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嘘のような本当の話は、本当にある

 古びた神殿から出ようとした時、嫌なものを見た。


 サーフェだ。いや、これだとサーフェが嫌な奴という捉え方になってしまう。別にサーフェに対して悪感情はない。嫌なものだと感じたのは、サーフェが数人の男性と行動を共にしているようで――おそらくパーティメンバーだと思われる――その中でサーフェは荷物持ちのようなことをしているのだが、行動を共にしている男性たちから「しっかりしろよ」と軽く叩かれたり、軽く蹴られたり、「急げよ」と急かしたりしていて、誰も手伝おうとはせず、寧ろ、そんなサーフェを軽んじ、嘲笑が浮かんでいるということだ。サーフェを自分たちの下に見て、馬鹿にしているというのが見るだけでわかった。


 ……少し前に茶髪の男性たちにやられた時のことを思い出して、より嫌な気持ちになる。


 だから、その気持ちを少しでも払うために介入しようかな? でも、サーフェと仲がいい訳ではないし、乱暴者認定されないためには何かしらの理由が必要か? ……ムカついたから、は短慮過ぎるような気も――なんて考えている間に、サーフェたちは古びた神殿を出て行っていて、あとを追ったがどこにも姿はなかった。悩むなら手を出せば良かったかな? と思う。少しだけサーフェに気を遣おうかな、とも思った。


 そのあとは、時間的に戻った方がいいのだが……ちょっとだけ、地下16階を確認しておく。


     ―――


 地下16階


 森。うん。森だった。地下11階からの森の中と比べると………………何か違いがあるだろうか? あるような、ないような。首を傾げる。植物が違う気がしなくもない。とりあえず、少しだけ周囲の様子を探る。


 ………………。

 ………………。

 やっぱり、特に違いはないように感じる。いや、唯一違う点があって、出てくる魔物がより強くなっていて、種類も増えていた。まあ、より強くといっても、俺のSTRだと大差はないというか、感覚的にというか殴ったり蹴ったりした時の感触でそう感じているだけである。種類の方がよりわかりやすい。地下11階~14階までは虫系統の魔物が多く見られたが、地下16階は狼や熊といった獣系統の方が多かった。周囲を探っただけの結論だが、多分間違えていないと思う。


 そうして、確認していた中で、思わず「おお……」と拍手したくなる光景を見る。


 川が流れている場所があって、そこに四本腕の熊の魔物が居た。熊の魔物は川に入っていて、四本腕を振り上げたかと思えば、豪快なスイングで川の水面を横から振り抜くと、その勢いで大きな水飛沫が上がる。その中に大きな魚が何匹も居た。なるほど。食事。漁をしていたようだ。


 そこに、上空から四枚羽の鳥の魔物が降下してきて、水飛沫の中の魚の一匹を鋭い鉤爪で掴んで飛翔していく。一番大きな魚を掴んでいった辺り、この瞬間を狙っていたと思われる。そのあと、四枚羽の鳥の魔物は、四本腕の熊の魔物を見ながら、なんというか、こちらを煽るような不細工な笑い声のような鳴き声を上げた。


 ただ、余所見はいけない。四枚羽の鳥の魔物は別方向から飛んできた鋭いクチバシを持つ鳥の魔物とぶつかってしまい、掴んでいた魚を落としてしまう。四枚羽の鳥の魔物と鋭いクチバシを持つ鳥の魔物はそのまま喧嘩を始めた。


 落ちていく魚。その先では太く長い蛇の魔物と巨大な蛙の魔物が戦っている。太く長い蛇の魔物はとぐろを巻いてどっしりと構え、巨大な蛙の魔物は脚力を活かして飛び回っていた。周囲にある木々も足場として使い、巨大な蛙の魔物の動きは中々複雑で素早い。それでも、太く長い蛇の魔物は巨大な蛙の魔物を捉えているようで、頭部が後を追うように動いている。


 どうなるのだろうか? と思った時に巨大な蛙の頬がぷくっと膨らみ、口から広範囲に広がる火を吐いた。そこに魚が落ちてきて、火の中を潜ってこんがりと焼ける。太く長い蛇の魔物はその場で一回転しながら尾を振り払い、風圧で火を消し去った。そのついでに、焼けた魚も吹き飛ばされて、大きく飛んでいく。太く長い蛇の魔物は「この程度か?」と、巨大な蛙の魔物は「これくらいでいい気になるな」と言わんばかりに睨み合いを始める。


 焼けた魚が大きく飛んでいった先には――大きく口を開けた四本腕の熊の魔物が居た。位置調整すらする必要がなく、焼けた魚は四本腕の熊の魔物の口の中にすっぽりと入って食べられた。……悪くないな、と四本腕の熊の魔物が咀嚼しながら頷く。


 そんな一連の光景を見て、なんかこう、すべてが上手く噛み合った後のような妙な快感を得た。大満足で帰る。


     ―――


 帰ってから妹にこの話をすると「……お兄ちゃん。私を楽しませようと、話、盛っていない?」と疑われた。嘘のようだけど本当の話だから。

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