失敗の先に成功があると信じているからこそ頑張れる
タオが帰った後、おっちゃんに相談してみた。
「………………」
首を傾げられた。よくわかっていない感じである。まあ、「全適応」さんについて説明はしたけれど、実感していないとわかりづらいかもしれない。なので、先にDEXが今どうなっているのかも含めて説明から始めて、聞き終えると――。
「……なるほど。つまり、普通は少しずつステータスを上げていくものだが、アルンの場合は一気に上げることができる、ということだな?」
「そう。でも、そう簡単ではないというか、ある程度経験する必要がある感じ。最近だと、適応を速めるのに条件をクリアしないといけない時もあるけど、今回に関してはもう下地ができていると思うから、大丈夫だと思う」
それに、今までのも無駄ではない。ある程度の下地となるものがないと、いきなり難しいのをやっても失敗するのは当然だが、その場合は早々に失敗してしまうことが多く、それは対象に触れている時間が短い分、あまり経験を得られていないと思うのだ。
《――同意します――》
「全適応」さんもそう言っているので間違いない。
おっちゃんも理解したように頷く。
「ということは、下級はもう作れるから普通はそこから中級に進むものだが、アルンの場合は中級を飛ばして上級、あるいは失敗前提でその上をやらせてもいい……いや、やらせた方がいいということだな?」
「そういうこと」
わかってくれて良かった。「そういうことなら、わかった」とおっちゃんも協力してくれることになった。ついでに、明日はエリアスト王立学園が休みの日なので、朝から取りかかれるのは非常に助かる。タオに関しても、エリアスト王立学園が休みの日は家に来ない。休日はさすがにアリバイ作りが難しくて……ということらしい。なので、俺がいきなり普通はできもしないことをやり始めても問題ないのだ。
できれば明日一日で終わって欲しいな、と思った。
―――
翌日。今日はエリアスト王立学園が休みの日。寝坊というか、気ままに寝てもいい日だが、今日は朝からやることがある。寝過ぎないようにしっかりと起きて、おっちゃんの準備ができたところで早速錬金工房へ。
「それじゃあ、昨日言っていたように、本来なら中級に進む……それでも十分に早いんだが、アルンはそれよりも先、上級回復薬をこれから作ってもらう」
「ありがとう、おっちゃん。でも、上級回復薬? そういえば、錬金術じゃないのか?」
ふと気になったので尋ねると、おっちゃんは難しい顔を浮かべた。
「錬金術か……アルンにもやって欲しいと思うし、やりたいと言ってくれた時は嬉しかったが、錬金術はアルンの魔力量だと簡単なものくらいしか作れないと気付いてな……すまん」
「まあ、それなら仕方ない」
まだまだ少ないからね、俺の魔力量は。そこも今後は適応して増やしていきたいものだ。
「その代わりという訳ではないが、一応、失敗してもいいように使う素材の数はそれなりに揃えておいた。失敗しても問題ないから気にするな」
「わかった。ありがとう」
失敗が前提になると思うが、へこたれずに頑張ろう。まずはおっちゃんが手本として教えながら作るのを見る。こうすれば、こうなったら成功、というのを知っておかないといけない。
まず、使う物の品質が高いのは当然のこととして……上級回復薬の元となる薬草は数種類あって、それぞれ処理する方法が違い……違う処理をした場合は失敗するらしく……小型コンロなのは同じだが、使う水が魔力水という中級で作る特殊な水を使い……処理した薬草は一緒くたにせずにそれぞれ別の瓶を使って魔力水の中に入れ……沸かさないように注意しつつ棒でかき混ぜながら成分を抽出し……成分を抽出したのは魔力水の色が変わるのだが、必要濃度がそれぞれ違うので濃くなり過ぎず、薄くなり過ぎずに気を付け……できあがったら、棒でかき混ぜながら混ぜ合わせていき……最後に薬効効果のある植物の実を絞ったものを入れて冷めるまで混ぜると……少し輝いて見える青色の液体の上級回復薬の完成である。
青色の液体か……食指が動かないな。
「どうだ? アルン」
「うん。初見では無理。工程細かくて多過ぎ」
これは大変だ、と素直に思った。
「まあ、最初はそんなもんだ。ほら、教えるから作っていくぞ」
「わかった。指示よろしく」
おっちゃんに教えられながら、上級回復薬を作り始める。
………………。
………………。
「……駄目だな。失敗だ」
おっちゃんが告げる。数種類の薬草のそれぞれ違う処理については教わりながらなので問題なかったが、沸かさないようにかき混ぜるところを沸かしてしまった。見極めが難しい。
「もう一回!」
「そうだな。薬草の処理方法を覚えるためにも、また最初からだ」
「ああ、わかった」
再びおっちゃんが教えてくれる通りに作っていき……今日一日頑張ったが一つも成功しなかった。小さな失敗でも駄目になるのは、やはり上級だからだろう。ステータスも変化なし。ただ――。
《――経験は溜まっています――》
無駄ではないと思う。




