いくら希少でも、たくさんあったらありがたみに欠ける
とりあえず、普通ではないクリスタルゴーレムの素材――クリスタルがどんなものか、おっちゃんに見てもらう。大きく残っている胴体や巨剣、巨盾は邪魔でしかないので、俺が砕いて残った破片部分……の中でも手で掴めるくらいの大きさのをいくつか取り出す。おっちゃんは一つ一つ真剣に確認していって――。
「……やっぺ……うわ、やっぺ……ええ、やっば……やっば……まじ、やばくない? ……はあ? やば……」
何か似たような言葉しか発さなくなった。一発殴って正気に戻した方がいいのでは? と思わなくもない。いや、思う。これでは話が進まないので緊急的措置だ。おっちゃんも許してくれるはず。大丈夫。適応しているから、間違うことなく正確な手加減ができるから。うっかり強過ぎた、なんてことはない。だから、安心して正気に戻――。
「いや、これ、凄いぞ! アルン! 今からこれがどう凄いか説明……どうした? アルン」
「いや、何が?」
「何が、というか、右手が忙しくなく動いているのは何だ?」
「あ、ああ……うぅん……アレだよ、その……ふと意識してしまうと駄目というか、なんか普段手ってどこに当ててたというか、ほら、あるじゃん。なんか待っている時に、腕を組む人も居れば、腰に当てる人、だらりと下げる人、ポケットに突っ込む人とか、無意識で取るポーズ。それをふと意識した時に、あれ? 普段ってどうしてたっけ? みたいな疑問を抱いて余計にわからなくなる気持ち悪い感じ。そう、そんな感じになっていただけ」
「………………」
「………………」
「まあ、無意識でしていたことを意識すると失敗する時もあると聞くし、そんな感じか。そういうのは下手に意識し過ぎると余計に駄目になっていくから、一旦まったく関係ないことをした方がいいと思うぞ」
「あ、ああ、そうだな。まったくもってその通りだ。一旦忘れるよ。それで、おっちゃんは何か言い出していたけれど、何だったんだ?」
「ん? ああ、このクリスタルだが――」
ふぅ。危なかった。思わずやってしまうところだった。やっていないし、おっちゃんも気付いていない。だから、大丈夫。何も起こっていないのだから、何もなかったと言ってもいい……違うか? まあ、今はそっちはいい。クリスタルの話に集中しよう。
………………。
………………。
いくつか専門用語みたいなのも出てきてわからないところもあった。それだけおっちゃんも興奮していたということだろう。だから、そこは気にしない。俺が理解できたことは、見た目以上に強度があるので武具としても使え、魔力伝導率が非常に高いので魔道具などにも使えてと、汎用性が非常に高いので使い道がたくさんあるということだった。あと、おっちゃん曰く、クリスタル素材の中でも最上級の品質らしい。
「つまり、相当凄い物ってことだな?」
「そういうことなんだが……きちんと伝わっているか不安になる反応だな」
「まあ、おっちゃんの反応からなんとなくわかることはわかるが……たくさんあるからいまいち実感が湧かなくて」
「そうだよな。アルンの話通りならゴーレム一体分に剣と盾付きだもんな」
おっちゃんが大きく息を吐く。なんか疲れさせたようでごめん。でも、俺じゃあ使い道なんてわからないから、おっちゃんに丸投げになると思う。錬金術にも使えそうなので良かった。だから、頑張って欲しい。たくさんあるし、好きなように使っていいよ。と伝えるとおっちゃんは元気一杯になった。現金だなぁ。まあ、元気がないよりかはマシ。おっちゃんはクリスタル素材をどうするかで悩み始めた。そのまま考えさせてあげたいところだが、その前に尋ねる。
「ああ、そうだ。これとは別におっちゃんに聞いておきたいことがあるんだった」
「なんだ?」
「今回、地下28階、29階を通り過ぎたが、ハイ・オーガは見つけられなかった。だから、見つけるのに時間がかかるかもしれない。もしかしたら、ミノタウロスの方も。だから、学園のダンジョンに数日でもいいから籠りたいんだけど、どうしたらいい? 詳しく聞きたい。確か、許可が要るんだよな?」
「ああ、俺が在学していた頃と条件が変わっていないのであれば、基本的には担任の許可が必要だ。担任がダンジョン内で泊まっても大丈夫だと確認した後に許可証を出す。それで、ダンジョン内の拠点に担当者が居るから、そこで許可証の提示が必要だったはずだ。ただ、もしかしたら変更点もあるかもしれないから、一度マウマウ先生に話を聞いた方がいい」
「わかった。なら、明日聞いてみるよ。許可出してくれるかなぁ」
「まあ、マウマウ先生はアルンの『全適応』について説明しているし、事情を話せば出してくれると思うが………………そうだな。いざという時は――」
おっちゃんは悪い顔を浮かべていた。




