフの中では若い者が殆どだ。その若いエルフでも多種属の住む場所や王都などの都会はめぐるましく変わり過ぎるのだ。


 つまりかなりの田舎からやって来た人が都会の早い変化に一生馴染めないような種族だ。

 

 ピーコロ村から付いて来たエルフは代わり映えのないこの森の村に落ち着いた様子だ。


 都会に馴染めなかった若者が田舎の変わらなさに浸っているようなものである。アルルは今この村に戻られたら人手が困るなと思った。


 到着した日は休んで次の日から作業が始まることになる。


 アルルはこの村に必要な荷物を渡した。


「いつもの薬です」


「ありがとうございます、いつも助かります」


「効果の方はどうですか?体に不調などは?」


「よく効いてすごい元気になれますよ、他の国から来た者達もアルルさんの薬が体調も悪くならなくて最高だと言ってます」


 和やかな会話をするなか、ドアの前で聞き耳を立てるものがいた、ミドリである。


 会話の内容からミドリが思ったことは”何の薬かわからないがそんなに効く良い薬なら高く売れそう”である。それを売ったお金を元手に成り上がりのストーリーがミドリの頭の中で始まってしまい、子供が見たら母親から見ちゃいけませんと言うどころか、子供を抱えて逃げ出すほどの笑みを浮かべている。



    *    *     *



 エルフ達が用意した寝床でアルルは兄からお土産として渡されたガントレットの通信機能を使った。


 その操作は手慣れていた、なぜなら新しい機器に興奮したアルルは兄に使える機能を全て聞き出し何度も操作し何度も弄くりまわしたのだ。


 兄がうんざりするまで質問を繰り返し、兄がぶちギレるまでちょっとしたことですぐ連絡し兄以上に使いこなせるようになった。


「兄さん、村に無事着いたよ。明日から作業始まる」


「そうかわかった、こっちは特に異常無しだ」


「多分数日後に異常有りになると思うよ」


「どういうことだ?」


「グリーンさんが増えた」


「はっ?どういうことだ?あれが増えたって?何が起こったらそんな災害が起きる?」


「着いてみてのお苦しみってやつだよ、今のうちに平和を噛み締めといて」


「だから増えたってどういうことだ?あいつ分裂でもしたのか?スライムだったのか?」


「一応別個体だと思う、それより兄さん?なんか変わったことや面白いこととかなかった?」


「......領主が鍛冶屋が機械いじりもできるから呼んで何もしてないのにパソコンが動かなくなったと言って、何もしてないなら動かなくならねえよと返されてたぞ」


 エルフ達の家は木で組み立てられたもののため防音声はない、そのための会話を聞いてた者がいた。


 次の日、作業が始まりアルルもエルフの村での作業を始めた。


 畑は耕すだけでよく、ツタを束ねて頑丈にしたのを数本出し土に潜らせ一気に肥料を混ぜ耕していく。ピーコロ村でも大活躍のアルルの耕し技である。


 森に住むエルフ達の家は木の上に建てられることが多い。害獣に襲われず安全に過ごすため高い位置に建てられる。木製の重機は大きすぎて村の中に入らないため、アルルのツタで木の下の地盤を緩ませ倒す。 


 その倒した木をエルフと神父が加工していく、神父の加工速度が凄まじい。神父は教会の人間であるが修道院の2人が迷惑かけたためその分手伝うことを決めたようだ。2人は神父が監視して迷惑かけないようにするようだ。


 あの2人が村に着くのが遅れるとはクウガにとってとんでもないラッキーである。前世があるなら余程善行を積んだのだろう。


 上に運ぶ木材を直接ツタで渡し安全に速く建てられていく。アルルと神父が活躍するなか、異様な雰囲気で頑張ってる者がいる。


 グリーンとミドリである。


 なぜかこの2人はこっちの仕事がしたいと買ってでた。神父も目の届くところに置くつもりなので怪しみながらも了承した。


「打ち合わせ道理やんなさいよ」


「分かってるわよ、あんたこそちゃんとやりなさいよ」


 2人はブツブツと何かを言ってる。


 そんな2人を神父訝しげに見る。


「あいつら、いったいどうしたんだ?」


 神父の言葉にエルフ達が答えた。


「さすがに反省したんじゃないんですか?熊とかに襲われたりもあったし」


「あれだけ騒いでも無駄だってわかったんでしょ」


「ほんと酷かったよな、命令口調で我儘で」


 そんな時突然大きな音がした、家の材料の木の板が倒れた音である。そしてミドリの悲鳴が上がった。


「キャーーーー!!!大変!!グリーーンが!!グリーーンが!!みんなーーーどうしよう!!みんなーーーーー!!!」


 木の板が倒れた場所にグリーンが倒れている。


「誰かーーー!!みんなーーー!!グリーーンが大変なのーーー!!みんなーーー!!!」


 ミドリは叫びながら周りに大声で叫び、村の中を走り回り向こうで大変なことが起こったと知らせ周る。


 エルフ達が事故現場に集まりだす、ある家のエルフが無人になるとミドリは辺りを確認して家の中に入った。そしてアルルが集会所に向かう時に持ってた薬の入った袋を見つけた、中身も確認する、おそらく薬だろう。


 ミドリはあの薬が入った袋がこの家に持ち込まれるのを後を付けて確認していたのだ。


 グリーンには怪我がなかった。それもそのはず、木の板をグリーンの体の上に1つ乗せた後、ミドリが他の板を別方向に倒したのだ。ミドリは板を押した瞬間離れ、そして板が地面に倒れたのでミドリが倒したようには見えていない。


 そしてその日の夜、2人は村から姿を消した。

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