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誰も見ていないからといって、やっていいということではない

 地下13階


 ……来ちゃった。いや、もちろん、直ぐ帰る、時間が時間だから。でも、ちょっとだけ。さきっちょだけ。どんな様子か知りたいだけ。それだけ。ほら、今知っておけば、明日来た時に楽かもしれないし。そんな風に自分に言い訳しつつ、様子を窺う。


 ………………うん。森。知っていた。だろうな、と思っていた。でも、違う部分もある。これまでと大きく違う部分が。


 地下13階に下りて直ぐ見える場所に、湖があった。とても大きな湖だ。一応、向こう岸に森が見えるが、それでもエリアスト王立学園の学び舎が入りそうなくらいは……実際の大きさを知らないから実は入らないかもしれないが、それくらい大きな湖である。深さは……さすがにわからない。


 近付いて見てみよう。それから帰ろうかな、と思って近付いていくと看板が立てられていた。看板の前に立って読む。


「警告。これ以上、湖に近付いてはいけない。訳は……わかるよな?」


 うん。わからない。警告ということは危険だということだ。でも、どう危険なのかわからない。危険なことが一般常識のように書かれても困る。誰もが知っていると思うなよ。………………まあ、これに関しては、普通はここに来るまでに下調べしたとか、誰かに聞いたとかで、当たり前のように知っていることなのかもしれないが。


 ………………。

 ………………。

 まあ、いいか。どう考えてもわからないのだから。とにかく、警告されるくらいなのだから、相当危険なのだろう。誰も見ていないからといって立ち入ろうとは思わない。帰るか、と思ったところで、湖の方から柱のような大きな水飛沫が上がる。


「え?」


 何事? と思えば、水飛沫の先――空に、光が反射してキラリと光るものがあった。いや、居た。魚だ。それがこちらに向けて飛んできている。……でかい魚だな。人を丸呑みできそうだ、と思ったところで、その巨大魚が大きく口を開いてがぶりと俺を噛んだ。


「は?」


 何これ? と思う。上半身は巨大魚の口内だが、特に嫌な臭いがしないのでホッと安堵。嫌な臭いが付いたら嫌だし。ただ、巨大魚は鋭利な歯を突き立てて俺を噛み切ろうとしている。まあ、俺のVITを突破できないようなので甘噛みされているようなものだが。そこで気付いた。鋭利な歯の一本が、俺の下半身にある誰にも穢されていない聖域()に入ろうとしていることに。


「ん、だおら!」


 もがいたところで、強めの一発が裏拳のような形で当たる。その衝撃が効いたようで噛む力が弱まり、俺を口内から解放しながら巨大魚はどしんと大きな音を立てて倒れた。つんつん、と突いてみるが反応はない。どうやら死んでしまったようだ。……強めだったからな。


 しかし、これは……魔物なのだろうか? まあ、いきなり襲ってきたし、そう考えてもいいと思うけれど……あっ、もしかして、看板の警告ってこれのことなのか? でも、看板の先には進んでいないのに……これは、アレか? 巨大魚が成長して飛距離が伸びたとか? 可能性としては十分ある。なので、巨大魚は「アイテムボックス」に入れて、看板は引っこ抜いて更に湖から離れた場所に突き刺し直してから、一旦帰った。


     ―――


 今日はこんなことがあった、と巨大魚に噛まれたことを自分なりに面白おかしく妹に話す。心配されたが、今の俺なら大丈夫! と笑みを返す。実際、大丈夫だった。それでも安心できない妹は、本当に無事だったことを示して欲しいと俺の裸を所望する。


「……イシス。俺たちは兄妹だよ? でも、イシスが望むなら」


「ち、違うから! 本当に大丈夫だったのか確認したいだけだから! それだけだから!」


 顔を赤くする妹。可愛い。これで安心してくれるのなら、と裸になって歯形がないことを見せた。もちろん、最後の一線(パンツ)は残している。妹はホッと安堵した。


 その様子を見て、俺も内心で安堵する。魔蜂のハチミツの効果はあったようで、妹は少しだけ元気になった。でも、おっちゃんが言うにはこれは一時的で、またいつ体調を崩してもおかしくないそうだ。できるだけ早く、残りの素材も手に入れなければならない。


 そのために、おっちゃんからダンジョン内の階段がある場所を聞く。


「………………憶えてないな」


「だと思った!」


 おっちゃんが学園に居たのはそれなりに前だろうし、学園を卒業してから学園のダンジョンには入っていなさそうだから、憶えていなくても仕方ない。


「だが、その巨大魚は憶えがあるぞ。度胸試しに使われていたからな」


 度胸試しって……ああ、なるほど。どこまで湖に近付けるか、ということか。今でもそういうことをしていそうだな、と思った。巨大魚が倒した一匹だけとは思えないし。とりあえず、回収してきたのはおっちゃんに土産として渡す。身が引き締まっていて美味いんだ、これが、と喜んでいた。あと、やっぱりというか魔物だった。


     ―――


 翌日。

 午前の授業が終わり、ダンジョンへ向かう。サーフェからの視線は感じたが、特に何もなかったのですんなりと入ることができた。地下10階のボス部屋を確認……変化なし。地下11階、地下12階は最短で通過して……。


 地下13階


 昨日とは違い、湖には近寄らずにその周囲を確認。下りた場所の対岸に位置する辺りで下に向かう階段を見つけたので、そのまま下りる。


 地下14階


 ここも森と大きな湖があった。ただ、警告の看板はない。あれは地下13階だけだったのだろうか? ともかく、ここが上と似た感じなら対岸に階段があるのでは? と思う。


 ………………なかった。そう甘くはないようだ。周囲を確認する。


 ………………「きゃーーー!¥」と悲鳴が上がり、体が反応して「下げればBAD! 上げればGOOD!」と聞こえたところで駆け出すのを止めた。「レスキューフィンガー」が行ったなら……うん。大丈夫だ。


 そうして周囲の確認を続けていると、下へと続く階段を見つけた。まだ帰るには早いので地下15階へと下りる。

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