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自分が複数居たら争いになることもある

 休日ということでのんびりと過ごす。いや、疑似魔物大暴走(スタンピード)を経験したのだから、しっかりと体を休めておいた方がいいと思うので、丁度いいと言えば丁度いい。エリアスト王立学園へ通うようになってから妹と過ごす時間が目に見えて減っているので、ここらで取り戻したいところであるが………………それも難しいようだ。「魔障」の影響がより表面化して、妹は横になっている時間が増えていた。


 おっちゃんが言うには、魔力枯渇する前に魔力回復薬を飲んでいるが、その頻度が少し増えたらしい。魔力枯渇→回復→再び魔力枯渇、と繰り返しているのは体力も大きく消費するので、それで横になる時間が増えた、ということのようだ。


 早く必要な素材を手にして治したいと気が逸る。今直ぐにでも学園のダンジョンに入りたいが……今はオリエンテーション中だ。……こそっと行くか?


「大丈夫だ。まだ余裕はある。そもそも、俺が予想していたよりも早くアルンは魔蜂のハチミツを手に入れてきた。今のペースでいけば間に合う。だから、落ち着け。急いては事を仕損じることもあるんだ。焦るとしなくてもいいミスをしてしまうかもしれないぞ」


 おっちゃんが諭してきて、落ち着きを取り戻す。妹も俺を落ち着かせるために声をかけてくる。


「私は大丈夫だよ、お兄ちゃん。それに、お兄ちゃんが助けてくれるって信じているから、頑張れる」


「わかった。今直ぐ学園のダンジョンに行って攻略して素材を取ってくる」


 俺の心を燃え上がらせる燃料が投下された。やぁってやるぜ! お兄ちゃんが!


「だから落ち着けと言っているだろうが」


「お兄ちゃん。落ち着いて」


 妹とおっちゃんから懇々と諭されて、漸く落ち着いた。


     ―――


 でも、一度燃え上がった心を静めるのは中々難しい。こういう時は思いっ切り体を動かして発散するのも一つの手かもしれない。そう考えて、妹に今の俺ができる動きを披露した。


「どうだ? イシス」


「あははは! お兄ちゃんがいっぱい!」


 真っ黒な巨大魔蜂もやっていた、見ようによっては分身したように見える高速移動である。今、妹の目には俺が何人も居るように見えているようだ。喜んでいるようでやって良かったと思うが、何故笑う? そこは凄いと褒めるところでは?


「こんなにいっぱいお兄ちゃんが居るのなら、一人くらいは側に居て欲しいな」


 妹がご所望なので、分身の中の一人が手を上げるように動く。それに反応して、勝手に決めるなと他の全員で手を上げた一人に襲いかかり、手を上げた一人は逃げる、といった動きを見せて、妹を楽しませた。


 でも、実際に分身ができたら、一人は妹の側に居られる訳か。………………「全適応」さん?


《――経験が足りません――》


 どう経験を積めと? まあ、できたとしても、妹に見せたように妹の側に居るのは自分の方だと自分と喧嘩になりそうな気がする。


     ―――


 妹が眠ったのを確認して、件のエンベズ商会も見に行ってみた。人だかりができていたのは、おっちゃんが言ったようにエンベズ商会を取り囲んで周囲を警戒している騎士や兵士がたくさん居て、何事だと見物で集まっているからだろう。集まっている人たちの話が聞こえてくる。


「偽って高く売っていたのがバレたんだよ。なんか他のところと比べて高かったのに、品質はそんな変わんないように見えたし」


「いやいや、愛憎のもつれだって。きっと、商会長が従業員に手を出したんだよ。それで怒り狂った奥さんが店の商品を武器にして暴れたんじゃないか?」


「そうなの? 俺は商会長が仕事のストレス解消に、裸にコートを着て道行く女性に自分の自分を見せつけまくっていたのバレてって聞いたんだが?」


 ……なんか妙な話が出回っているようだ。なんでそんな話に――と思うが、これもゴルブルワ帝国が関わっているとわかれば大騒動になるだろうから、それを避けるために……あるいは、情報が広まって他のところの密偵が逃げ出す前に捕らえるための時間稼ぎに……わざとそういう誤情報を流しているのかもしれない。……考え過ぎかな? なんにしても、迂闊に近付くと怒られそうだったので直ぐに退散した。


 エリアスト王立学園の方も見に行ってみたが……門のところから騎士や兵士、冒険者が居て、かなり警戒しているように見えた。ただ、感覚的にエリアスト王立学園の外ではなく内を気にしているようなのは……多分、昨日の影響による「もしも」に備えてだと思う。ここも用もないのに近付かない方がいいと思ったので直ぐ帰った。


     ―――


 のんびりと過ごした休み二日目の夜。マウマウ先生がおっちゃんの家に来た。状況が一旦落ち着いたので、話せる部分だけ話にきたのである。他の当事者――サーフェとナリにはもう話したそうだ。


「アルンくんは色々と知っているので、サーフェくんとナリくんよりも深く話すことになりそうですね。言葉と内容を選ばずに話せるので楽とも言えます」


「ははは」


 まあ、「全適応」さんが居るからね。現状について聞けば一発だ。


「……あの、それはいいのですが、俺も一緒に?」


 おっちゃんがなんとも言えない表情で言う。マウマウ先生から「アルンくんの保護者なのだから聞いておきなさい」と言われて納得した。そうして、マウマウ先生から色々と話を聞く。

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