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足の踏ん張りは大事です

 ゴツン! ゴイン! ゴオン! と強く鈍い音が地下30階のボス部屋の中で響く。うるさいと感じる音量なのは間違いない。でも、問題ない。ここには俺とクリスタルゴーレムしか居らず、この音は俺がクリスタルゴーレムからの攻撃をかわしつつ、なんとか殴った際に発する音だからである。クリスタルゴーレムに耳はないようなので聞こえているかどうか怪しいし、俺は時に気にしていないからだ。……でも、ゴーレムは人が使役することもあるし、その際は命令を聞いている訳だよな。ゴーレムの形は様々だが、耳が付いているなんてのは見たことも聞いたこともない。どうやって命令を聞いているのだろうか? 魔力的な繋がり? でも、それなら声に出して命令しなくてもいいような……まあ、わからん。


 ――と思考を逸らしてみたものの、効果はない。痛いものは痛いのだ。クリスタルゴーレムのVITは俺のSTRを完全に超えているようで、その証拠にどれだけ力を込めて本体を何度殴っても、ヒビ一つ入っていない。逆に俺の両拳の方が傷付いていた。傷付いている上から殴っているので、両拳から止まらない痛みを発し続けて泣きそう。骨までは達していないが血塗れである。というか、既に拳を握っている感覚がない。ちゃんと握れているだろうか? いや、見れば握っているのがわかるが……そんな感じなので力がまともに入っていない気がする。


 で、どう? 「全適応」さん。


《――あともう少しといったところですが、適応者が気にしている通り、ここ数発の殴打の際に力が入っておらず、経験が積まれていっていません。別の攻撃手段でお願いします――》


 まだのようだ。手厳しい。しかし、別の攻撃手段か。殴るのがもう意味を成さないとなると、次は蹴りか。筋肉量の違いで殴るより蹴るの方が強いと聞いたことはあるが、それでもクリスタルゴーレムにヒビすら入れられない気がする。あと、殴るより強いということは、それだけ返ってくる痛みを大きくなるということだ。……覚悟して攻撃するしかない。傷付いた両手はだらりと下げてもいいが、これまで殴ってしかこなかったので、フェイントに使えるかもしれないと構えは解かずに突っ込んでいく。


 クリスタルゴーレムの巨剣をかわし、回り込もうとする俺の動きに合わせて巨盾を構えた上半身がぐるぐる回る――よりも速く動き、折を見て飛び出すように距離を詰めて、勢いも力に変えた強い蹴りを放つ。ゴイィィン! とこれまでで一番大きな鈍い音が響く。でも、クリスタルゴーレム、無傷。どれだけ硬いんだ、こいつ。そして、当然のように蹴った足が滅茶苦茶痛い。軽く痺れているくらいだ。そこに、クリスタルゴーレムが巨剣の柄頭で迫ってきたので、クリスタルゴーレムの体を蹴って離れようとしたが、痺れた足で踏ん張りが効かず、つるんと滑る。


「あっ」


 迂闊で間抜けな声が出た――瞬間、巨剣の柄頭をまともに受け、押し出されて空中に放り出される。一瞬息が詰まるくらいの衝撃を受けた。でも、直ぐは無理だがこれで動けなくなるほどではない、と思ったのだが、そこに巨盾が迫る。


「まあ、隙を見逃す訳ないわな」


 巨盾に叩き飛ばされて、床に激突。少し痛みを感じるが、それよりも先に一旦距離を取ることを優先する。立て直しそうとしたが、その前に上から巨盾が叩き付けられて床に体が少しめり込んだ。離れようとしたが、そのままガンガンと何度も叩き付けられる。痛い。痛い。それなりのVITがあるので、これでやられるようなことはなかったが、それでも巨盾の大きさもあって両手足が潰された。骨は折れていないと思うが、立ち上がるのは難しい。一気にやられてしまった。


《――もう少し。後一手です――》


「全適応」さんの声が聞こえた。そのためにも回復魔法を――使うよりも前にトドメとばかりにクリスタルゴーレムが巨盾を勢い良く振り下ろす。巨剣の方でなくて良かった。でも、まともに受けるとヤバい。両手足が動かないので防ぐことができない。だったら――。


「そう、簡単に、俺をやれると思うなよ!」


 迫る巨盾に頭突きを食らわせる。ゴイィィィン……といい音が響いた気がする。頭がくらくらして……目がチカチカして……意識が、途切れ、そうで……わからない。


《――100%。得られた経験により、クリスタルゴーレム(強化種)に適応しました。主にHP、STR、VITが適応しましたが、適応者の状態が非常に良くありません。直ちに回復魔法を使用して状態を改善することを推奨します――》


 ……「全適応」さんが、何か……言っている、気がする……回復魔法……でも、意識がまとまらない、から……魔法が………………ん? あれ? 巨盾が……迫って、いるような………………くっ!


 ――ゴッ! と巨盾が上から叩き付けられる。


 ………………。

 ………………。


 ふぅ。なんとか間に合った。巨盾を叩き付けられた痛みがないのは、適応したからだと思う。そして、意識がハッキリしたのは多少なりとも回復したからだ。回復魔法ではない。巨盾が叩き付けられる直前に手首のスナップを利かせて「アイテムボックス」の中から、おっちゃん印の各種回復薬が入っているウエストポーチ(マジックバッグ)を胸の上に取り出したからだ。それを巨盾が叩き付けて、中の各種回復薬が入った瓶が割れた。これ多分全部割れている。色々混ざったが回復しているので問題ない。意識もハッキリしたので少ないМPでも回復魔法を使えるだけ使って……全快にはほど遠いが動けるようにはなった。


「よいしょ、と」


 胸の上にある巨盾を押し退けると、クリスタルゴーレムが勢いに負けたように数歩ほど下がる。思ったよりも力が入っていたようだ。立ち上がって、クリスタルゴーレムを倒すのに問題ない状態だと確認していると、クリスタルゴーレムが襲いかかってくる。でも、残念。適応したのは感覚でわかる。もう敵ではない。振るわれる巨剣を避け、巨盾が叩き付けられる前に通り過ぎてクリスタルゴーレムの足下へ。クリスタルゴーレムの右足を殴る――と簡単に砕くことができた。次いで左足も殴り砕き、飛び上がって左肩を蹴り砕き、その勢いで右肩へと跳んで殴り砕くと、クリスタルゴーレムの頭部がこちらを向く。


「いや、ほんと、強かったよ、マジで」


 実際、危なかった。伸びた鼻を折られたというか、調子に乗りそうになる前にわからされたというか、適応前にやられてしまっては意味がない。強く実感した。そのお礼に、今出せる全力の拳で頭部を殴る。クリスタルゴーレムの頭部は粉々に砕け散り、残った体部分は床の上に落ちて動かなくなった。


 どうにか、倒すことができたようだ。

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