表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/287

帰らなきゃいけないけれど帰りたくない時もある……あるのだ

 ――いつだって終わりは唐突だ。


「「天才! 天才!」」


「……騒がしいからなんだと思って来たけれど、お兄ちゃん、何やっているの?」


 妹の声に反応してリビングの入口を見れば、呆れた表情をこちらに向けていた。俺は直ぐに妹の下へ飛ぶ。


「なんでもないなんでもない。それより、起きて大丈夫なのか?」


「今日は調子が良いから大丈夫だけど……そちらの人は、お客さん? 女性? ――はっ! もしかして、お兄ちゃん彼女ができたの?」


「「それは違う!」」


 何故か、俺だけではなくタオも反応して否定してきた。いや、別にいいが。そもそも反応してくるとは思わなかった。というか、昨日はあの後妹は寝たままだったから説明することができていなかったのが、今に響いている。なので、さっさと説明しようとしたのだが、その前におっちゃんが口を開く。


「え? 違うのか? てっきり、そういう関係だから俺に紹介してきたのかと」


「そんな訳あるか! おっちゃんには昨日説明したよな!」


 おっちゃんは味方ではないのか!


「え? もしかして、そういう目で私を見ていたの? ごめん。タイプじゃないから」


「いや、なんでそっちが振った形? 俺もそんな気ないから」


 タオが乗ってきたので、こちらも断っておく。そんな雰囲気これまで一度もなかったのだから、当然の対応である。まあ、タオもそれがわかっているからこそ、軽く乗ってきたのだろう。ともかく、今は妹への説明が先である。タオのことをどうするかはおっちゃんの判断次第なので、それはそっちに任せると告げてから、俺は妹と一緒に部屋へと戻り、妹をベッドで横に寝かせてから説明を始めた。


 ………………説明を聞き終えた妹は「そんなことだろうと思った」と少し安心したような表情を浮かべた後に眠った。穏やかに寝息を立てているが、以前と比べて少し痩せ細っている。これまでと同じような態度に見えたのも、心配させまいと気丈に振る舞っていたのだろう。スキル「罠感知」を獲得できたら、一気に攻略を進めて残る二つの素材を手に入れることも視野に入れておいた方がいいかもしれない。


     ―――


 リビングに戻ると、おっちゃんとタオの話も終わっていた。タオが錬金術の師事をお願いして、おっちゃんはそれを受けることにしたそうだ。タオは満面の笑みである。とりあえず、「全適応」さんがこうした方がいい、という形になって内心でホッと安堵した。


「――でも、おっちゃんは今のところ家から離れられないし、タオはこれから授業が終わればここに来るってことだよな? 別に迷うような場所じゃないが、俺も学園のダンジョン攻略とかあるから同行できない時があるし、さすがに貴族令嬢が一人で来るなんてのは不味くないか? それに、帰りはどうするんだ? いくら王都とはいえ、さすがに夜道に一人は危ないどころの話じゃないだろ」


「そこら辺は大丈夫よ。一応、これでも貴族家の娘だから送り迎えがあるから、そっちにお願いするつもり。使用人は私の味方だし、話も合わせてくれると思う。まあ、そもそも家族は私のことなんてちっとも気にかけていないから、それらしい理由をでっち上げれば平気平気」


 タオはなんでもないことだと明るく言っているように見える。でも、家族との関係が良くはなさそうだ。俺もそうだが、おっちゃんもなんとも言えない表情を浮かべている。そんなおっちゃんと視線が合う。


 ――いざとなったらクラスメイトとして頼むぞ。


 と目線だけで言ってきたので。


 ――いざとなったら師匠として支えろよ。


 と目線だけでしっかりと返しておいた。


 とりあえず、おっちゃんとの話は終わり、送り迎えとか今後の話をしないといけないということで、タオはこれで一旦帰るそうだ。本人としては非常に名残惜しそうというか、今直ぐにでも錬金術についておっちゃんから学びたそうである。それでも、事前の根回しというか、そういう部分をしっかりとしておかないと後々面倒になると理解しているのが、グッと我慢したようだ。一応、今日は俺がエリアスト王立学園まで送るのだが――。


「………………やっぱり少しだけ」


「いや、我慢するんだろ。さっきそう言っていたじゃないか」


「わかったわよ………………でも、先っちょだけでも」


「駄目だ。一度やり出したら時間忘れてやりそうだから」


「ぐぅ。それはそうね………………けど」


「帰らなきゃいけないんだから帰れ」


 数歩進むごとに足を止めるタオを家の外に出すまで大変だった。家の外に出ればさすがに観念したというか、諦めがついたのだろう。大人しくなって、エリアスト王立学園まで送れた。いや、おっちゃんのことやレスキューフィンガーの衣装についてとか尋ねられまくったので大人しくはなかった。ただ、足を止めなかっただけありがたかっただけである。別れ際に「明日からよろしく」と言われ、「全適応」さんが言ったようにおっちゃんに丸投げしようと思う。


 この後、行こうと思えば学園のダンジョンに行けなくもないが、今日からおっちゃんに錬金術を習うので真っすぐ家に帰った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ