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使えると思ったけれど、実際は駄目だった時もある

 おっちゃんとマウマウ先生は元々知り合いのようで、そこの紹介は必要ない。妹はもう眠っているそうなので、また後で話すことにした。まあ、今の俺の姿を見せたくはないので、正直に言って助かった。余計な心配はして欲しくない。ただ、おっちゃんへの説明の前に、毛布と腰布だけは嫌なのでシャツとズボンを着て、一旦リビングで腰を落ち着けてから説明を始めた。


「……なるほど。前回の奴らが……犯罪行為に該当する行動を取るとは……俺も制裁を加えたいところだが、アルンがやったのなら今はそれで我慢しておこう。気になる部分はあるが、それはあとだ。話の続きだが、スキルがなんだって?」


「全適応」さんについては、隠さず話すことにした。おっちゃんもマウマウ先生も、これで誰かに漏らすといったことはしないと思うからだ。嘘ではないとステータスカードを見せながら、おっちゃんとマウマウ先生に説明すると――。


「……確かに、以前見た時は『適応』であったはずなのに、今は『全適応』になっているな」


「『全適応』……聞いたことのないスキルですね」


 驚いていた。まあ、当然。ステータスカードに表示されているし、疑いようがないのもあるだろう。


「それにしても、アルン……このステータス表記は間違いではないんだな?」


「ステータス? ミノタウロス(希種)よりも、て部分か? 俺の感覚なら本当だけど……ああ、実際にミノタウロス(希種)を倒している」


「そうか」


 まあ、実際に倒したのは俺ではなく自動戦闘? というか「全適応」さんだけど。


《――漸く私が活躍できる場を守……適応者の身を守るために頑張りました――》


 それはさすがに取り繕えていないと思う。ただ、それで俺はこうして生きているのだから、「全適応」さんには感謝しかない。


《――すべては適応者のために――》


 なんてことを言ってきたが、照れていそうな気がした。


「これは……凄いスキルですよ。それこそ、EクラスではなくAクラスにクラス変更できるくらいです」


「それはいいかな」


 Eクラスの方が都合はいいというか、授業内容もそうだけど、Eクラスの方が時間が取れそうな気がする。それに――。


「俺の担任はマウマウ先生がいい」


「アルンくん……この私にどんと任せなさい!」


「そうだな。事情も話しているし、マウマウ先生が担任で居てくれた方が、俺も都合がいいというか助かる」


 マウマウ先生がない胸を張り、おっちゃんもうんうんと頷いている。


「俺はEクラスでいい。だから、『全適応』については広めないで欲しい」


 わかっている、とおっちゃんとマウマウ先生が力強く頷く。とりあえず、今日の流れとステータスについては話終わったので、次の話へと移る。


「それで、なんだけど、ミノタウロス(希種)は『アイテムボックス』で持ち帰っているんだけど、これで魔障治療薬の完成に一歩近付いたんだよな?」


 俺の問いに、おっちゃんは難しい表情を浮かべる。


「あ~……すまん。ミノタウロス(希種)は使えない」


「……どういうこと?」


 詳しく聞くと、ミノタウロスの肝は必要ではあるが、それは普通のミノタウロスのであって、希種のものでは駄目だそうだ。なんでも、希種のものだと効果が強くなり過ぎて、かえって体を傷付ける毒になるらしい。


「なら、効果を弱めて使えば?」


「残念だが、希種の素材が手に入ること自体が稀であるため、ミノタウロス(希種)を使っての魔障治療薬は確立されていないのだ。おそらく、効果が高過ぎるため、弱めないと寧ろ危険で使えないのだが、それと調べるとなると一体分だけでは足りないから、最初から普通のミノタウロスのものを用意する方が結果的に早い」


「そうか……世の中そう上手くはいかないか」


「そうでもない。今のアルンのステータスであれば、普通のミノタウロスはもう相手ではない。『アイテムボックス』もある訳だし、良質なものが手に入る。あと必要なのは、普通のミノタウロスを見つけることだけだ」


「そうか! ……それが時間かかりそうな気もするけれど」


 なんとも言えない表情を浮かべるおっちゃん。マウマウ先生も、まあ、そういうものだと腕を組んで頷いている。


 これで一旦話は終わった。とりあえず、これからも学園のダンジョンへ入ることに変わりはない。これで俺からの話は終わったのだが、おっちゃんからの話があった。


「さて。それじゃあ、次はこちらの話だ。まずは、アルンの状態を元に戻さないとな。ちょっと待っていろ」


 そう言って、おっちゃんはどこかに行ってしまった。マウマウ先生となんだろう? と視線を合わせて首を傾げる。ほどなくして戻ってきたおっちゃんの手には鋏と小瓶が握られていた。おっちゃんは小瓶の中に入っていた液体を俺の頭に満遍なく塗る。冷たい。眉毛辺りにも薄く塗られた。垂れないか心配。


「――おっちゃん、何を?」


「直ぐわかる」


 何が? と思うと、塗られたところがむずむずしてきた――かと思えば視界に黒い線がいくつも降り注いだ。一体何だ? と触ってみれば……髪?


「え? 髪が生えた?」


「えええええ!」


 マウマウ先生の方が驚いたことで、冷静になった。


「俺が作った特製の毛生え薬だ。効果は見ての通りだが伸び過ぎてしまうから整えないといけない」


 なるほど。だから、鋏も持っていたのか。おっちゃんに前と同じ髪型に整えてもらうと、そのまま鋏と小瓶を渡される。


「……おっちゃん?」


「やるよ。必要になる時があるかもしれないしな」


 ピン! と来た。なるほど。確かに下の方がつるつるだった。あとで使おう。はっきり言わなかったのは、マウマウ先生が居るからだろう。宝物を仕舞うように「アイテムボックス」の中に入れた。

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