その時は気付かなくても、後で気付くことだってある
引き続き地下36階を進んでいく。聞けば、マウマウ先生はこの先――地下40階までの階段がある場所を知っているのだが、真っ直ぐ向かうことはしていない。今は先へと進むことが目的ではないのだ。「星の輝き」の情報通り、ミノタウロスが居ないのかどうか、それを確かめるために回り道、寄り道をしながら進んでいく。魔物が居ない訳ではない。ゾンビ、ミイラの他にも、マウマウ先生が言うには下級ヴァンパイアだという巨大羽の大きな蝙蝠も居た。まあ、どれも「風刃」を得た今となっては脅威ではないので、スッパスッパと風の刃で切って倒す。あっ、巨大羽の大きな蝙蝠は別に「風刃」で倒さなくてもいいのか。腐敗臭はしないので、やろうと思えば拳で倒せる。まあ、その時その時の状況次第で使い分ければいいだろう。ともかく、今はミノタウロスを見つけることが重要である。
それなりに広範囲をそれなりの速度で回ってはみたが、ミノタウロスを見つけることはできなかった。マウマウ先生の案内で地下37階への階段がある場所へと向かい、下りる。
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地下37階
ここも進み方は変わらない。真っ直ぐに地下38階への階段がある場所へは向かわずに、ミノタウロス探しを優先して、遠回りしたり、ぐるっと一周したりと探してみるが……やはり見つからない。魔物の方は狼とか熊とか獣系ゾンビが出てくるようになった。脅威度は普通のゾンビよりも上だろう。まあ、ゾンビとミイラはなんであれ、近付かれる前に「風刃」でスパッとやって倒しているので実際の脅威度はよくわからない。その辺りはマウマウ先生による解説で聞いただけである。
何にしても、この階でもミノタウロスは見つからなかった。ただ、途中で少し違和感を抱いた時があったのだが、なんというか、こう、俺の中の何かが訴えているような……そんな感じ。でも、それがなんなのかよくわからなかったので、先へと進むことを優先した。マウマウ先生の案内で地下38階への階段がある場所へと向かい、下りる。
―――
地下38階
う~む……なんというか、壁や柱の装飾がより邪悪になった気がする。でも、空気は清々しい。腐敗臭が一切しない。というのも、マウマウ先生の説明によると、ゾンビやミイラが出るのは地下36階と37階だけだからである。だから、思いっきり呼吸できる。すぅ~……げほげほ。服に腐敗臭が付いていたようだ。マウマウ先生。魔法でどうにか……。
「わかりました」
マウマウ先生の魔法一つで、あら不思議。衣服から腐敗臭ではなく花の香りが漂う。まるで、そういう香料を使った洗い立てのような爽やかさに……いいな、これ。「全適応」さん。
《――一回では必要な経験を得られませんでした。複数回使用されて経験を積む必要があります――》
駄目だった。でも、この魔法に適応するためには、また腐敗臭を経験して、マウマウ先生に魔法をかけてもらう必要があるのか……うん。いいや。今はゾンビやミイラが出てこなくなったことを喜ぼう。もちろん、魔物が居ない訳ではない。見かけたのは動く鎧やアイアンゴーレム、スティールゴーレムといった無機物系だった。腐敗臭がしないのなら問題ない。何が出てこようがすべて拳でわからせた。マウマウ先生から「地下38階の魔物を拳一つで倒すとか、一体どれだけのステータスになっているのやら」と少し呆れた表情を向けられる。すみません。具体的な数字では答えられません。
ともかく、腐敗臭がしないので動きやすくなったが、ミノタウロスは見つけられなかった。本当にどうなっているのやら。時間的にお昼くらいという丁度いいタイミングで魔物が居ない部屋を見つけ、そこで「アイテムボックス」からお昼ご飯――マウマウ先生の分も――を出して食べてから、マウマウ先生の案内で地下39階への階段がある場所へと向かい、下りる。
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地下39階
探す。探す。探す。ミノタウロスを探す。魔物は居た。なんか珍しいの。マウマウ先生が言うには、「アルンくんが倒したクリスタルゴーレムほどではありませんが、かなりレアな魔物です」というミスリルゴーレム。でも、拳一つで倒したのでレアと言われてもピンとこない。ただ、マウマウ先生が欲しそうにしていたので、後で少しあげることにした。かなり喜んでいる。おっちゃんにもあげようかな。
それはともかく、本当にミノタウロスが居ない。
「本当に一体も居ませんね」
「ええ、本当に。彼らが言っていたように異常事態です。何かしらの原因があると思うのですが、何が原因となっているのか……『星の輝き』が怪しいと見ていた者たちも居ないようですし、今はそのとっかかりすらありません。……もう一階下りますか。アルンくんの強さなら地下40階のボスも倒せますし、今回で見つけられずとも、その次では見つけられるかもしれません。その時のために地下40階の転移魔法陣を使えるようにしておきましょう」
「わかりました。ありがとうございます」
マウマウ先生の提案に乗り、地下40階への階段がある場所へと案内されて、下りる。




