実は共通の知人が居た、なんてこともある
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はっ! 殺気! いや、違う。ただの気配だ。びっくりした。いつの間にか寝てしまっていたようだ。いや、寝るのはいい。でも、仮眠ではなく熟睡だった気がする。それはいけない。でも、妹が治って一緒に出かけた夢を見ていたような気がする。いい夢だ。必ず正夢にしてみせる。……あれ? そんないい夢を見ていたのなら、なんで俺は起きたんだ? まだ見ていたいと見ていてもおかしくないのに………………そうだ。気配がしたんだった。もう一度探る。うん。しっかりと「気配察知」で感じる。直ぐわかったのは、もう既に拠点前に居るからだ。複数人。一、二、三……五人か。一パーティという感じ。なんでここに? いや、ここはどこだ? ……思い出した。地下35階の無人拠点だ。マウマウ先生と来た。そのマウマウ先生は……動く気配がない。寝ている? それとも気付いているが動く必要がないのか? 夜這いはもちろんしていないため、部屋が違うので正確なところはわからない。
まあ、それはいい。問題は拠点の中に入って来ようとしている五人だ。ここは無人ではなかったのか? いや、そうか。普段は無人であっても使う人が居ない訳ではない。現に俺とマウマウ先生は今使っている。学園のダンジョンにいくつもの冒険者パーティが入っているし、限られた者でないと安全ではない場所とはいえ、誰も入っていない訳ではない。ここを使う人だって当然居る。それはいいが、問題は俺だ。マウマウ先生は教職員だからで通じると思うが、俺は見つかると何故ここに生徒が居る? と思われるのは間違いない。ここまで来て、余計な面倒はごめんだ。居られる時間も限られているし。とりあえず、様子見だ。「私は壁」発動。小部屋の壁に張り付いて大部屋の様子を窺う。
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入ってきた。男性二人、女性三人の……冒険者パーティだと思う。見た目でいけば……わかりづらいのも居るが、わかるのは三十代くらいだろうか。熟練感がある。まあ、ここまで来れているということは、かなりの腕前ということだ……と思う。
「……今日も見つからなかったな。一体どうなっている? 異常事態ではないか?」
「確かに、おかしな状況ね。ここまでなんて見つからないなんて……」
「あいつらを見かけてからだ。何かやったに違いない」
「でも、その例の奴らは最近見かけていないから、ダンジョンから出たんじゃないの? 確かめようがないわ」
「話はそこまで。誰か居ます」
「人が来るとは聞いていないが? ……挨拶はしておこう。警戒は怠らないように」
ドキィッ! ま、まさか、バレたか? 「私は壁」を破る探知スキル持ちが居るのだろうか? と警戒したが、冒険者パーティは俺の前を気付かずに通り過ぎていって、マウマウ先生が寝ている小部屋の方に警戒しながら入っていった。良かった。バレていない……いや、良くない。女性が寝る部屋に入るのは不味いと思って声をかけようとした瞬間――。
「覗きは殺します! 滅殺!」
「「「「「ああっ! マウマウ先生だったー!」」」」」
マウマウ先生と冒険者パーティの声が響き、次いで小部屋の中から魔法が次々と飛び出してきて、冒険者パーティは逃げ出すように小部屋の外へと出てきた。……あれ? マウマウ先生と言っていたし、知り合いなのかな?
―――
現れた冒険者パーティはマウマウ先生の知り合いだった。それだけではなく、起きたマウマウ先生が俺に出てくるように言い、出て行くと冒険者パーティを紹介されて、俺とも少なからず関係があった。
まず、二人の男性。
茶髪で、筋骨隆々な体付きで重鎧を身に付け、大盾と戦鎚を持つ三十代くらいの男性。
「重戦士であり、リーダーでもある、マックスだ。よろしく」
全体的に筋肉質な体付きで、青と白が交ざった体毛と耳と尻尾を持つ狼獣人男性。見た目で年齢はわからない。
「斥候も兼ねてる武闘家、モルフだ。よろしくな」
金髪に、スラリとした体付きの上に軽装を身に付け、腰の左右に剣を提げた三十代くらいの女性。
「剣士のソーレよ。よろしく」
紫髪に、黒いローブを身に纏って、宝飾が施されたロッドを持つ、エルフ女性。年齢は見た目で判断できない。
「私は魔法使いのウィナ。よろしくね」
銀髪に、神官服を着ているのだが、それでも隠し切れないメリハリのある体付きで、三十代くらいの女性。
「私は神官のリースアです。よろしくお願いしますね」
一通り挨拶を受けて、俺も「アルンです」と返す。この五人で冒険者パーティ「星の輝き」。ここまで入れる時点でかなり優秀である。マウマウ先生の保証付き。そして、俺との関わりだが、彼らはおっちゃんの知人であり、ミノタウロスの肝が手に入らないかと打診されていた冒険者パーティだった。




