掘り出し物なんてそうそうある訳がない
数日後。今日は休日である、約束した通り、サーフェ、ナリと共に、学年別代表決定戦に向けての防具を見に行く。まずは待ち合わせ場所へ。
「それじゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい。お友達と仲良くね」
妹に見送られながら家を出る。妹は一緒ではない。何しろ、俺以外は男性二人なのだ。妹が来るとなると、女性一人を男性だけの中に放り込むことになる。妹は可愛い。きっと家族のひいき目に見なくても可愛いのは間違いない。そんな可愛い妹を前にして、男性が大人しく紳士的な行動が取れるだろうか? もし、取れなかった場合は、俺は俺の手で友を失うことになりかねない。それを避けるために妹は来ない――という訳ではなく、妹の体調はまだ万全ではなく、浮き沈みがあるのでまだ安静にしていないといけないのである。だから、一緒に出かけたくても、もう少し我慢する必要があるのだ。それに、サーフェとナリは夏の長期休暇の時に妹と会っているので、紳士的行動が取れないなんてことはない。まあ、サーフェが冗談交じりで俺のことを「お義兄さん」と呼んだ時は我を忘れて殺意に支配されそうになったのだが。
ともかく、まだ安静が必要な妹のために何か買って帰った方がいいかな? なんて考えている内に、王都の大通りの中心にある噴水広場に着く。噴水は魔石を使った魔道具らしく、ここは色んな人の待ち合わせ場所に使われている。今もそこで若い男女が待ち合わせを――。
「ウフフ。楽しいアフターだったわ。また誘ってくれる?」
「も、もちろん!」
「ありがとう。嬉しいわ。次のお誘い、待っているわね」
妖艶な女性が微笑みながら男性の顎を撫でて去っていく。残された男性はぽーっとしながら「……最高の夜だった。また金貯めないと」と呟いたのが聞こえる。大人な関係って感じがした。いや、まあ、待ち合わせ以外にも使う場所のようだ。
「よっ! もう来てたのか」
「ああ、サーフェか。いや、ついさっき来たところだ。後はナリか」
と言ったところで服が引っ張られる。ナリだった。
「いつの間に!」
「……さっき。大人な関係を見てた」
どうやら、ナリも見ていたようだ。あれは確かに大人の関係という感じだった、とナリと一緒に頷く。
「あん? どういうことだよ?」
サーフェに先ほど見た光景を話しつつ、三人揃ったので早速向かう。向かう先はもうサーフェが決めていたので、途中で昼食を挟みつつ、いくつかの武具店を回る。主に見るのは防具だが、武器もチラチラと見ていく。普段は見ないからわからなかったが、店によって出来が違い、さらに店の中でも出来の良し悪しがあるのがわかった。面白いな、と思う。あと、目利きする力はないと思った。というのも、高額の値が付けられた物よりも、時々だが安売りされている物の中にある物の方が、上等な物だと思うことがあったからだ。いやいや、そんな訳ない。それに、本当にいい物は店頭には出さずに人目に付かない店の裏とかに隠しているはずだ。まあ、そのいい物を見たとしても買いたいと思うかどうかは別だけど。
というのも、色々と武具を見たが、正直なところ俺のステータスの方が圧倒的に高いと思うからである。寧ろ、武具を身に着けた方が弱くなるのでは? と思うくらいだ。そんな訳で、武具を見ることだけを楽しむ。それはナリも同じで、色んな武具を見るのを楽しんでいる。でも、サーフェは真剣だった。悩んでいる。防具の性能とか、予算とか、色々と。まあ、下手な物を買って壊されたら目も当てられないし、気持ちはわからなくもない。
ただ、楽しくないこともあった。学年別代表決定戦に出る生徒は皆考えることは同じなのか、どの武具店も同年代の男女がかなり居て、それなりに混雑していた。まあ、それくらいならいいのだが、中には俺たちが一年Eクラスだと知っているのも居て、お前らみたいなんが出るの? みたいな蔑むような目を向けてきたり、お前らでは手が出せない金額だろう? と見せつけるように高額の武具を買う行為を見せつけてきたりしてくる。ぶん殴ってやろうかな? 買った武具を目の前で破壊してやろうか? とイラついた。ナリはそんな奴らは見る価値なしというように無視しているから問題は……いや、待てよ。ナリの能力なら闇討ちとかできそうだな。もし、闇討ちしてバレたら、と考えて……「止めておけ」と一応声をかけておく。わかった、とナリが頷く。……何を? と聞かれなかったけれど、本当に闇討ちを考えていた訳ではないよな? 信じる心。大事。なので、ナリは大丈夫。大丈夫なさそうなのはサーフェだ。そんなことをやる奴らを見聞きすれば、殴りかかってもおかしくない。気にかけた方がいいかも、とサーフェを見ると――。
「だあ! 決めらんねえ!」
未だ決めらず、悩みで頭が一杯っぽいので、そもそも気付いていなかった。そうだな。サーフェからすれば、そちらの方が大事だ。
「まあまあ、落ち着け。どうする? 俺としては、決められないということは決め手に欠けているということだし、それなら新調しないのも一つの手だと思うぞ」
「そうだけどよ……とりあえず、後もう一店舗見てから考えるわ」
そうだな。そうしよう。
次の店へと向かうために、今居る店を出たところで人とぶつかる。スキル「気配察知」を使ってなかったし、意識はサーフェの様子に向けられていただと思う。
「すみません」
「いえ、こちらこそ不注意を」
相手を見て――。
「「あっ」」
互いに同じ声を上げる。ぶつかった相手は、同じEクラスの、輝く金髪の長髪に、凛とした整った顔立ちで、軍服のような衣服を着ている女性――カレリナ・アーシャルだった。




