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今更やめろと言われても、やめる気がない時だってある

 ナイフを投げてきた奴と魔法を放ってきた奴は倒した。ここは……路地裏か? 周囲に人影はない。まあ、下手に目立たないだけいいか。でも、これで終わりではない。ナイフを投げてきた奴は仲間たち(・・)と言っていたから複数人居るはず。魔法を放ってきた奴以外にも居るということだ。そっちも合わせて全員倒して、初めて安心して毎日を過ごせるのである。まあ、相手がどれくらい強いのかとか不安要素はあるが、この二人を基準とした場合……学園のダンジョンなら……地下20階から30階くらいなら通じそうだ。学生だと相手にするのは厳しいな。でも、暗殺者のような行動を取っていたし、そっち方面に特化している可能性はある。……そういう人たちって暗殺が通じなかった時はどうするのだろうか? 逃げるのだろうか? ……魔法を放ってきた奴は逃げていたな。でも、ナイフを投げてきた奴は……逃げる前に俺が捕まえただけか。何にしても、大したことはなさそうだ。いや、油断は禁物。厳しい時は適応優先でいこう。となると、後はこいつらの仲間がどこに居るかだが……。


《――もう少し時間をください――》


 まだっぽい。陽が落ちる前に片付けたかったが……無理かな? 特に門限とかはないのだが、あまり帰りが遅くなると妹が心配するので、できれば早く帰りたい。正直、今直ぐ帰りたい。先を急ぎたいので、一応倒した二人は気絶しているだけでまだ生きているので、起こして仲間の居場所を教えてもらおうかな? と思った時、「気配察知」が見知った気配を察知。真っ直ぐこちらに来ているので待っていると……ナリを先頭にして、サーフェとカレリナ・アーシャルが現れる。


「来たのか。よくわかったな、ここが」


「……(ぐっ)」


「ナリの案内だ。アルンがどこに居るかわかるって言ってな」


 疑似魔物大暴走(スタンピード)の時もそうだったが、ナリの察知範囲は相当広いようだ。いや、以前よりも広くなっている気がする。……そうか。夏の長期休暇で一皮むけたんだな……あれ? これだと意味が違う気がするな。強くなったんだな、ナリ。ただ……。


「なんで連れてきたんだ?」


 サーフェにこそっと尋ねる。もちろん、カレリナ・アーシャルのことだ。一応、二人は倒したが、まだ狙っている奴が居るかもしれないのだから、護衛となる迎えの人でも呼んでもらって、それが来るまで店の中に居た方が安全だと思うのに……何故ここへ?


「いや、俺もわからないんだけどよ、必死だったというか、確認したいことがあるから一緒に行って……まあ、ナリなら向こうから仕掛けられても先に反応できるし、教えてくれりゃあ俺だって盾くらいにはなれっから、まあいいかって」


「要するに押し切られたって訳か?」


「まあ、そうだけどよ。相手は貴族だぜ。それも侯爵なんて大貴族。断りづれえよ」


「確かにな……でも、これで何かあったら、俺らのせいになると思うんだが?」


 う~ん……とサーフェと共に悩む。どうしたものか。気付けば、ナリも悩んでいた。そんな悩みの種となったカレリナ・アーシャルは、俺が倒した二人をジッと見ていた……かと思うと、黒いローブをはぎ取って、そのまま中の衣服もはぎ取る。おいおい。


「ちょっ! いや、何やっているのか? まさか、そんな趣味が? それとも、そいつらが好みで気を失っているのをいいことに、既成事実を作ってしまおうと? 汚い! なんて汚い手段を! さすが貴族!」


「ふざけたことを言わないでもらおうか。誰がこんな奴ら。それと貴族に偏見持ち過ぎでは? そんな貴族は……まあ、居ないとは言わないが、私は違う! そもそも、私はこれを確認したかったのだ! この黒い三日月の刺青を!」


「そ、それは失礼を……」


 まさか言い返されるとは思わなかった。でも、刺青? 「これよ」とカレリナ・アーシャルが見せてくる。確認してみると、ナイフを投げてきた奴の腕と、魔法を放ってきた奴の鎖骨辺りに、黒い三日月の刺青があった。サーフェとナリも確認する。でも……。


「確かに刺青がある、ありますけれど、それが?」


 サーフェ、ナリと、それがどうした? と揃って首を傾げた。


「私が狙われたようだから、まさかと思ったが……間違いない。この黒い三日月の刺青は、犯罪組織『黒月(ブラックムーン)』の一員である証。だが、これで依頼主と、目的の予想はついた。……すまなかった」


「「「お、おお……」」」


 カレリナ・アーシャルがいきなり謝ってきて、戸惑いしかない。何故謝るのかわからない。わからないので、聞く。


「どういうこと、ですか?」


「……そうだな。まずは、ある程度の事情を話すべきだな」


 カレリナ・アーシャルが一人納得する。その話、長くなるだろうか? まあ、適応待ちなので他にやることはない……いや、倒した二人に尋問するとかはできるが……早く帰りたい身としては長い話は……と思いつつ聞いたが、特に長い話ではなかった。


 アーシャル侯爵家とジション侯爵家は長く続く確執があって、仲が悪い。「黒月(ブラックムーン)」はジション侯爵家が子飼いにしていると噂されている犯罪組織だが、繋がる証拠は今のところないそうだ。「黒月(ブラックムーン)」が襲撃してきたのは、カレリナ・アーシャルの殺害か誘拐かは不明だが、学年別代表決定戦に出させないためらしい。


「……証拠はないし、すべて私の予想でしかないが、間違っていない。このようなことが起こったのは、普段は護衛付きで移動する私が一人で行動していたからだ。それにキミたちを巻き込ませてしまったのは、本当にすまない。これ以上は関わらない方がいいだろう。後のことはアーシャル侯爵家でどうにかする」


 いや、どうにかすると言われても、俺はやる気満々なので――。


「……事情はわかりましたが、もう手を出した後で今更ですし引く気はありません。というか、今日中に『黒月(ブラックムーン)』は潰すので、後処理をお願いします」


 ハッキリと言っておく。後処理をお願いするのは早く帰りたいし、何より面倒だからである。

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