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自然と頭が下がる

 しまった。思わず、反応してしまったのだ。てっきり、俺はタオ・マージクはレスキューフィンガーに入りたいのだと思っていた。もしそうなら、推薦くらいはしてもいいかな? と思っていたのである。入れるかどうかを決めるのは、レスキューフィンガーだし。でも、違った。というか、まさか、なのだ。あの姿に惚れ込み、目指す人が居るとは思ってもいなかったのである。まあ、感性は人それぞれなので、そんな人が居てもおかしくはないのだが、こんな近くで出会うことになるとは……どうしよう………………良し。


 顔を覆っていた両手を下ろし、真っすぐにタオ・マージクを見る。


「いや、知らない」


「嘘ね! 先ほどの反応が何よりの証拠! それで誤魔化せると思わないで!」


 真正面から言えばいけるかな、と思ったが駄目だった。タオ・マージクに諦める気がないのは目に見えてわかる。本当にどうしよう………………ピン! と来た。この状況に適応すれば最適解がわかるのではないだろうか? たとえもう状況は覆せないとしても、一縷の望みを賭ける価値はある。「全適応」さん。


《――……ふむ。これは、丁度いい機会かもしれません――》


 思っていた反応と違うけど、どういうこと?


《――実は、適応者が望むスキル「罠感知」についてなのですが、これまで罠に引っかかってきた割には経験の伸びが悪いのです。このままですと思っているよりも時間がかかりそうなのです――》


 ……つまり、真っ黒な巨大魔蜂と洞窟内ではなく洞窟外で直に戦った方がより経験が溜まっていった時のように、何かしらの条件を満たした方が早く溜まっていくってこと?


《――はい。それが今回は適応者のDEX値となります。罠の仕組みを理解する。罠が作れる。罠を設置できる。罠を解除できる。そういったことに関係してくるのがDEX値ですので。「錬金術」でDEX値を上げていけば、経験はより速く溜まり、直ぐにでもスキル「罠感知」を得ることができるかと思います。ですので、数日間で構いませんが、件の衣装を作った製作者から「錬金術」を学ぶのはいかがでしょうか?――》


 ……なるほど。そういうことか。製作者というのはおっちゃんのことかな? ――いや、待って。DEX値が重要だと言うのはわかった。でも、俺が今お願いしたいのは、タオ・マージクへの対応なんだけど?


《――現状の適応も終わっています。結論から言えば、断った場合は今後も付きまとわれて適応者のダンジョン攻略に支障が出ます。製作者に丸投げしましょう――》


 え? そうなの? まあ、「全適応」さんがそう言うのならそうなのだろう。でも、おっちゃんがなんと言うか……。


《――それについては、交渉材料として、製作者にも適応者にも利があることを教えればいいのです。それは、「魔力回復薬」です。その名に魔力があるように、製作時には魔力を必要とします。そこの追っかけの魔力は製作者以上にありますので、数が揃えられて、質も高くなりますから、今よりも効果が良くなります。頑張って説得してください――》


 その案。採用で。おっちゃんに任せよう。妹にとっていい物はすべてにおいて優先される。おっちゃんもわかってくれ……ん? 追っかけ? ……まあ、いいか。


 俺が考えているとわかっていたのか、今まで黙ったまま熱く輝く眼差しを向けていたタオ・マージクを見る。うっ。圧を感じる。落ち着いて欲しい、と俺は少し引き気味になった。説得が必要なようなので、今は誤魔化しておこう。


「わ、わかった……確かに、俺はそれが誰か知っている。だからといって、それが誰かを俺が今キミに教えるのは別の話で、俺が先に話を通すべきはその誰かの方だ。一応、キミのことは伝えてみる、ということでいいか?」


「わかった。一緒に私の熱意も伝えてね!」


 頷きを返すが……熱意ってどう伝えればいいんだ? 俺としては疑問だが、タオ・マージクはそれで満足したのか、「それじゃ、また明日」とEクラスの教室から出て行った。俺は大きく息を吐く。なんか漸く危機を脱したような気分……いや、まだ脱してないな、これ。もう一度大きく息を吐く。今日はもう学園のダンジョンに向かう気力が湧いてこなかったので、帰ることにした。おっちゃんに話もしないといけないし。ダンジョン攻略の支障ってこういうことなのかもしれない。


     ―――


 帰宅。おっちゃんがリビングに居た。


「おかえり。今日は早いな。何かあったのか?」


 いつものなら学園のダンジョンだから、そう思っても不思議ではない。実際何かあった。俺は直ぐに頭を下げる。


「すまん!」


「は? え? 何?」


 おっちゃんがレスキューフィンガーの衣装について思うところがあるのは知っている。だから、気持ちが収まらないので思うまま膝を折り、両手を床について頭も床につける。


「本当にごめんなさい!」


「いや、だから、何? どうした? 本当にどうした?」


 それでもやっぱり申し訳ないので、膝を伸ばしてうつ伏せのような姿勢を取る。


「申し訳ない! レスキューフィンガーの衣装製作者が誰か知っていることがバレて、紹介して欲しいと言われた」


「あ~……これも因果か……」


 今の俺は床しか見えないが、きっとおっちゃんは天を仰いでいると思う。

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― 新着の感想 ―
おっちゃんの黒歴史・・・、当時はノリノリで作ってたんだろうなー、現在のレスキューフィンガーの服は当時のじゃないよね? 前は感想欄が「気になる点」や「一言」で分かれてたんだけど統一したんだね、今回初め…
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