一人よりも複数での方が楽しいこともある
――翌日。休みは終わった。今日から学園である。昨日の夜、マウマウ先生から色々と話を聞いたが、その件に関してはもう俺が関わることはないだろう。なので、これからはまた学園のダンジョンの攻略を進めて、妹の「魔障」を治す治療薬を作るための素材集めである。国の方が用意する治療薬の予約ができたとしても、それがいつかはわからないので、学園のダンジョンの攻略は続けた方がいいのは間違いない。
という訳で、今日からまた学園のダンジョンである。以前よりも強くなっているだけではなく、AGIが相当上がっているので、より攻略は進んでいくのは確かだ。うずうずしてきた。早く学園のダンジョンに入りたいが、まずは授業を受けてからである。個人的にはサボってもいい気がするが、サボったことが妹にバレると間違いなく怒るのでやらない。怒るのはマウマウ先生も同じか。
早く午後にならないかな、と思っている間にエリアスト王立学園に着いた。
………………。
………………。
普段通りである。特に何かが変わった訳ではない。精々が、オリエンテーションどうだった? と会話をする登校中の生徒が増えたといったところだ。「魔淫香」や疑似魔物大暴走については欠片も話題が上がっていない。当事者と一部だけが知っている出来事、ということだろう。
それは、Eクラスの教室に着いてもそうだった。既に全員登校していたのだが、その話題は一切挙がっていない。これまで通りのEクラス。
「よっ!」
「……(シュッ)」
サーフェが気怠そうに片手を上げて、ナリは元気よく手を上げて挨拶してきた。訂正。一年Eクラス・男性組の関係は変化した。
「よっ!」
俺も片手を上げて挨拶する。
―――
最初に、マウマウ先生からオリエンテーションお疲れさまでしたから始まり、学園のダンジョンは今日から入れるが、地下12階は一部生徒がオリエンテーション中に調子に乗って乱獲したことが原因で、数日間普段とは違う可能性があるので注意するように、と言われた後は普通に授業が始まる。それが外部に向けた地下12階の状況説明ということなのだろう。確か、赤髪の男性たちはDクラスだったから、Dクラスではその調子に乗ったのが赤髪の男性たちで、それで退学処分になったとか、追加で説明されているかもしれない。
授業内容は戦闘、魔法、マナーと続いて、お昼になった。マナーの時は眠くなったがどうにか耐えた。
―――
さて、学園のダンジョンに行く――前にお昼ご飯だなと思ったところで、声をかけられる。
「アルン。一緒に飯食わねえか?」
「……(ぐっ!)」
サーフェが誘い、自分も一緒と親指を上げるナリ。
「ああ、そうだな。そうするか」
ここで普通の学生――Dクラス以上であれば食堂に行くところだろう。だが、Eクラスの場合は出されるものが残飯のようなものであり、自分で用意した方がいいレベルである。それはサーフェとナリも理解しているため、どちらも用意してきているのでこのままEクラスの教室で食べることになった。ちなみに、女性陣は出て行ったので教室内は俺たちだけである。
本日のご飯。パン、サラダ、スープに、登校途中で買った、ほかほかタレ付き肉焼き串。サーフェは二人分くらいのサンドイッチで、ナリは一人分サンドイッチにいくつかの木の実といった感じだった。二人の目はサラダとスープ、それと肉焼き串の湯気に向けられる。
「……『アイテムボックス』か。そういう使い方でいいのか、と思わなくもないが……正直言ってズルいな」
「……(こくこくこく)」
サーフェが半目を向けてきて、ナリが激しく同意していた。
「俺の力をどう使おうが俺の自由だ」
「まあ、そうだがよ………………それ、たとえば、俺やナリがほかほかの飯を用意してきて、昼まで入れていてもらうってのは」
「別にいいぞ」
「……(ぱあああああ)」
それくらいどうってことはない。あと、俺を見るナリの目が眩しい。
そんな感じで話しつつお昼ご飯を食べていく。話の流れは自然とオリエンテーションのことになって、サーフェとナリがマウマウ先生から教えられた内容についても知ることができた。当事者ということもあって少しは詳しい内容だったが、エンベズ商会長が密偵であったり、裏にゴルブルワ帝国の強硬派が居て、王都がそれなりに危なかった、という国案件の部分は省かれていた。わざわざ言う必要はないので、俺が教えられたのも二人と変わらないと話を合わせておく。
あと、ついでに「アイテムボックス」に入れている地下12階の魔物についても話した。……難航する。問題なのは、誰がどれを倒したかわからないということだ。夢中だったから仕方ない。決めようがないので、おっちゃんに買い取ってもらったのを三分割しようと提案する。
「いや、一番多く倒したのはアルンだ。それは間違いねえ」
「……(こくこく)」
「だから、分けるにしても、アルンが半分、残り半分を俺とナリで分けるくらいでいい」
「……(ぐっ!)」
それがいい、とサーフェの提案にナリが同意する。そうすることになった。あと、あの時、俺が妹を救うために学園のダンジョンを攻略していることをサーフェに言い、ナリも聞いていたので、二人共が協力できることがあれば言ってくれ、と言われる。特にサーフェは今回のこともあって強く思っているようだ。
「わかった。そういう時があったら素直に頼るよ。まあ、友達に無理をさせるつもりはないが」
「そうだな……ああ、俺らはもう友達だ。前の友達は誰も居なくなったが、新しい最高の友達が二人もできた。だから、多少の無理くらいは受けてやるから、ちゃんと言えよ。当然、ナリもな」
「……(ぱあああああ! こくこくこく!)」
ナリが激しく頷く。嬉しさが伝わってきて、俺もサーフェも揃って笑みを浮かべた。
そして、最後に二人は真面目な態度で言ってくる。
「アルンの友達として……アルンがレスキューフィンガーの中指なことは黙っておくから安心してくれ。誰にも漏らさない」
「……(こくこくこくこく)」
「……まずはそこの誤解からか」
解ける気がしない。新しい中指の隣に俺が立っているくらいのことがないと駄目だろうな、と思った。




