居た堪れない空間をどう乗り切れるかが問題だ
地下35階
戻ってきた。結局、ミノタウロスは一体も見つけられなかった。「星の輝き」が言っていた通りである。異常事態だ。マウマウ先生もそう思っているのか、地下40階からここまで戻ってくるまで考え事をしている時間が長かった。でも、何が原因でそんなことになっているのか、その答えは出ていない。それでも、考え事を邪魔して悪いとは思うが、地下37階から地下36階を抜けて地下35階に戻って来た際には、魔法で消臭してもらった。本当に臭っていないよな? ……多分、大丈夫。鼻が馬鹿になっていなければ問題ない。
そうして地下35階の大部屋まで戻ってきたが、「星の輝き」は居なかった。まだ戻ってきていないようである。「星の輝き」がミノタウロスを見つけたかどうかの報告を聞くために待つ。見つけていて欲しいな。
「………………」
「………………」
しかし、アレだな。元々一人で来ていればなんとも思わないのだが、誰かと共に来たとなれば、その人を相手に何か会話した方がいいと思ってしまう。きっと、誰もがそうだ。いや、誰もがは言い過ぎか。でも、大半は何か話さなければ、話した方が、と思うはずだ。でも、その相手が話し気がない、もしくは話しかけるのを躊躇うような状態であれば、話しかけようとする身としてはどうだろう? ……気まずい。居た堪れない。今が正にそうだ。マウマウ先生は考え事に集中しているから、話しかけづらい。邪魔するのが悪いな、とまず考えてしまう。
………………。
………………。
なんか時間が経つのが遅い気がする。何かしたい気分だが、特に何も思いつかない。一人の時、何していたっけ……思うように動いていたからこういうことを気にしていなかった気がする。でも、こうして一度気になると……あああ……今「あ」を三回言った。何回連続で言えるか挑戦してみるか。あああああああ………………あれ? 今何回言ったっけ? ……無為な時間過ぎる。
《――私に話しかけても構いませんが?――》
「全適応」さん。それじゃ、何か話題を。
《――………………――》
………………。
《――どちらが「あ」を長く言えるか勝負しますか?――》
何故そんな話に?
《――私は適応者のスキルですので――》
俺の影響をもろに受けているということか。なら、仕方ない。納得すると、お腹が空腹感を訴えてきた。そろそろ夜ご飯の時間のようだ。「アイテムボックス」から夜ご飯を出す。マウマウ先生はどうするのかと見れば、まだ考え事をしていたので後でいいか……と思ったが、よく見ると先ほどまでと違って口が開いていた。まるで、そこに何かを入れろと告げるように。それが何かは考えるまでもない。「アイテムボックス」から取り出した夜ご飯を自分も食べつつ、マウマウ先生が開けた口の中に入れていく。なんというか、餌付けしている気分になる。しばらく続けていると、マウマウ先生が口を開けなくなった。満足したようである。俺はもう少し食べた。会話がないのが気まずい訳ではない。決して。そう、決して。少しお腹が空いていただけだ。
食休みで少しボーっとしていると、「気配察知」に人の気配を感知。五人。マウマウ先生も気付いていると思うが、それで動く様子はない。となると……思った通り「星の輝き」が戻ってきた。ただ、浮かべている表情を見れば結果はわかる。それでも、念のためか、マウマウ先生は考え事を止めて結果を尋ねる。
「マックスくん。どうでしたか?」
「……地下31階まで上がって確認しましたが、一体も見つけることができませんでした。本当にどうなっているか……」
やはり駄目だったようだ。「星の輝き」が夜ご飯を食べつつ、マウマウ先生が詳しい話を聞く。「星の輝き」は索敵をしっかりと行いながら、階毎に広範囲を探したようだ。それでも駄目だとか、本当にどうなっているのやら。今回が駄目でも次であれば――と思っていたが、何か手を打たないと駄目かもしれない。マウマウ先生と「星の輝き」もそれはわかっているようで、話し合いを始めている。俺も参加したいところだが、俺よりも学園のダンジョンに詳しい人たちが話し合っているところに参加するは難しい。どうしたものか。俺としてもあと一歩なのに、あと一歩だからこそ、諦められない。とりあえず、今日はまだ時間がある。まだ行っていない場所に居るかもしれないし、当たりでも付けておこうと「自動地図化」で確認する。
………………。
………………。
あれ? この地下37階のここ……確か、よくわからない違和感があるなと思ったところの近く……少し大きな部屋くらいの妙な空間があるな。




