表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/287

成功体験は次の成功に繋がる……かもしれない

 翌日。昨日は一度も成功しなかった上級回復薬を作りたいところだが、今日はエリアスト王立学園がある。さすがにサボるのは………………サボるか? 上級回復薬を作れるように適応するのは早い方がいい。つまり緊急事態だ。緊急事態なのだから、サボってもいいのではないだろうか?


「いや、駄目だ」


 おっちゃんにそう直談判してみたが駄目だった。「午前だけなのだから行って来い」、「根を詰め過ぎてもいいことはないから、息抜きのつもりで行って来い」と言われたので、エリアスト王立学園に行く。決して「……それに、サボったのがマウマウ先生にバレると怖い」というおっちゃんの言葉に同意した訳ではない。そう、決して。


     ―――


 エリアスト王立学園。Eクラスの教室。サーフェとナリと普通に挨拶を交わして、席につく。


「おはよう」


「ああ、おはよう」


 状況的に必然なので、隣の席のタオとも挨拶を交わす。サーフェとナリは特に変な反応はしていない。残る女生徒二人は……特に気にしていない。恐らく、タオが話してくれたのだろう。誤解が解けたようでホッと安堵。……いや、本当に解けているんだよな? 確認しようにも、もしそれで解けていなければ更なる誤解を招きそうで………………良し。解けた、としておこう。うんうん。それがいい。余計なことはしない。時にこれ大事。


 一人納得していると、マウマウ先生が入って来る。


「皆さん。おはようございます。……おや? 昨日まで感じていた青春の香りが消えたような……それとは別に誰かサボろうとした気配が……いえ、皆さん揃っているので気のせいですね。では、今日も一日頑張っていきましょう」


 ……危なかった、と思う。不意に、隣の席のタオから安堵するような息遣いが聞こえた。サボって錬金工房に行こうとしていたのか、お前。

 一度はサボろうと考えた反動という訳ではないが、真面目に授業を受けた。


     ―――


 授業は終わり、タオは先に出たが、俺はサーフェとナリと一緒にお昼ご飯を食べてから家に帰った。おっちゃんが言ったように、いい気分転換になったと思う。家に帰ると、まず妹の様子を確認。既に眠っていて………………昨日より全体的に1mm細くなっている――かはわからないが、早く「魔障」を治療しないとな、と決意が漲る。今日こそ適応してみせる、と錬金工房に向かう。


 錬金工房に入ると、タオは既に来ていて、おっちゃんの指導を受けていた。おっちゃんに帰ってきた挨拶をして、タオにもと思ったが集中しているようなので止めておく。俺は昨日と同じく上級回復薬を作り始めた。


 ………………。

 ………………。

 駄目だ。成功しない。湯を沸かさずに、まではできるが、今は濃度の識別で失敗する。上手くいかない。やればやるほど、正しい濃度が曖昧になってきて……混乱してきた。もう一度おっちゃんに手本を示してもらおうかな? と思っていると、そのおっちゃんに声をかけられる。


「どうした? 上手くいかないか?」


「ああ、今は濃度の見極めが難しくて……もう一度手本をお願いできないか? タオの方で忙しいとは思うけど」


「別にいいぞ。あっちは大丈夫だ。今、イシス用の魔力回復薬の製作を頼んでいるからな。先に一本作ってもらったが、確かに回復量が俺のより上だった。気休めだろうと、少しは楽になるだろう」


「そっか。……それじゃあ、手本をお願い」


 おっちゃんに手本を示してもらい、今度こそ――と再度作り始める。


 ………………。

 ………………。

 駄目だ。失敗した。多分だけど、各薬草でできた液体を混ぜ合わすのにも順番がある気がする。後、かき混ぜ方というか、かき混ぜ過ぎても駄目なのとかありそう。


 思わずおっちゃんを見ると、おっちゃんはニヤリと笑みを浮かべた。どうやら、俺の勘違いではなさそうである。


「教えてくれれば、こんなに失敗することもなかったのに」


「自分で気付くことが大事なんだよ。教えられるだけでは身に付かないこともあるからな。それに、勘がいいのかアルンは思っていたよりも早く気付いたから、物作りの才能があるのかもしれないな。ほら、今度はもう少し詳しく教えるから」


 おっちゃんに改めて気を付けるべきポイントを教えてもらい、これで――というところでタオが帰る時間になったと知らせるように迎えの馬車が来たので、タオに帰るようにと促したのだが……。


「いや、もう少し! これだけは! あとちょっと!」


 拒否された。というか、これは放っておくといつまでもやり続けるのではないだろうか?


 おっちゃんもそのことに気付いて、協力してごねるタオをどうにか引き剥がして馬車に乗せ、見送ることに成功した。やり切った、とおっちゃんと固い握手を交わす。


 これで多少なりとも疲れたので止めてもいいのだが、最後にもう一回――と上級回復薬を作り始め………………おっちゃんの細かい指示のおかげで失敗せずにできた。うおおおおお。少し輝いて見える青色の液体。上級回復薬ができた。成功した。一度だろうとも、この成功体験は大事だ。不思議と、この後も作れそうな気がする。その気が間違っていないと証明するように――。


《――100%。得られた経験により、DEXが「上級回復薬を作れるくらい凄く器用」に変化しました》


 と「全適応」さんからのお知らせが届いたので確認してみると――。


     ―――


 DEX 上級回復薬を作れるくらい凄く器用


     ―――


 という表記になっていた。これなら……いける?


《――これなら大丈夫です。あとは罠に対する経験を得られればスキル「罠感知」を得ることができます――》


 良し。そうなれば、明日は学園のダンジョンだ。おっちゃんに目標としていたDEX値に届いたようだと伝えて、色々教えてくれて、協力してくれてありがとう、と言葉にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ