心配させるのが仕方なくとも、心配させ過ぎるのは良くない
「黒月」のアジトだった家を出て、大人しく待っていたっぽいサーフェ、ナリ、カレリナ・アーシャルを「終わったぞ」と呼び寄せる。実際に終わった――倒した「黒月」の連中と金庫を見せたのだが……サーフェとナリは、さすがと納得してくれているのだが、カレリナ・アーシャルは何故か俺をジッと見てくるのは困った。見定めている感じはしない。でも、何か決意を固めているような……そんな感じだ。意味がわからない。でも、これからやらないといけないことがある。サーフェとナリは「黒月」の奴らを縛るのを手伝ってくれ。縄は……まあ、ここは「黒月」のアジトだし、どっかにあるだろ。地下の倉庫かな? それで、カレリナ・アーシャルはアーシャル侯爵家に連絡。回収を頼む。
「……わかった」
カレリナ・アーシャルがアーシャル侯爵家に向かって戻ってくる間に、サーフェとナリと協力して「黒月」の奴らを縛っていく。手足だけだと目が覚めた時に煩そうなので、口にも猿ぐつわを噛ませる。「黒月」の倉庫の中にあった。それで全員縛った後は……大人しく待つ。他にやることはない、というか、ここを下手に弄って何かしらの関与をしたとかで目を付けられるのが嫌だからである。まあ、今更かもしれないが、こういうのは自分たちのためにもやっておいた方がいいだろう。
ほどなくして、たくさんの馬車が到着。カレリナ・アーシャルを筆頭にして騎士や兵士といった武装した大勢が馬車から下りてきて、あっという間に「黒月」のアジトを家ごと占拠。「黒月」のメンバーと金庫の中身を馬車に乗せて、一部は早々に居なくなった。俺、サーフェ、ナリもそれに合わせて、お疲れさまでした、とこの場を後にする。一応、後で話を聞くかもしれない、とカレリナ・アーシャルから言われたが……まあ、その時はその時だ。今は帰ることを優先。
途中、サーフェとナリと「また明日!」と挨拶した後、急いで家に帰る。もう陽は沈み、夜だ。思ったよりも遅くなった気がする。連絡をしなかったから心配させて怒られるかな? と思っている間に家に着き、「ただいま」と声を上げてリビングに入ると――。
「……おかえり。遅かったね、お兄ちゃん。こんな時間まで、連絡もなしに何をしていたのかな?」
妹は笑みを浮かべていた。でも、何故かその笑みからは少なからず怒りを感じる。おっちゃんに助けを求めようと思ったが、リビングには居なかった。錬金工房の方だろうか? 逃げた、と思うのはきっと間違いではない。居ないおっちゃんに頼るのは無理だ。なら、どうする? 正直に言うしかないかもしれないが、それだと妹を怖がらせてしまうかもしれないから、少しばかりに濁して……。
「た、ただいま。……えっと、ね。お兄ちゃんは、その、頑張ってきたというか……まあ、何を頑張ってきたというと、今後の生活の安全のためにというか……ね。うん。そう。もう大丈夫」
「……何が?」
駄目でした。妹の笑みから感じる怒りが強まったので諦めた。妹には勝てない。一応、もう終わったことであるし、怖がらないように、と一度念押しした後、カレリナ・アーシャルが襲われたところから今に至るまでを話す。
………………。
………………。
「お兄ちゃん。クラスメイトを助けたことは立派だけど、それでお兄ちゃんに何かあったら私が悲しむことも忘れないでね。止めて止まるお兄ちゃんじゃないから……無理はしないように! いい?」
「はい」
妹と約束する。ただ、妹よ。多分だけど、無理を続けてどうにかしようとする前に適応して、無理が無理ではなくなると思うんだけど……まあ、いいか。とりあえず、妹の機嫌も戻ったし、今は夕食だ――というところでおっちゃんがリビングに入ってきた。おっちゃんにも伝えておいた方がいいと話しかけたのだが――。
「大変だったな、アルン。いや、この場合は、さすが、か? 『黒月』は俺でも聞く犯罪組織だ。それがなくなったのなら、王都が今より平和になるのは間違いないな」
話す前にそう言われた。
「………………おっちゃん。いつから聞いてた?」
「まあ、いつからと言われれば最初からというか、アルンが話し始めてから? 邪魔しちゃ悪いな、と」
「実際は?」
「怒れるイシスに巻き込まれるのはごめんだ」
うんうん、とおっちゃんと一緒に頷く。きっと、立場が逆なら俺もそうしていたのでおっちゃんを責めるようなことはしない。
「……二人共、夕食抜きになりたいの?」
「「失礼しました!」」
おっちゃんと二人でイシスに謝った。
―――
翌日。Eクラスの教室に入ると――。
「今日。昼食が終わったら時間をもらえるか? お願いしたいことがある」
カレリナ・アーシャルから直接呼び出しを受けた。




