無条件に幸せを感じる(諸説ある)
さて、と。もうストックが危ういため、今日から一日一話投稿にしますので、よろしくお願いしますm(_ _)m
学園長と協力関係……いや、これから何かを協力し合う訳ではないから、敵対関係から……も元から敵対していなかったし……単純に味方となった、でいいか。毛生え薬のおかげで、学園長が味方となった。しかし、ここまで影響するとなると、そんな毛生え薬を作ったおっちゃんは本当に凄腕錬金術師ということに……深く考えるのは止めた。学園長が味方してくれることは、帰ったらおっちゃんに伝えておこう。
そうして、学園長室を出て、Eクラスの教室へと向かう。廊下に学生の姿はない。いつの間にか、朝の授業が始まっている時間になっていたようだ。他が授業中で、自分だけが廊下を歩いている………………不良になった気分だ。肩で風を切りながら歩く。おうこら。おうこら。突然、大きな音が耳に届く。ビクッとして周囲を見るが特に何もない。……多分だけど、自分の足音だ。周囲が静かで、気が大きくなったことで足音も大きくなり、思っていたよりも反響した結果だろう。大人しく歩いていくことにした。……慣れないことはするもんじゃないな。
ほどなくして、Eクラスの教室に辿り着く。一度だけ深呼吸してから扉を開けて中に入る。
「おはようございます。マウマウ先生。遅くなりました」
マウマウ先生が喜色を浮かべる。
「アルンくん。もう登校して大丈夫なんですか?」
「はい。もう大丈夫です」
「それは良かった。私は担任ですからいつでも頼ってください。遅刻に関しては……まあ、今日のところはいいでしょう。では、席についてください」
「はい」
一礼してから自分の席へと向かうが、違和感。何に、と思うが直ぐに気付く。クラスメイトの視線が俺に向けられているのだ。これまではそんなことはなかった。Eクラスの面々に和気藹々などはなく、俺が言うにもなんだが全員個人主義というか、誰もクラスメイトに関心を持たない感じだったのだが、今は多少なりとも興味があるといった感じで俺を見ている。茶髪の男性たちとのことが影響していると思う。
でもまあ、それでどうこうというか、何かあるとは思わない。興味が湧いた。それだけ。数日持つかどうか、といったところだろう……一人を除いて。筋骨隆々で身軽な服装の、赤色のツンツン短髪男性――確か、名はサーフェだったか? だけは睨むように強く俺を見ていた。……粘着とかには、ならないよな?
―――
そんなことはなかった。午前の授業――戦闘全般、魔法、スキルの座学に、簡潔なマナー講座なんか終わると、クラスメイトは全員出て行ったのだ。……いやいや、あの俺への興味はどこに行った? サーフェなんか特に噛み付いてきそうなくらいだったのに。いや、別にいいんだけど、何かこう……もう少し折角のクラスメイトなのだから交流の一つくらい……妹を救うのに全力だから他のことは更々興味ない俺が言うのもなんだが。
まあ、これがEクラスか。なんて思っていると、教室に残っていたマウマウ先生が話しかけてくる。
「また学園に来てくれて嬉しいですよ、先生は」
「いや、それは来ますよ。妹を救うためにダンジョンに入らないといけないので。希望も見えてきましたし」
「希望。……アルンくんのスキルについてですが、どうしますか?」
「どう、とは?」
「アルンくんの『全適応』スキルなら、それこそAクラスでもおかしくありません。その力を見せれば、Aクラスへと移動することもできるかもしれませんよ」
「ああ、そういうのはいいです。クラスがどことか興味ありませんし、上に行くと授業に時間を取られるかもしれませんから。それに、マウマウ先生には色々と助けられました。だから、俺はマウマウ先生の担当クラスの生徒がいいです」
「アルンくん! 私はなんていい生徒を持ったのでしょうか!」
マウマウ先生が飛び上がり、俺の頭を抱え込みように抱き着いてきた。喜びを行動で表したのだろう。それは別にいい。ただ、俺に全体重を預けるのはどうなのだろうか? マウマウ先生は小柄だし、そこまで重さを感じる訳ではないが、まったく感じない訳ではない。それに……。
「いつでも頼ってくれて構いませんからね!」
痛い。どこが、と言及はしないが、こう……ふよん、とした感触で無条件に幸せを感じるはずなのに、マウマウ先生はそれがないから……。
「……アルンくん。何か失礼なことを考えていませんか?」
「いいえ、まったく」
無表情のマウマウ先生が体勢を変えて、ほぼゼロ距離で見つめてきたので即座に否定しておいた。それが功を奏したのか、何事もなく解放してくれる。
「うおっほん! 淑女にあるまじき行動でした」
……淑女? ……いや、何も言わないでおこう。
そのあとは、今回の件の一つの顛末として、茶髪の男性たちは退学処分扱いに、嫌味そうな教職員は懲戒免職扱いで、親玉っぽいヤーチマタ伯爵も含めて既に捕らえられていて、ヤーチマタ伯爵家は取り潰し確定となり、犯罪関係者はまだ全員とはいかないが次々と捕らえられていて、これまでに犯した罪によってこれから刑が執行されていくそうだ。ヤーチマタ伯爵に関しては、極刑かそれに準ずる刑が執行するのは確定しているらしい。
まあ、何にしても、彼らが俺に手を出すことはできないようだ。これで安心してダンジョンにいけるというもの……いや、ダンジョンは安心していける場所ではないか。




