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傍から見るからこそ、そういう風に見えることもある

 おっちゃんに「適応」ではなく「全適応」であり、教職員にも見えていなかったと告げると、おっちゃんは苦笑を浮かべる。俺を見る目は優しかった。


「自分の得たスキルが普通ではない、と思いたくなる気持ちはわかる。俺も、俺の錬金術は他のとは違う、と最初は思ったものだ。けれど、ステータスカードに表示されているもの以上でも以下でもない。スキルはスキル。大事なのは、それをどう使っていくか――自分次第だ。だから、アルンもまずはそれを認めることが大切だ」


「いや、だから、俺のスキルは」


「ステータス自体もそう悪くない。というか、最初は誰だってこんなものだ。上がり幅も人それぞれだし、ここから一気に上がる可能性だってある。それに、ステータスだけですべてが決まる訳ではない。身のこなしや、装備で随分と変わるから、やり方次第では魔物ともやり合えるはずだ。だから、悲嘆にくれる必要はないぞ」


 いや、悲嘆は一切していないのだが。けれど、なんとなくおっちゃんが俺を慰めようとしているのはわかる。わかるが……別に慰めてもらうような状態ではない。まあ、いいか。とりあえず、気にしないことにした。どのみち、担当者不在とかで本領発揮できないようだし、その担当者もどうすれば戻ってくるとかわからないのだから。やることは何も変わらない。


 まあ、おっちゃんは総括として「無理はするなよ。一応、Eクラスでもダンジョンには入れるし、そのステータスでも無茶無謀をしなければ大丈夫だが、ダンジョンが危険な場所であることに変わりはない。イシスを助けようとしてアルンに何かあれば、笑えない。当然、イシスもな。悲しませるような真似はするなよ」という言葉をもらった。

 わかっている、と頷きを返す。

 そのあとは学園に入学したということで、今日の夕食はいつもより豪華だった。


     ―――


 朝。玄関で妹とおっちゃんに見送られながら、エリアスト王立学園に向かう。まずはクラス分けの確認だ。クラス分けについても、夕食のあとに聞いておいた。おっちゃんの説明によると、クラス分けはエリアスト王立学園側の評価と期待値の表れみたいなものらしい。


 Aクラスは、評価が高くて、大いに期待されている。

 Bクラスは、そこそこ評価が高くて、かなり期待されている。

 Cクラスは、評価と期待のどちらかが高くて、見どころがある。

 Dクラスは、評価と期待のどちらも低いが、努力次第である。

 Eクラスは、評価と期待のどちらも相当低い、あるいは何かしらの問題がある。


 といったところのようだ。


 問題を起こしたとは思えないというか心当たりがないので、もしEクラスであれば評価と期待が相当低いということか。

 ………………。

 ………………。

 やはり、だから何? としか思えない。エリアスト王立学園のダンジョンに入れるのなら、それでも構わないのが本音だ。


 そうしてエリアスト王立学園に着くと、昨日と同じように誘導されて、その先に大きな掲示板があった。多くの人が集まっていて非常に賑やかである。


「よっしゃ! Bクラス! やったぜ!」


「は、はあ! な、なんで俺がDクラスなんだよ! おかしいだろ!」


 喜びや怒号が飛び交っている。中には暴れようとしている者も居たが、そうなる前に教職員と思われる人たちによって即時無力化されていた。

 他に目に付きそうなのは――。


「「あった! ――あっ!」」


 隣り合う男女が同時に同じ方向を指差し、その手が当たったようだ。


「ちょっと、当たったんだけど!」


「いや、そっちが当ててきたんだろ!」


「はあ? 何それ――あっ! わかった! 同じ方を指差したってことは、同じクラスってことでしょ? 運命の出会い的なことを演出してワンチャンみたいなことを考えていたんでしょ!」


「はあ? それこそ、はあ? そんな訳――ああ、なるほど。そっちがそういう演出を仕掛けたけど、恥ずかしくなって俺が仕掛けたことにしたいのか」


「そんな訳ないでしょ! そもそも、私はあんたみたいな軽薄そうなの嫌いだし!」


「俺もお前みたいな自意識過剰なのはゴメンだ」


「「――ふんっ!」」


 そっぽを向く男女だが、何故だろうか。二人の間で何かが始まりそうな予感がする。そう思っているのは俺だけではないようで、周囲の人たちも「はいはい。そう言いつつも、ですよね」という表情で男女を見ていた。


 そんな感じでかなり騒々しいが、それでもどうにか前に出て、張り出されているクラス分けを確認。


 A……ない。当然。B……ない。当たり前。C……ない。やはり。D……ない。残念。E……あった。


 まあ、予想通りだが……一つ気になることがある。他のクラスは大体数十人は名を連ねているのに、Eクラスは俺を含めて六人しか居ないのは、どうなのだろうか?

 学園としてはEクラス入りするような者が六人と、他のクラスよりも少なくてホッとしている? それとも、六人も出た! なのだろうか?


 ……どちらでもいいか。俺には関係ない。

「入学式会場はこちら→」という案内に従って進む。

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