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新しい服はそれだけで嬉しい

 何にしても面倒だったことが片付いたということなので、非常に喜ばしい。やったね。ざまあみろ……ざまあみろ? う~ん……正直、俺が何かやった感じというか手応えは一切ないというか……一応、名も知らない茶髪の男性たちは直接倒したけど、それ以外はあんまり……「全適応」さんによってというか「自動戦闘」のおかげというか……まあ、いいか。もう終わったことである。


 終わったと思うと、気付いていない疲れが出るものだ。だから、今日は色々とあったということで、エリアスト王立学園の方は休みとした。休めなかった。いや、エリアスト王立学園の方は休めたのだが、体の方は休めなかったのだ。というのも――。


「……お兄ちゃん。おっちゃん。私の部屋の壁の穴はそのままなの?」


 と笑顔だが怖い妹に、さすがにそのままは駄目だな、と気付かされて修復を行って一日が潰れる。もちろん、妹の部屋だけではなくリビングの方と玄関の方も修復した。それができたのは、途中で必要な経験を得たようで、《――大工作業に適応しました。スキル「大工」を獲得しました――》となったからである。……いいのだろうか? と思うが、効率と出来栄えが段違いなので、良しとした。


 その翌日もエリアスト王立学園を休んだ。というのも、考えてみれば服は燃えてなくなり、短剣も必要かどうかはともかく赤黒いミノタウロスとの戦いで失ったので、諸々の買い出しに出たからである。ウエストポーチはおっちゃんが直してくれた。回復薬類も補充してくれる。


 この日は妹の体調も良く、時には気分転換も必要だと一緒に買い物へと行った。うん。まあ、アレだ。俺もおっちゃんも買い物において妹には勝てないということがわかった。


 我ら、何も文句はありません! 妹殿! でも、ほら、ね。長時間は体に差し障るかもしれないし、そろそろ終わった方が……とおっちゃんが言っていました! 


「いや、アルンが!」


「いやいや、おっちゃんが!」


 おっちゃんと醜い争いをした。妹が呆れて、帰ることになる。上手くやったな、とおっちゃんと握手を交わした。


     ―――


 翌日。エリアスト王立学園に登校する。服は新しくなった。これまでの経験から身軽な方が自分には合っている気がしたので、上等で丈夫な服――全体的に黒のレザージャケット、レザーブーツ付きである。妹が選んでくれたので、センスはいい。間違いない。ついでに、おっちゃんが錬金術で服に火炎耐性を付与してくれた。まさか、本当に……凄腕なのでは? 武器はピンとくるのがなかったのでなし。まあ、今のSTRなら大丈夫だろう。


 ともかく、新しい服である。そう、新しい服。何故、新しい服を着ると、こう、心機一転的な気持ちになるのだろうか。なんか妙に嬉しくなるというか、普段は別に思わないが、今だけは俺を見て! 的な気持ちがある気がする。……妹が選んでくれたからかな? きっとそうだな。まあ、裸ではなくなったし、見られても恥ずかしくない恰好になったということだ。


 表面には出していないが、妹が選んだ新しい服を着ているということで心の中ではルンルン気分で進んでいると、ほどなくしてエリアスト王立学園の校門が見えてきたのだが、何やら妙に騒がしいというか人だかりができていた。少し近付くと状況が見えてくる。


「おはようございます」「はい。おはよう」


「おはようございます」「はい。おはよう」


「おはようございます」「はい。おはよう」


 校門前に集まって留まっている訳ではなく、校門のど真ん中に立っている人が居て、生徒たちはその人と挨拶を交わしてから進んでいるようだ。校門のど真ん中に立っている人は誰だろうか?


 白髪の、立派な白髭で……背筋がピンと伸びた……高齢の男性………………見たことあるような、ないような……う~ん……わからない。生徒たちから挨拶されているし、教職員の誰かだとは思うのだが……とりあえず、皆挨拶をしているようだし、これで挨拶をしないのは非常に目立つ。それでなくともEクラスであることや、茶髪の男性たちとのことで普段よりも目立っている可能性がある。下手に目立つと妙なことになって時間を浪費するかもしれない。ダンジョンに集中したいのだ。


 だから、ここは皆に倣って俺も「おはようございます」と挨拶して校門を通り過ぎ――ようとしたのだが。


「はい。おはよう」


 白髪の男性が立ち塞がるように立っていた。あれ? 今、通り過ぎたと思ったのだが……知らぬ内に白髪の男性に向けて進んでいたのだろうか?


 失礼しました、と頭を軽く下げて横にズレて通り過ぎ――白髪の男性が立ち塞がっていた。これはアレか? ズレたと思ったがズレていなかったとか? そんな訳がない。今度はしっかりと横にズレ――白髪の男性が立ち塞がっていた。


「………………」


「………………」


 右にズレた――と見せかけて左に行こうとしたが立ち塞がられ、視線誘導も通じず、華麗なるターンを決めるが駄目だった。どうしても抜け出せない。


「あの、俺に何か?」


 こうなれば仕方ないと直接聞いてみたが、白髪の男性はそんな俺の様子を見て首を傾げる。


「おや? もしかして、私が誰かわかっていないのかな?」


 なるほど。初対面なのに知っていることが当然と思っているようだ。どれだけ自意識過剰なのだろう。いや、俺が知らないだけで、本当に有名人という可能性もある。


 ………………。

 ………………。

 首を傾げた。


「私は学園長です」


 白髪の男性が端的に告げる。嘘っ! と驚き、そういえば入学式の時に……と何かを思い出そうとして思い出せなかった。え? もしかして、挨拶していた皆は知っていて? と周囲に居る人たちを確認すれば、寧ろ、知らなかったのか? という驚きの視線で俺を見ていた。


 どうやら、この場で俺は少数派のようだ。

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