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いや、何故か職場とかだとできるんだけどね

 家に帰ると、早速おっちゃんから錬金術を習うことになった。向かう先は敷地内にある小屋というか別の一階建ての家。おっちゃんの錬金工房である。何気に入るのは初めてだ。


 錬金工房の中に入ると、普通の家の中とは違って、広く大きな部屋だった。壁際にはいくつもの棚が並び、素材と思われる物や錬金術に使うと思われる道具が綺麗に並べられていて、大小様々な机も置かれ、その上には何に使われるか見ただけではわからない器具や魔法陣が描かれた物があったり、水場や何に使うのかわからない大きな道具も置かれている。また、部屋はここだけではなく、この大部屋から続く部屋がいくつかあるようだ。後で教えられたが、続く部屋は一般的な素材保管庫や特殊な製法でないと保存できない物の保管庫、暗所に壁や天井を強化した実験部屋など、目的別の部屋らしい。


 ともかく、今のところ使うのはこの大部屋だけである。それはいいのだが……この大部屋に入って気付いたことがあった。何やら準備をしていると思われるおっちゃんに尋ねる。


「……おっちゃん」


「どうした?」


「この大部屋、ゴミ一つ落ちていなく、埃もなくて、きちんと整理整頓されている感じは、解釈不一致なんだけど」


「そんなん知るか!」


「以前の家の時はぐーたらの散らかし放題で、掃除も妹が率先してやって俺が手伝っていたくらいだったのに……ここの家も来た時は埃が……何故ここはこんなに綺麗なんだ。納得いかない」


「錬金術は危険な物を扱う、作る時もあるから、ゴミだらけのところでできる訳ないだろ」


「それはわかる。でも、何故その掃除力を家で発揮できないのか……」


「まあ、ここを綺麗に保つための反動のようなものだから無理だな。アレだ。職場の机の上とかは綺麗なのに、自宅は物が乱雑になっている人が居ると聞くし、大体そんな感じだな。人の性のようなものだ」


 準備する手を止めて、うんうん、と頷くおっちゃん。いや、人の性はさすがに範囲が広過ぎるというか、言い過ぎではないだろうか?


「まあまあ、家の方は今後もアルンとイシスに任せるよ。ともかく、今はアルンに錬金術を教えないとな。ほれ、準備はできたからそこの椅子に座れ」


 確かに、そのために錬金工房に来たのだと、おっちゃんの指示した椅子に座る。目の前に一人用の小さな机があって、対面におっちゃんが立つ。机の上に器具と素材が置かれる。


「まず、これから作るのは回復薬だ。回復薬自体は薬師も作ることはできるが、錬金術を習い始める者は、DEX値を上げるために回復薬作りから始めて、お店に卸せるだけの品質で作れるようになってから、漸く次へと移ることができる。まあ、基礎の基礎って感じだ。だから、アルンもまずは回復薬作りからだ」


「わかった」


 頷きを返し、おっちゃんの指示する通りに手を動かしていく。


 回復薬の元となる薬草を水場でしっかりと洗い……刃物で葉の部分を細かく切り刻み……それをすり鉢ですり潰していき……夜営とかに使えそうな小型コンロで、専用だというガラス瓶に一定量入れた水を沸かし……すり潰した物をこし器具でこしながら沸いた水の中に投入……棒でゆっくりとかき混ぜていき……小型コンロを止めて自然に冷ましつつかき混ぜるのは続けて……冷めきったら、ほんのり緑色の液体の回復薬の完成である。


 後はそれを小分けにしたりとか――大体市販されている回復薬三本分――他にもやることはあるようだが、そこは割愛。おっちゃんがスプーンを使い、品質を確認するためにガラス瓶から直接すくって飲む。


「……うん。苦くて不味いな」


「いや、おっちゃんの指示する通りに作ったのに、それは酷くない?」


「何を言っている。回復薬。薬だぞ。苦くて当たり前だ。寧ろ、苦いくらいの方が気付けになっていいんだよ。それに、今の工程の中に味が良くなることがあったか? ないよな。だから、当然の味だ。まあ、どうにか味を調えたとしても、それで効果が薄くなったり、作業量が増えたり、販売価格が上がったりと、何かしらの問題が出てくるもんだ」


「なるほど」


 言われてみると確かに、と思わなくもない。その後は、今度は配合量の違いでどう変化するかとか、今作ったのは所謂下級の類する回復薬で、これが中級や上級になると何が違うのかを簡単に説明されながら、DEX値を上げるために数を作っていく。もちろん、失敗もあったが「気にするな。最初はそんなもんだ」と慰められた。わかった。気にしない。


 また、錬金術師と薬師の違いについても説明されて………………作業中だったので話に集中できなかったが、製作工程の中に魔力を使うものがあるとか、薬師は薬特化、錬金術師は物作り特化で、スキル効果によって薬系は薬師が作った物の方が効果は高い、といったことがあるのはわかった。憶えられたのはそれくらいだ。


 そうして何度も回復薬――正式名称・下級回復薬を作っていると「全適応」さんの声が聞こえてきた。


《――100%。得られた経験により、DEXが「下級回復薬を作れるくらい器用」に変化しました――》


 ………………スキルは?


《――まだまだ経験が足りません――》


 ですよね。ステータスを確認すると――。


     ―――


 DEX 下級回復薬を作れるくらい器用


     ―――


 と確かに表記が変わっていた。

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