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面子が揃っていたら迷うことはない

「なるほど……これは、元々ダンジョンの壁ではなかったようですね。上手く偽装していたようですが、魔法と素材を混ぜ合わせた、一種の魔道具でできた壁だったようです。だから、これまで誰も気付くことがなかったという訳です」


 マウマウ先生が砕けた壁の一部を見て、触れて、分析結果を口にした。「星の輝き(スターライト)」も一緒に聞いていて、うんうんと頷いている。まあ、砕けた壁についてはそこまで。そもそもそこまで重要ではない。重要なのは、その先だ。砕けた壁の一部の先を覗いたところ……妙な空間がそのまま丸々一部屋という感じで、少し大きな部屋くらいありそうである。


「それじゃあ、マウマウ先生。もう中に入っても?」


「……そうですね。いつまでも砕けた壁を見ていても仕方ありません。ですが、ここから見える部分は一部分だけで、中がどうなっているのか、どれだけ危険なのかはわかりません。まず私が入ります」


「「「「「「待った!」」」」」」」


 俺だけではなく「星の輝き(スターライト)」も待ったをかける。


「何が起こるかわからないのなら俺が行くべきだと思う!」


「「「「「『A』ランクとして、あらゆる状況に対応できます! まず自分たちが!」」」」」


 誰もが先に入ると口にする。まあ、マウマウ先生と「星の輝き(スターライト)」は安全上の理由っぽいけど、俺としては俺が見つけたから先に入りたい、という気持ちが強い。あと、「星の輝き(スターライト)」には説明していないので口にしなかったが、俺には「全適応」さんが付いている。大抵のことは……いや、なんでも適応してしまえば問題ないのだ。少なくとも、罠の類があったとして、睡眠以外なら大丈夫。マウマウ先生もそれは理解しているはずだ。


「なるほど。あなたたちの言い分は理解しました。ですが、一つ忘れていませんか? 私は、あなたたちの先生なのですよ。生徒を危険な目に遭わせる訳にはいきません。という訳で私が行きます」


 そう言うのと同時にマウマウ先生が中へとサッと入る。止める間がなかった。「星の輝き(スターライト)」と共にマウマウ先生を見守り………………何も起こらない。


「……とりあえず、罠の類はなさそう、かな?」


「……そうですね」


 リーダーのマックスさんの言葉に同意した。どうぞ、どうぞ、と先を譲り合った後、「星の輝き(スターライト)」が先に入って、その後に俺が中に入って様子を窺う。見えなかった部分――少し大きな部屋の奥に妙な物があった。


 床に大きな円形の魔法陣が描かれ、その四方には武装したゾンビかミイラが鎮座していて、円形の魔法陣の中央には牙やら骨やらがごちゃごちゃと置かれた祭壇がある。……ふむ。どこをどう見ても怪しい光景だ。それに、「罠感知」が何やら感知している。何かしらの罠があるようだ。迂闊に近付かないようにしよう。しかし、アレはなんなのだろうか? わからない。わからないのは、マウマウ先生と「星の輝き(スターライト)」も同じ。


「……まずは調べてみます。ただ、私の経験から言わせてもらいますと、何かしらの罠が仕掛けられている可能性があります。迂闊に近付かないように。ウィナさん。リースアさん。魔法的、神聖的な見解も必要かもしれないので手伝ってください」


「「はい」」


 マウマウ先生、魔法使いのウィナさん、神官のリースアさんの三人が円形の魔法陣について調査を始める。残る、俺、リーダーのマックスさん、武闘家のモルフさん、剣士のソーレさんは……うん。大人しく待つ。いや、ただ待つだけではなく、魔物が中に入ってこないように警戒する。ああいうわからない作業には手を出さないのが正解だ。そう考えると、マウマウ先生と一緒に来て、「星の輝き(スターライト)」が居て良かったな、と思う。俺一人だと何もわからないし、迂闊に触れて大変なことになっていたかもしれない。


《――適応すればいいのでは?――》


 確かにその通りだ。でもまあ、もう調査は始めているし、任せよう。


 ………………。

 ………………。

 魔物が中に入ってくるどころか近くまで来るようなこともなかったので、警戒はしているが暇である。共通して知っているということで、おっちゃんを話題にして話していると――。


「……なるほど。大体わかりました」


 マウマウ先生、魔法使いのウィナさん、神官のリースアさんの三人がこちらに戻ってきて、マウマウ先生が判明したことを説明してくれる。


「まず、あの魔法陣は結界魔法の一つです。強固な結界を張るのと、その結界が砕けると仕掛けられた罠が発動する、といった効果があります。そして、私たちにとって重要なのは、魔法陣の中心に置かれている祭壇の方です。祭壇は四方に配置した人を贄として使い、特定の範囲内に特定の効果を及ぼす儀式魔法の一種です。いえ、贄を使う時点で呪いと言った方が近いかもしれません。正確な範囲はわかりませんが、状況から考えて上下数階分といったところで、効果については魔法陣の中心に置かれている祭壇にある牙や骨は見たところミノタウロスのものですので、総合的な判断として範囲内のミノタウロスを封印、あるいは出現させない儀式魔法であると思われます。普通は発動しても途中で魔力切れを起こして効果が切れるのですが、ここはダンジョン内ですから周囲から魔力を取り込んで効果が継続しているようです」


「えっと、つまり……今ミノタウロスが見つからないのは、これのせいということですか?」


「その可能性が高い、ということです」


 俺の問いにマウマウ先生が頷きを返す。次いでリーダーのマックスさんがマウマウ先生に尋ねる。


「ということは、異常事態は本当に起こっていた? ミノタウロスを見つけるためには、あそこを壊せばいいということですか?」


「そういうことになります。ですが、先に言いましたが何かしらの罠か策が講じられていると思われます。壊そうと行動を起こせば、それが発動するでしょう」


 それでも、このまま何も手出ししないなんてことはない。ここには、マウマウ先生に冒険者ランク「A」の「星の輝き(スターライト)」が居るのだ。俺だって適応すれば問題ない。今、破壊することになった。

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