実際に光っているのではなく、光り輝いているように見えるだけ
午前中の授業や他のクラスからのちょっかいは面倒ではあるが、今はダンジョン優先である。
現在目的地としているのは地下11階。既に足を踏み入れているが、おっちゃんの話によると、地下1階から地下10階までは洞窟型ダンジョンとなっていて、地下11階からは森型ダンジョンとなっているそうだ。
………………地下に、森?
「えっと……おっちゃん。どこかで頭でも打ったか?」
「俺の正気を疑う気持ちはわかる。だが、事実だ。行けばわかる。ダンジョンとは本当に不思議なことが起こる場所だから、ダンジョンとはそういうものだと軽く考えていた方がいいぞ。下手に考え過ぎると余計に混乱するだけだ」
「そういうもの?」
「そういうもの」
そういうものらしい。まあ、何にしても今考えたところで答えが得られる訳ではない。考えるだけ無駄――ダンジョンとはそういう不思議なことが起こる場所だと認識しておく。
ともかく、現在目的地としているのは、森になるという地下11階。そこで、魔障を治すのに必要としている三つの素材の一つ――魔蜂のハチミツが手に入るらしい。……まあ、まだ地下5階にも到達していないので先の話ではあるが。
「……先を見過ぎていると、足元をすくわれやすい。特に命がかかっている時は、より慎重になるくらいで丁度いい。……やれそうか?」
おっちゃんが確認してくる。
「ダンジョンに入ったばかりだから、まだなんとも言えないが、今のところはやれている」
「そうか。授業の方は?」
「………………」
「………………授業は?」
「………………」
答えない代わりに、キラリ、と光る笑みを返しておく。おっちゃんも似たような笑みを返してきた。
「できる範囲でいいから、頑張れ」
キラリ、と光る笑みをより輝かせながら、頷きを返す。とりあえず、興味がなくとも寝ないように頑張ろうと思う。そう決意していると、おっちゃんは何かを考えるような仕草をしていた。
「……どうした?」
「いや、一つ確認しておきたいが、ダンジョンはソロか? パーティを組んでいるか?」
「ソロだけど? それが?」
「そうか。できれば、パーティは組めるなら組んでおいた方がいい。当たり前の話だが、ダンジョンは下に行けば行くほどきつくなっていく。一人でやれることには限界がある。だから、仲間が必要なんだ」
「それも、わかっている」
……でも、Eクラスのヤツとパーティ組みたいヤツなんて、あの学園の中に居るのだろうか?
強いて言うのであれば、同じEクラスのヤツだが………………無理だな。今のところ、全員勝手に動いている。協調性は欠片もないので、パーティを組むなんて夢のまた夢だな、と思った。
―――
今日も今日とて、まずはEクラスの教室に行き、午前中は基礎的な授業を受けてから、午後はダンジョンへと向かう。
その途中――学び舎から出ようとしたところで、入れ違いが入ろうとしていた三人の内の一人と肩がぶつかる。正直な気持ちに言えば、こちらは一人で、向こうは横並びの三人なのだから、向こうの三人の内の一人がずれてくれれば良かったのだ。
でも、ぶつかったのは事実であるため、「すみません」と口にして頭を軽く下げてからダンジョンへ――。
「――ぐっ!」
背中に衝撃と痛みが走り、そのまま転倒してしまう。何が、と後方を確認すれば、先ほど肩がぶつかった茶髪のヤツが蹴り抜いている姿勢で立っていた。
「テメエ! Eクラスのヤツだろう! Bクラスの俺にぶつかっといて謝るだけで済むと思ってんのか、こら! おらあ!」
「あ~あ。まあ、今機嫌悪いから仕方ないね。鬱憤晴らしに丁度いい相手だし。ハハハ!」
「こいつ、貴族じゃなくて平民だろ? だったら、気兼ねなくやれるってもんだ! 別に反抗してもいいぞ! まあ、俺ら相手にできるんなら、だけど! ギャハハ!」
殴り、蹴り、と息を吐く暇もなく暴力を浴びせられて、一方的にボコられる。反撃の暇すらない。数の暴力もそうだが、ステータスの差が大きいのだ。
どれだけボコされたのかわからないが、三人が飽きるまで続けられた。
「Eクラスなんだから、こういうことになくたくなけりゃ、謝り方の勉強をしっかりとしておくんだな!」
「うはっ! 雑魚過ぎ、こいつ! 手応えなさ過ぎだろ!」
「まっ、Eランクなんて、こんなもんでしょ」
品のない笑い声を上げながら、三人が去っていく。
動くのも難しいくらい、体中から痛みが走る。
………………。
………………。
俺にやり返せるだけの力がないのは事実だが、ここまでやってくるとは思っていなかった。Bクラスと言っていたが、いいスキルでも得て調子に乗っているのだろう。それは俺には関係ないが……Eクラスの扱いを考えると、今後もこういったことは起こり得る。
このままだと、妹を助けるための行動にも影響して支障が出るかもしれない。
どうにかした方がいいと思うが……どうしよう。
とりあえず、まずは妄想の中で先ほどの三人をボコしておいた。




