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積み重なったことが閃きを与える時もある

 ……は? 「転移」の適応? 「転移」? どういうこと――と思う前に、適応によって「転移」について理解する。なるほど。一度行った場所であれば転移できるのか。非常に楽な移動方法だな。いや、楽などころか非常に有用だ。早速使ってみよう。向かう先は、おっちゃんの家の前。初回の勢いを付けるために、片腕を天へと突き上げて――「転移」。


 ………………。

 ………………。

 うん。移動していない。その理由は……適応しているのでわかった。魔力――MPが足りなかったからだ。どうやら、移動距離に比例してかなりの魔力を使うようである。突然のことに舞い上がってしまった結果だ。そうだよな……俺、MP少ないよな。今のMPで行けるのは、二歩分先に一回くらい。おっちゃんの家までなんてとてもとても……。まあ、戦いの中で相手の意表を突けるとか、使い道もなくはないので、使えるだけマシかもしれない。残念だ。でも、一つだけホッとすることがある。誰かに見せるではなく直ぐ試して良かった。失敗した姿というか、片腕を天へと突き上げた姿を誰にも見られずに済んだ。そっと上げた片腕を下ろし、転移魔法陣のある部屋から出て、砦を出て誰も居ないことを確認してから、拭えない羞恥心を隠すように両手で顔を隠す。


《――私が見ていましたが? 別にあのような姿勢を取らなくても使えたのですが……あの姿勢にはどういった意味が?――》


 うん。「全適応」さん。できたばかりの傷跡に塩を塗るのは止めて欲しい。


《――純粋な興味です。他意はありません。ええ、他意はありませんとも――》


 ある言い方だよね、それ。気分的にそうしただけだから。他に意味はない。そんな感じで「全適応」さんと話している間に落ち着いたので、両手を顔から離して息を吐いた後、そのまま徒歩で家へと帰った。「転移」使えたら一瞬なのになぁ……。


     ―――


 ――閃いた。いや、天啓か、これは? 違う。積み重なったものだ。「転移」と獲得したことと、「DEX 上級回復薬を作れるくらい凄く器用」と上級回復薬を作れるだけの錬金術の腕前まで適応したことで、結び付いてかけ合わさり、閃いたのだ。……いける! 早く作りたい! 大急ぎで家へと帰る。


 ………………。

 ………………。


「ただいま!」


「おかえ……え? どこに行く? アルン。イシスのところか?」


「ああ! その後に錬金工房に行く!」


「――何! そうか、魅了されたか、錬金術に。そうだよな。錬金術に触れれば誰だって魅了され」


「いや、別に。作りたい物ができただけ。それじゃ」


 リビングを出て、妹の部屋へ。妹は眠っていた。中々起きている時に出会えない。それだけ「魔障」の影響が強くなった証拠だ。……でも、もう少しの辛抱だぞ、イシス。お兄ちゃん、頑張るからな。相手が妹とはいえ、寝顔をじっくり見るのは失礼だろう。そっと扉を閉じて、錬金工房へ。


「………………いや、なんでおっちゃんが居るの?」


「ここは俺の錬金工房だぞ。居て当たり前だ。それに、錬金術を行うのだろう? 何を作るのか知らないが、助手が居た方がいいんじゃないか? まっ、助手の方が腕前は上だがな」


 ふっふ~ん! とおっちゃんは胸を張る。まあ、腕前が上なのは事実だ。適応して抜いてやろうか? いや、冗談だが。これから作ろうとする物は、今のDEXで十分である。でも、おっちゃんが手伝ってくれるのなら、俺が一人で作るより品質は良くなるのは間違いないし、俺の知識にはない錬金術でより良い物ができるかもしれない。


「わかった。ありがとう、おっちゃん。それじゃあ、片手で持てるくらいの魔石ってある? それと、おっちゃんにはその魔石に魔力を補充できる仕組みを考えて欲しいんだけど……できる?」


「魔石と仕組みね。ああ、任せろ」


 頼もしい。おっちゃんは俺に楕円形の魔石を渡すと、早速作業に取りかかった。俺もそうする。魔石は魔力の源と言ってもいい物だ。だから、俺の少ない魔力の代わりになる。その魔石に、錬金術の道具を使って魔法陣を彫り込んでいく。魔石は砕けない訳ではないので、慎重に……慎重に……。彫る魔法陣の効果は「転移」。適応したからこそ、転移魔法陣の仕組みが理解できたのだ。学園のダンジョンの転移魔法陣は、ダンジョン内の魔力を取り込むように仕組まれているだけではなく、所定の場所だけに飛ばすという制約によって使用魔力が抑えられているため、たくさんの人がああして何度も行き来することができるのだ。


 俺が彫っているのは個人用に改良を加えたもの。これも適応したからこそできること。一度行ったことのある場所に行けるというのは同じ。でも、距離によっては無理だろう。魔石に蓄えられる魔力にも限界がある。俺にもっと魔力があれば……まあ、ないものねだりだ。距離によっては俺ともう一人くらいは一緒に飛ぶことができるだろう。あと、使えるのは魔石的に一回限りだ。でも、そっちはおっちゃん次第。上等な物なら、短い時間で再使用できるだろう。


 なんてことを考えている間に彫り終わった。あとはおっちゃんの方――。


「できたぞ!」


「はやっ! もう!」


「ああ、元々魔力補充の仕組みはあって、そこに俺がアレンジを加えて性能を上げたのが元々あったからな。それをその魔石に合わせて改良しただけだ。簡単だろ」


 ……いや、簡単ではないと思うんだけど……さすが、おっちゃんだ。おっちゃんから手渡されたのは、楕円形の魔石の上下を嵌め込むことで中に固定できるようになっているケース。片手で持てる大きさなのは助かる。


「それで、これは結局なんなんだ?」


「ん? ああ、『簡易版魔力補充式転移魔石』といったところかな」


「は? 転移?」


 おっちゃんに問いに答えたが、おっちゃんはぽかんと口を開けて固まった。……えっと、驚いたってことかな? ……そんなに驚くことだろうか?

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