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誰にだって触れられたくない過去の一つや二つある

 訳のわからない存在(レスキューフィンガー)に助けられて、地下10階へと戻ることができたのだが、その際に斥候風の女性は魔法使い風の女性が背負い、戦士風の女性は俺が背負った。まだ魔法使い風の女性以外は気を失っていたからだ。洞窟の中から簡素な部屋へと戻ると、外に居る見張りの人を呼んで、あとのことは任せた。


 そこで、去り際に思い出したように、魔法使い風の女性から感謝の言葉を告げられる。一瞬、何のことだ? と思ったが、魔法使い風の女性を邪な感じのトレントから救い出したことだと直ぐ思い出す。そのあとのことが強烈だったから、すっかり忘れていた。お礼もしたいと言われたが、さっさと家に帰りたかったので、「また会えたら」と言ってこの場をあとにする。


     ―――


 家に帰ると、早速おっちゃんに魔蜂のハチミツを取ってきた分すべて渡す。


「もう取ってきたのか! いや、今のアルンなら、それくらいどうにかできるか! それに、これだけの量……いいぞ! これなら、魔障治療薬に使う分だけではなく、普段にも使えそうだ! 魔蜂のハチミツは滋養強壮効果が高いから、イシスの体調にもいい影響を及ぼすのは間違いない!」


「そうなのか!」


「そうだ!」


「そうなのか!」


「そうだ!」


「「へい! へい! へい! へい! ――イェーイ!」」


 確認のあとに謎の連続で手を合わせていった行動をするくらい、おっちゃんと共に大喜びした。たくさん取ってきて良かったようだ。


「アルン。定期的に取ってこれるか?」


「ああ、問題ない。なくなりそうになったら教えてくれ。また取ってくるから」


「わかった。………………本当に大丈夫か? 魔蜂は巣の周りに常に百以上の数が飛び回っているし、除虫剤とか使わないとハチミツの入手は難しく、それに除虫剤の影響でハチミツに少し嫌な臭いが付くことも……あれ? 俺、その説明したか? アルンが巣を見つけている間に除虫剤を作って、それから説明するつもりだったような……ん? というか、このハチミツから嫌な臭いがまったくしないな……それどころか、ハチミツの甘い香りだけ……アルン。どうやって取ってきたんだ?」


「どうって、刺されながら巣の一部を壊して、そこから採取を」


 除虫剤とか、そんな便利なものがあったのか。というか、そういう情報は先に出しておいて欲しかった。


「刺されながら――て、刺されたあとがないが?」


「ああ、まったく刺さらなかったから」


「……どういうこと?」


 不思議そうに首を傾げるおっちゃんに、魔蜂のハチミツをどのように採取してきたか説明すると、なんとも呆れた表情を浮かべられた。


「……普通は無理だな。どれだけ厚い鎧を着ていようとも隙間は必ずあるし、そうでなくとも脆い部分は存在している。魔蜂はそこを的確に刺してくるから、アルンのVITがあればこそだろう。……まあ、それならそれで、今後も回収はできるということだな。頼めるか?」


「ああ、頼まれた」


 まあ、魔蜂の巣を見つけられれば、だけど。そればっかりは運だな。あれだけ広大な森だとまた迷う可能性もある。


「――あっ、そういえば、おっちゃんに聞きたいことがあるんだった」


「……ん? なんだ?」


 魔蜂のハチミツを見ながら、あーでもない、こーでもないと考え始めていたおっちゃんが、まだ何かあるのか? と首を傾げる。


「おっちゃん。レスキューフィンガーって知っているか?」


「――っ! な、なんでアルンがその名を知っているんだ! 教えた覚えはないぞ!」


「え? そう言われても、実際に会ったから。悲鳴が聞こえてきて――」


 経緯を話すと――。


「………………そ、そうか。ま、まあ、アレだ。救助活動は必要だろうし、そのまま残したのも理解できなくはないが………………止めて欲しかった! というか、どうして残っているんだよ! 残すなら、せめて別の形にして欲しかった!」


 おっちゃんが頭を抱えて悶え出した。どういうことか聞くと、おっちゃんは顔を両手で隠しながら、ぼそぼそと話し出す。

 ………………。

 ………………。

 要約すると、レスキューフィンガーはおっちゃんが学園時代に有志と結成し、あの着ぐるみの原型というか、その初代を作ったのがおっちゃんだそうだ。なんであんな着ぐるみを? もっと別の着ぐるみなり、まともな衣装なりがあったと思うのだが?


「説明は、難しい……何かしらの理由を付けるのであれば、決定したのは深夜明けだったのと、その場の流れと言うか、勢いで、こう……」


 これも要約すると、若気の至りらしい。


「そうだったのか………………もしかして、どれかの指だったとか?」


「………………びだった」


「え?」


「人差し指だった」


「そ、そう」


 まさか、作っただけではなく、その内の一人でもあったとは……。とりあえず、これ以上は触れて欲しくなさそうだったので、そっとしておくことにした。


 あと、学園長からの頼みというか、毛生え薬についての話があったのだが、さすがに今は聞いても回答が難しいかもしれないので、明日の朝に回すことにした。


 その日の夜。妹の体調は魔蜂のハチミツによって少し良くなったようだ。ただ、おっちゃんの錬金小屋の中から、恥ずかしさに耐えかねたような声が漏れ聞こえて……いや、何も聞こえなかった。

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そんな思い出、誰にだってあるさ。 がんばれ、おっちゃん
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