ステータスだけがすべてではない
おっちゃんには妹を見ていてもらわないといけないので、俺一人で学園――エリアスト王立学園という名――へ向かった。はてさて、どんなスキルが得られるのやら。既定の制服はないが、エリアスト王立学園所属を示す腕章は付けなければならないので、おっちゃんが用意してくれた上下黒の軽装を身に纏い、そこに腕章を付けたのが今の姿である。武具は身に付けていない。得られるスキル次第で決めようと思う。
エリアスト王立学園の場所を既に確認しているので迷うことはない。王都の外れに巨大な門があるのだが、それは外に出るためではなく、エリアスト王立学園の敷地内に入るための門だ。そこにも複数人の門番が居て、腕章と入学証明書を見せると中に入ることができた。
眼前に広がるのは、大きな壁に囲まれた広大な敷地。その中にいくつか大きな建物があって、入った門と対照的な位置に別の巨大な門がある。その先にダンジョンの入口がある、とおっちゃんから教えられた。壁や門が大きいのは、もしダンジョンから魔物が溢れ出てきた時に敷地の外に出さないため、中に閉じ込めるためだそうだ。
敷地内を進んでいく。各所に「スキル所有済者はあちら↑ スキル未所有者はあちらへ→」と誘導してくれる人が立っているので迷うことはない。辿り着いた先は、ダンジョンに向かうための門の近くにある広場。そこに百は超える人が集まっていて、「スキル未所有者はここで待機↓」と誘導されたので、集まっている中で待つ。
色んな人が居た。
人族、エルフ、ドワーフ、獣人に、そのどれにも当て嵌まらない希少種族と思われる人まで。あと、見た目だけで判断するなら大体は同年代っぽいが、中にはもっと若いのや少し上といった人も居た。エルフやドワーフは長命種だし、そういうのも関係あるかもしれない。何にしても、ここまで多種多様な人種は初めて見た。
そうして集まっている人たちを見ていると、学園の方から身形が整った壮年の男性がこちらに向けて歩いて来る。壮年の男性はダンジョンに向かうための門の前まで行くと、門の前で守っていた人たちに指示を出して――門が開く。
「新入生諸君。まずは入学おめでとう。といっても、本日はスキルを得たら解散で、正式な入学式は明日となる。では、スキルを得に行こうか。付いて来なさい」
決して大きくはなかったが、それでもよく通る声だった壮年の男性が開いた門の先へと進んでいくので、周囲の人たちと共にあとを付いていく。門を越えると、頑丈そうな砦が見えた。砦なのはダンジョンから魔物が溢れ出た時を想定してだと思う。
砦の扉前には数人の男女が待機していた。壮年の男性が数人の男女と挨拶を交わすと砦の扉を開けて中に入り、先頭に居る者から順に中へと招いていく。招かれた者が入ると、それほど時間はかからずに外に出て来て、数人の男女と話したのち、何やらカードを受け取っていた。多分、あれがおっちゃんの言っていた、自分の状態がわかるステータスカードだろう。それで得たスキルを確認できるだけではなく、学生証でもあり、一応身元保証としても使えるそうだ。
まあ、何にしても、俺が居る位置は後方の後方付近であるため、順番が回ってくるのはまだまだ先なので、様子を見ながら待つ。スキルを得てステータスカードを見た者の反応は……喜ぶ者、嘆く者、半々といった感じ。滅茶苦茶喜んでいる者も居て、数人の男女も「凄い!」「素晴らしい!」と褒める時もあれば、「こんなのは何かの間違いだ! やり直しを求める!」と憤る者も居て、初回のみだからやり直しは無理では? と方々で呆れた目が向けられるといったこともあった。
そうして待っていると、ほどなくして順番がくる。ダンジョンに入って出ているだけのようなので、思っていたよりは直ぐだった。壮年の男性に名を尋ねられたので「アルンです」と答えると「では、アルン。中に入りたまえ」と促されて砦の中へと入る。少し進んだ先の地面に魔法陣が描かれていて、その中心に地下へと続く階段があった。
「下りた先に扉がある。その扉を抜けたら戻ってくるように」
壮年の男性からそれだけ伝えられる。それだけだと、そのままダンジョンに進んでいくのも居そうだが……多分、その時は評価的なのが下がるんだろうな。言われた通り、階段を下りていくと――開け放たれた扉があった。扉を抜けて――何かを得たような感覚? 感触があった。スキルを得たということだろうか? 抜けた先には洞窟が続いているのだが、今は言われた通りにするべきだと引き返す。
「次は、外の教職員のところに行くように」
数人の男女は教職員だったのか。砦の外に出て、教職員たちのところへ。ここでも名前を告げてから、いくつかの質問に答えると、真っ白なステータスカードを渡される。それに魔力を流せと言われたので……魔力、魔力と考えながら力んでみると、真っ白だったステータスカードに、文字や数字が浮かび上がってきた。
―――
名前 アルン
種族 人族
HP 62
MP 8
STR 52
VIT 47
INT 25
MND 39
AGI 71
DEX 68
スキル
(全)適応:(現在担当者がこれまで一切の出番がないと不貞寝しているため、一部機能のみ常態化)
―――
……何これ? どういうこと? と思っていると、教職員の一人がステータスカードを確認して――。
「う~ん……適応か。それほど有用ではないし、このステータスだと……Dでもギリだから、Eクラスかな」
そんなことを口にした。