表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/287

いきなり引くような状況に遭遇する時もある

 落ち着くまでの時間が必要なのだろう。多分、おっちゃんは天を仰いだままなので、俺は床の上のうつ伏せのまま待機する。


 ………………。

 ………………。


「………………何、これ?」


 妹の声が聞こえた。振り向きたいが、こんな姿の俺を見ないでくれ、と思う気持ちが強くて振り向けない。そもそも、もう姿は見られている。ならば、正直に言うべきだ。


「おっちゃんに謝罪をしている!」


「……意味がわからない。余計に体調が悪くなりそうだけど、そういう遊び? どういう遊び? まあ、妹として付き合いたいところだけど、水差しの水を入れに来ただけだから」


 妹がリビングから続く台所に向かう足音がして、水を入れる音が聞こえた後、そのままリビングから出て行――かずに足を止めた。


「もし、私のことが負担になってそんな奇行に走っているなら」


「「それは違う!」」


 俺とおっちゃんの声が重なる。急いで立ち上がり、正気を取り戻したおっちゃんと共に、妹にそんなことは決してないことを勢い良く説明した。妹はわかってくれたようで、「でも、無理はしないでね」と笑みを浮かべて部屋へと戻っていく。


 おっちゃんと共に安堵の息を吐いた。


     ―――


「……とりあえず、なんでそんなことになったのか、説明してくれるか?」


「もちろんだ」


 リビングで一から説明を始める。地下12階の出来事からタオ・マージクにレスキューフィンガーの新たな中指として、サーフェ、ナリと共に目を付けられたこと。そこからのちょいちょい当たっている推理。否定はしたが、その後に後を付けられていて、俺が地下20階以降に行っていることがバレる。それでも否定して、どうにか誤解は解けたが、その後に知ったタオ・マージクの目的に反応してしまい、話だけはしてみる――と今に至るまで。それと、「全適応」さんからの情報も合わせて話した。


「……という訳で」


「………………」


 おっちゃんからの反応はない。目を瞑り、両腕を組んだまま動かない。思考中のようなので、俺はおっちゃんが答えを出すのを待つ。


 ……少し待った後、おっちゃんが口を開く。


「まあ、数日でいいそうだが、アルンに『錬金術』を教えるのは別に構わない。寧ろ、嬉しいくらいだ。だから、それはいいのだが……その、女生徒、えっと……」


「タオ・マージク」


「そう、そのタオ・マージクについても、魔力回復薬の質が良くなって量が増えるのなら、それに越したことはない。だが、一つ確認しておきたい。そのタオ・マージクの目的だが、アルンの他に知っている奴は居るのか?」


「え? 他に? いや、俺が聞いた時は俺しか居なかったけど……それ以前についてはわからない。でも、誰にでも言っているような感じではなかったから、知っている人が居たとしても極少数とかじゃないかな?」


「そういう感じか……まあ、アルンから聞いた限りだと俺から『錬金術』を学びたいとかそんな感じだろうから、俺のことを秘匿することを条件にとか、やりようはあるが………………わかった。とりあえず、明日でもいいから向こうの都合がつく時に連れて来てくれ。その時に俺が判断する」


「いいのか?」


 雰囲気的には大丈夫そうだったので、念のために聞いてみたのだが――。


過去の自分(闇歴史)と向き合うことになると思うと今から挫けそう……」


 おっちゃんが闇を纏った。かと思えば直ぐに自ら払い除けた。


「だが、これでイシスを助けられる確率が上がるのなら……覚悟を決める! どーんとかかって来い! ……いや、やっぱり来るなら来るで手加減して欲しい。どう手加減してもらうかさっぱりだが」


 勢いが弱まったが……大丈夫だろう。多分。きっと。


 その後、俺の「錬金術」学習は準備もあるので明日からと言われたが、心を立て直す準備もあるのだろう。申し訳なく思うが、よろしくお願いします、と頭を下げた。


     ―――


 翌日。Eクラスの教室に入ると、タオ・マージクが目を輝かせて俺を見る。朝から眩しい、と目を細めた。入って直ぐの席ということもあって、既に来ていたサーフェが声をかけてくる。


「……おはよう。だ、大丈夫なのか? なんか昨日より圧が強くなっているように見えるんだが?」


「……おはよう。まあ、大丈夫だ。大体の話は昨日で片付いているから」


 苦笑いを返しておく。ナリも心配そうにしていたので、そちらにも。でも、二人共、俺を置いていったのは忘れていないからな。まあ、予定が会ったのなら仕方ない、とも思うし、俺が二人の立場だったならきっと同じことをしたとも思う。責めるに責められない。


 席につく。タオ・マージクは俺の隣の席だ。俺の方に体ごと向いてきた。


「おはよう。それでどうな」


「おはよう。慌てるな。今は授業が優先だ。でないと、マウマウ先生が怒るぞ」


 タオ・マージクもそれは嫌なのだろう。しぶしぶといった感じではあるが前を向く。ただ、こんなことはなかったからか、サーフェとナリはまだしも、他の二人の女生徒は少し間だけ、驚くようにこちらを見ていた。


「――おはようございます。今日も一日に元気に授業を……おや? なんですか? この雰囲気は? もしかして、青春ですか?」


 マウマウ先生は首を傾げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ