食後にはきつい場所がある
「自動地図化」で確認したところ、地下37階に妙な空間があることに気付いた。この階は一度ぐるっと回ったのだが、その中心にある妙な空間には立ち寄っていない。というのも、その中心の空間に入る通路はなかったのだ。……多分。あれ? 思い出すと通路はなかったはずなのだが、それで絶対に見逃しがないかと問われれば自信が揺らぐ。いや、絶対だ! ……多分……きっと。理由のわからない違和感を抱いたのもその付近だし、何かあるのは間違いないと思う。確かめに行きたい。幸い、まだ時間はある。……行くか。
ここで一人ならスイッと行ってしまう、あるいは今なら『簡易版魔力補充式転移魔石』で一瞬で行けるのだが、一人で来た訳ではないし、何かあった時に大勢居た方がいいかもしれない――くらいは考えられる。何より、マウマウ先生が居ないと消臭の魔法を受けられないので是非とも来て欲しい。丁度「星の輝き」も夜ご飯が終わったようだし、言うなら今しかない、と声をかける。
「マウマウ先生。いいですか?」
「どうかしましたか?」
「まだ時間はあるし、一つ行きたい場所があるんですけど」
そう前置きして、まあ「自動地図化」くらいは明かしても問題ないだろう、とマウマウ先生だけではなく「星の輝き」にも、地下37階に妙な空間があって、理由のない違和感を抱いたことも合わせて説明し、今からそこに確認しに行きたいことを伝える。伝え終わった時に気付く。もしかしたら、「星の輝き」なら既にどうにかして立ち寄っている可能性も……なかった。表情を見ればわかる。そんなところが! という表情を全員が浮かべていた。マウマウ先生は……少し考え込んだ後、結論を口にする。
「今から行きましょう」
全員で確認しに行くことになった。
―――
地下37階
地下36階は一気に駆け抜けた。俺とマウマウ先生は問題ない。少し時間が経っていたからだ。でも、「星の輝き」は直後ということもあって……。
「しょ、食後に来ていい場所ではない」
「……うっぷ」
「きつい……この臭い、食後で余計に耐えらんねえ……」
「さすがにもどすのはプライドが……」
「我慢です……我慢です……我慢です……」
かなり辛そうだった。直視はできないくらいに。さすがに見るに堪えなかったのか、マウマウ先生が魔法で消臭した後、防臭の魔法もかけた。俺にもかけてくれる。
「「「「「「おお、神よ!」」」」」」」
「私は女性ですが?」
「「「「「「おお、女神よ!」」」」」」」
「麗しと美貌が抜けています」
「「「「「「おお、麗しい美貌の女神よ!」」」」」」」
「よろしい」
むふう、とない胸を張ってご満悦なマウマウ先生。注文の多い女神である。
そうして、一気に地下37階まで来て、目的である妙な空間がある場所の近くまで来た。具体的には壁の向こうがその妙な空間である。マウマウ先生と「星の輝き」が壁に手を付いたり、耳を当てたりと調べ始めた。といっても全員で調べる、という訳ではない。ここはダンジョン内である。魔物が居るのだ。ゾンビとかミイラとか。でも、防臭の魔法がかかっている今、敵ではない。それでも、やはり近付かれるのはちょっと……ということで、俺の「風刃」や魔法使いのウィナさんの焼却魔法、神官のリースアさんの神聖魔法といった遠距離攻撃で近付かれる前に倒していく。
ただ、調査は難航……というか、何も見つけられていない。壁を直接攻撃したり、魔法を放ってみたりといったこともしていたが、どうやら壁は相当頑丈なようであまり傷付かなかった。砕くのは無理そうである。それでも、どうにかできないかな? とマウマウ先生と「星の輝き」が考えている中、俺は実際に違和感を抱いた場所に行ってみる。大丈夫。単独行動ではないというか、マウマウ先生と「星の輝き」が居る場所から見えるところなので問題ない。一声かければ直ぐ来てくれる……はずだ。
ともかく、今は違和感について考えよう。違和感を抱いた場所に立つと……うん。やはり違和感を抱く。ただ、何故違和感を抱くのかわからない。周囲を見た限り、特に何かおかしなところがある訳ではない……と思う。う~む。……でも、俺の中の何かが………………何かって何が? それから探ろう。俺の中の……これは、スキルか? ……「全適応」さん?
《――違います――》
違うようだ。となると、他の………………これは「私は壁」か? ……うん。それっぽい。「私は壁」が壁の一部に対して「私はそこを壁とは認めない」と訴えかけているような……そんな気がする。それが違和感に繋がっている、と思う。その壁の一部を見る。触る。……なんか砕けそうな気がするので試してみる。拳を握って構え、力を込めて――。
「……せーの」
壁の一部に思いっ切り拳を打ち付ける。ぼごぉん! という激しい音と少しだけ土煙が舞い――壁の一部は砕けなくなって、その先が開けた。
「……えっと、マウマウ先生! 『星の輝き』の皆さん! なんかここ開きました!」
皆を呼ぶ。




