表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
155/287

新学期に心機一転することもある

 ………………。

 ………………。


「……きて……」


 うぅん……。

 ………………。


「起きて! お兄ちゃん!」


「うぁっ!」


 起きた。というか、妹に起こされた。ここ最近のいつものことだ。まだ完調ではないが、元気になった妹に起こされるのが、当たり前になってきた。でも、まだ当たり前になっていないことが一つあるというか、元気な妹の姿を見るだけで涙腺が緩む。


「……お兄ちゃん、朝から泣きそう」


「はいはい。いい加減もう慣れてよ。もう大丈夫だって。それより、そろそろ起きて朝食を食べないと遅刻だよ。遅刻はいけないんだからね。それに、私が作った朝食を食べないのも残すのも許さないんだから」


「ふぁい」


 両頬を軽く叩いて意識をハッキリさせてから、妹と一緒に作ってくれた朝食を食べる。パンとサラダ……まあ、料理したと言えるのはベーコンエッグくらいだが、それでも美味い。絶妙の焼き加減、塩加減だ。これに勝るベーコンエッグはない。間違いない。異論は……いや、この場合は諸説ある、か? 美味しく食べた。


「……ところで、おっちゃんは?」


「仕事が忙しいのか、まだ錬金工房の方に詰めてる」


「そう」


 魔障治療薬を作っているからではない。「魔障」は世間的に落ち着いた。「魔障」発症者が減り、治療薬の備蓄ができて、これから発症したとしても直ぐに十分な対処ができるようになったからである。それでも、おっちゃんは時々だが忙しくしていた。俺と妹が王都に来る前よりも、錬金術を用いた魔道具製作の依頼が増えたからである。断れない依頼らしい。それってどんな依頼だ? と思ったが、脳裏に王さまが浮かんだことで考えることを放棄して、その話題に触れないことにした。聞かない方がいいこともある。本能談。


 まあ、何にしても、今日からエリアスト王立学園は新学期。また学園のダンジョンに入るようになるかもしれないな、と思う。


     ―――


「行ってくる!」


「いってらっしゃい!」


 妹に見送られながら、エリアスト王立学園へと向かう。そういえば、妹はどうするんだろうか? 「魔障」は治ったし、来年は俺と同じくエリアスト王立学園に入るのだろうか? 入るなら、妹が後輩ということになる。……妹が自慢したくなるような兄で先輩な存在になっておくべきだろうか? いいかもしれない。でも、(一番下の)クラスだから難しいな。いや、その道がない訳ではない。学園のダンジョンに入る回数が減ったので最近出会っていないが、レスキューフィンガーの中指はまだ決まっていないと耳にするので、そこに………………やっぱないな。そもそも正体は秘密らしいし、それでは自慢できない。それに、会おうと思って会える存在ではないし、中が誰か……まあ、中の人など居ないが、それを横に置いておいて、連絡の取りようがないのだ。なしで。


《――レスキューフィンガーの経験値はそれなりに積まれていますし、それを用いて会いたいという現状に適応すれば、どうにかレスキューフィンガー加入の道筋が立つと思います――》


「全適応」さんは会う手段を確立しないようにして欲しい。俺にその気はそもそもない。……でも提案するってことは「全適応」さんにはあるってこと?


《――はいorうんorそうor肯定or承認or……――》


 否定が一つもないことはわかった。とりあえず、手段も含めて聞かなかったことにした。そんなことを考えている間にエリアスト王立学園に着いた。遅刻ではない。


     ―――


 Eクラスの教室に入る。入って直ぐの席に座るサーフェと挨拶。まずは、おう! ときたので、おう! と返す。


「久し振りだな! 元気だったか?」


「いや、数日前に会っただろ」


「そうだったな」


 サーフェが笑う。俺も笑う。サーフェは夏の長期休暇の間も含めて、今でもどっかの強い人に鍛えられているからか、体付きがかなりがっしりしてきた。最近はその師匠なる人物との稽古中に一撃でも入れることを目標にしているそうだが、まだ上手くいっていないそうだ。まあ、サーフェ本人が楽しそうにしているので何より。


 次いで、後ろの席に座るナリに声をかける。


「ナリは久し振りだな」


「……(こくり)」


「元気だったか?」


「……元気」


 以前よりも強くなっているように見えるナリとは、サーフェと一緒にだが時々遊んでいた。時々なのは、サーフェよりも忙しくなるくらい厳しい鍛錬をしているようだ。サーフェは今より強くなるためだが、ナリはそれに加えて何やら目的があるように見える。いつかその目的を話してくれると嬉しいな、と思う。


 同じクラスという以外の面識のない女性陣の二人――カレリナとハインサにも「どうも。お久し振りです」と会釈という挨拶だけして、二人から同じように会釈だけの挨拶が返されてから自分の席に着く。そこでタオが来た。


「うっす」


「うっす」


 軽く挨拶を交わす。タオはおっちゃんに錬金術を習いに来ているので毎日のように会っているのでこんなものだ。妹ともそれなりに仲良しになっている……と思う。まあ、俺はお兄ちゃんだし、妹と一番仲良しなのは俺である。間違いない。


 その後にマウマウ先生が来た。新学期の挨拶をして――。


「それでは、今月半ばに学年別で『校内代表決定戦』が行われますので、参加希望の方はしっかりと準備をしておくように」


 と言われる。……代表? 決定戦? なんぞ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ