先走らないように注意しましょう
転移魔法陣の部屋から出ようとすると、既に顔見知りとなった二人の兵士に呼び止められる。
「何かありました?」
「キミじゃないのか? 二年生のテイマーを捕まえたのは?」
「テイマー? テイマー……ああ! あの、いきなり襲ってきたから返り討ちにしたヤツ!」
思い出すと「そう、それだ!」と常識的な対応をしてくれる方の兵士が言う。
「でも、あれ? お願いした時は、別の兵士だったような?」
「ああ、それは確かにそうだけど、伝達事項で情報共有されたんだよ。キミが戻ってきたら連れて来て欲しいとね」
「何かあったんですか? 話の流れから、その二年生のテイマーが関係あるんですよね?」
「ああ、実は……」
常識的な対応をしてくれる方の兵士によると、二年生のテイマーが自分はそんなことをやっていないと言い張っているそうで、証拠らしい証拠もないため、どうしたものか困っているそうだ。
「つまり、俺が証言しに行けばいい訳ですね?」
「話が早くて助かるよ」
常識的な対応をしてくれる方の兵士が案内してくれるようなので、付いていこうとしたところで、もう一人の兵士が声をかけてくる。
「マウマウちゃんを呼んだ方がいいと思う!」
それはあなたが会いたいだけでは?
俺と常識的な対応をしてくれる方の兵士は半目で両手をクロスさせて、呼ぶ必要はなしと意思表示した。もう一人の兵士が崩れ落ちるのを放置して、案内に従って付いていく。案内された場所は校舎内にある一室で、「生徒指導室」という札がかけられていた。
「だから、証拠を見せろよ! 証拠を!」
外にまで声が響いている。ため息を吐きたくなったが、「……はあ」と常識的な対応をしてくれる方の兵士は実際に吐いていた。気苦労が絶えなそうだ。このまま立っていても仕方ないので、中に入る。件の二年生テイマーは兵士二人に挟まれて、教職員と思われる金髪の筋骨隆々な三十代くらいの男性と対峙していた。
「証拠はないけど、証人は居るぞ」
俺がそう言うと、視線が集まる。瞬間――。
「いやあああああっ! 止めろ! そいつを近付けるな! 俺に近付けさせないでくれ! 守ってくれえええ!」
二年生テイマーが発狂した。どうやら、俺がトラウマになっているようだ。正直、うるさいので殴って黙らせたい。その思いが俺に拳を握らせる。
「喋る! 喋るから! なんでも喋るからあああ!」
そこから二年生テイマーの自供が勝手に始まった。……兵士たちと教職員と思われる男性から怒りが漏れ出し、その顔に青筋が浮かぶくらいには、結構あくどいことをやっていたようだ。これだけの人数が聞いていたのだから、もう任せても大丈夫だろう。一応、二年生テイマーの自供が終わるまでは聞き、教職員と思われる三十代の男性からもうこちらに任せていいと言われてから帰った。もう関わらなくても良さそうだ。
―――
少し遅くなった。二年生テイマーがごねたからだ。もう少しボコっておけば良かったな、と覆う。家に帰ると、妹はもう眠っていた。まだ寝るには早い時間だと思うが、それだけ「魔障」による消耗が大きくなっているということだろう。おっちゃんに今日の出来事を話す。まずは二年生テイマーについて。
「……なるほど。テイマーがね。まあ、魔蜂は数さえ揃えばそれなりに強いからな。運良く数が揃って調子に乗ったか」
次いで、地下20階まで攻略したことを話した。
「おお! もうそこまで! 思っていたよりもアルンの攻略速度は速いな。しかし、これなら……治療薬の素材を集めるのもそう遠くないかもしれない」
「そうなのか? 残るハイ・オーガとミノタウロスはどの辺に出るんだ?」
「……確か、ハイ・オーガは地下26階以降……特に地下28、29階付近に多く居たはずだ。ミノタウロスは……目撃情報はあったがどこだったか……地下30階以降なのは間違いない。後で調べておく」
「頼む。おっちゃん」
俺の中で希望が出てきた。頑張って学園のダンジョン攻略を進めようと、気合が入る。
―――
――翌日。エリアスト王立学園に登校してEクラスの教室に入ると、一応治療されてはいるようだが、見ただけでボッコボコにされたとわかる状態のサーフェが居た。
「……どうした?」
何あったのは明白で……まさか、赤髪の男性たちがどこかから逃げ出して、復讐しに来たとか? あれくらいじゃ駄目だったか。わからなかったのなら、わかるまで殴っておけば良かった。いや、今からでも遅くないか。見つけ次第――。
「いや、ちょっとな。……ああ、あいつらとは別件だ。昼に話すわ」
危なかった。先走ってどうにかするところだった。
「わかった。昼だな」
そのまま自分の席へと向かう。途中、ナリに視線で尋ねるが、何も知らないと首を横に振られた。何があったのだろうか?




