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夢で見たネタから出来てるシリーズ

身代わり令嬢、細マッチョ騎士になる。

作者: 藤 都斗

 




「おーい! ルシード! お前もミリーちゃんからの差し入れ食うだろー!?」


 聞き覚えのある声でのその呼び掛けで、報告書を書いていた手を止めて、そのままそのへんに放り出す。

 ガタガタする椅子を蹴り倒す勢いで机から離れ、同僚兼同期兼友人のサムの声が聞こえた所まで走った。


「差し入れって何!? クッキー!? ケーキ!?」

「今日はなんと! 蜂蜜入りケーキ!」


 スライディング気味に声をかけると、サムがまるで自分が作ったかのようなドヤ顔で小さな紙袋を天高く掲げた。

 お前は作ってねぇだろというツッコミは置いといて、自分よりも背の低いサムが掲げた紙袋をサラッと奪い取り、はしゃぐ。


「よっしゃあああああ! めっちゃ美味いんだよなあミリーちゃんの蜂蜜入りケーキ!」

「ルシードお前、持って来てやった俺に感謝しろよな~」

「ははぁ〜、サム殿誠にありがとうございます~」

「良きにはからえ〜」


 全力のふざけ合いでキャッキャしてから、蜂蜜入りのマフィンみたいなお菓子を一つ取り出して、もぐっと頬張る。

 そのまま噛み締めるとじんわり蜂蜜とバターが染み出て、蜂蜜の香りが鼻を抜けていき、更にほんのりとした甘さが口いっぱいに広がった。シンプルだからこそ、とても良い。


 家がパン屋さんだから、そのついでか何かでお菓子作りも得意という、この街で嫁にしたいランキングの一位二位を争う素晴らしい娘さん、それがミリーちゃんだ。

 少しふくよかで、家庭的で優しくて、こんなお嫁さん貰ったらきっと毎日が幸せいっぱいおなかいっぱいだろうと評判である。

 美人というよりは、小さくて可愛くてふんわりしたアンパンみたいな、とても良い子だ。


「いや~、養蜂やってるミリーちゃんの爺ちゃんさまさまだよなぁ〜」


 溜息混じりの感嘆の声で、サムが呟く。

 自分は真顔で、真剣に、物凄く真面目な顔で頷いた。


「あの爺さん居なかったらこの街の甘味終わるもんな」

「いや終わらねぇだろ、他にもあんじゃん」


 冷静なサムのツッコミだが、しかし。


「高ぇんだよ他のを使った甘味」


 特に砂糖。黒糖でも高いのに、砂糖はその上を行く。貴族とかそういう上流階級の人間や金持ちの商人くらいしか買えないのが現状だ。

 そんな砂糖を使った菓子なんて庶民にはお目にかかる事すらない。

 もっぱら黒糖やシロップ、そして蜂蜜だ。

 一応扱ってる喫茶店はあるけど、どれも平騎士には高い。

 店長と仲良くなって、試飲や試食をさせて貰ってたりはするけど目玉飛び出る値段だった。

 あれ、この街に住んでる貴族とか金持ちしか買えないんじゃなかろうか。

 俺が買えるのは蜂蜜使ったケーキだな。それでも滅多に食えねーけど。


 だがしかし、ふと、芋づる式に新たな産業が生まれそうな事を思い出した。


「あ、そういやこの街でも今度カブみてーな野菜から砂糖が作れるようになったんだってよ、だから今後はもっと安くなるかもな」

「へえぇ〜、砂糖がカブから? 訳わかんねぇ世の中になったもんだ」


 カブっていうか、甜菜って呼ばれてたあの野菜と同系統なんだろうな、とのんびり考えつつ、サムの呟きにツッコミを入れる。


「いやいや、元々黒糖だってなんか太い草から出来てんじゃん」

「えっ、草から出来てんのアレ」


 興味が無けりゃ原材料なんて知らんのは、どの世界でも共通の、普通の事だ。

 余程関心が無ければ自分の住んでる街の事さえ知らない人の方が多い。

 それは毎日を生きて行くことに必死だからだ。

 知らない事が悪いかというとそうじゃないから、サムも、その他の人もこれでいいんだろう。


「この街で昔から使われてるシロップだって木から採れてんぞ」

「すげえな植物、つーかルシードそーゆーの詳しくね?」


 知る必要もあって、知れる環境にある人間が知らない事の方が悪いと思う。

 ただ自分がそれを知りたかったのは単純な知識欲と。


「甘いもんは俺の生き甲斐だからな」


 それだけだ。


 だってこんな世界で美味しい物が食べられるなら食べておきたいじゃないか。あと美味しいものは正義。


「どうせ見回りの時に捕まえた女の子からの情報だろ」

「バレたか〜」


 てへ〜、なんてふざけると、サムは腹立つヤレヤレ顔で盛大な溜息を吐いた。


「は〜ぁ、モテ男腹立つ~、女みてえなキレーな顔しやがってクソが」

「それだけじゃありません~、筋肉もあります~」

「知っとるわ、いい加減に特定の恋人作れよルシードお前」


 サムのそんな言葉がぐさりと刺さる。心が痛い。

 サムのくせしやがって的確に傷を負った部分を攻めてきたなコイツ。


「うるせぇ俺だって出来ることなら作りてぇわボケ」

「ルシード君って、なんか、恋人にはしたくないのよね……、だっけ?」

「思い出させんな告白すらしてねーのにフラれた時の事なんぞ!」


 ジロっと睨み返し、サムに向かって苛立ちをそのまま口に出した途端、プークスクスと笑いを堪えながら心の傷を抉られた。腹立つ。


 だって、仕方がないじゃないか。

 自分はこれでも生物学上、れっきとした『女』なんだから。

 だから女の子とちゃんとした恋人になんてなれないし、こんな男みたいな女、男からすれば眼中に無い。


 それだけならまだマシだ。

 自分には暗過ぎて腹の立つ過去が横綱並の大きさで横たわっているのだから。





 はい、ここから暗い話入りますが、生い立ち的なアレなのでオブラートとフカフカのクッションで包んでダイジェスト版でお送りいたします。


 簡単に言えば、今住んでるここは地球じゃなくてRPGみたいなファンタジー的異世界で、自分は地球からの転生者である。


 まず自分が死んだ時は、大学一年生だった。

 名前までは覚えてない。ただの、それなりに普通の女の子として生きていた。

 その人生では小さい頃に両親と死に別れたらしくて、物心ついた時には施設にいたけど、素敵な里親さんに恵まれて、引き取って貰えた。


 それが不幸の始まりだったなんて知らなかったけど。


 大学に入った時に寮生活になって、そしたらある日ベランダから侵入して来た男に襲われて、ボロ雑巾みたいに殺された。

 死ぬ間際に見えた男の下卑た顔は、優しかったはずのお義父さんで。

 そんな最悪な死に方をしたからかは分からないけど、その記憶を持ったままもう一度人間として生まれてしまった。


 何故か、剣と魔法のRPGみたいな、ファンタジーな世界に。


 それだけなら良かったけど、自分が産まれたのはスラム街だった。

 汚くて臭くて食べる物も着る物も僅かしかない、なんかもう信じられないくらい悲惨な場所だった。

 人が人を、物理でも食糧的な意味でも食い物にするような場所で子供が生活するには、毎日を必死に逃げ回るしかなかった。


 なんか知らんけど流行ってるらしい異世界転生したんだなぁくらいしか思わず、ただ、生きていくのに必死だった自分には前の記憶なんて邪魔なだけだった。


 なんでも食べたし、何でもした。

 盗みも詐欺も、やりたくもない殺人さえもやった。やるしかなかった。


 そんなある日、自分は『スラム街の孤児』から『貴族の義娘』になった。

 金髪で青い目で、整った顔立ちをしていて、賢そうだったから、というのが理由だった。

 年齢的には、6歳とかその位だったと思う。ガリガリで薄汚く、言葉も覚束無い上に、性別すらも分からないくらいの自分を、何故引き取ろうと思ったのか、その理由としては弱過ぎる要素だと思う。


 まあ、前世が前世だったからその新しい義父を信用なんて一切出来なかったんだけど。

 灰緑色の髪と瞳をした、『お父様』は恩人ではあるし、尊敬もしていた。

 だけど、それ以上に不信感があった。


 義娘になるのに、名前を教えてもらえなかったからだ。


 その代わりかは分からないが、自分には『ルーシー』という名を与えられた。

 家柄に相応しいようにと色んな教育を受けられたのは良かったけど、何か妙な家だった。


 『お父様』はたまに様子を見に来るだけで、殆ど帰らない。

 義母らしき人も居ない。

 前世の記憶もあってか、教養や勉強は問題なくこなせたが、ほぼ使用人と家庭教師のみと過ごす毎日だった。


 その生活が一変したのは、12歳くらいの頃にある人物が現れた時だ。

 灰色の髪と瞳をした、魔術師と名乗る男だった。


 そいつは薄気味悪くこう言った。


 お前は養父の為に騎士にならねばならない。

 故に一人で誰にも知らせず家を出て、騎士団へ入れ。


 何を言っているのかと疑問に思いはしたが、何故だか気が付いた時には荷物をまとめて、家出同然に窓から飛び出していた。

 今思えば、暗示のようなものを掛けられていたのかもしれない。


 着の身着のままの服で飛び出したが、生活水準がファンタジーなこの世界で身なりの整った年若い美少女一人で行動するのは普通に危険だった。


 この頃は本当に美少女だったのだ。儚げでちょっと力を入れたらポッキリ折れてしまいそうなくらいの、完璧な美少女。

 性格は今と大差無いけど、貴族の義娘として生活しなきゃならんかったので猫はめちゃくちゃ被ってた。

 とはいえ出てしまえば猫など要らんわけで。


 仕方なく、その辺りの家に干されていた洗濯物から自分の体格に合う服をいくつか手に取り、代わりに自分が着ていた上等過ぎるドレスを置いた。


 まとめた荷物の中には着替えもあったが、それは路銀の足しに。

 伸ばしていた髪もバッサリ短く切って、荷物の中に突っ込んだ。


 ここまで何の疑問もなく行動して、ふと我に返ったのは、『ルシード』として国営の騎士団の門を叩いた後だった。

 何が起きたのかよく分からないが、ちょうど新兵を募集していた所だったらしく、上手く滑り込む事が出来た。


 生まれつき『頑強』と『剛力』というファンタジー満載のよく分からない加護とか呼ばれる何かが付いていることもその時知った。


 だがそこからの毎日は地獄のようだった。

 ちょうどこの国がどこかの国と戦争を始めてしまったのが一番の原因だろうけど、それを含めなくても地獄だった気がする。


 結果として、育ち盛りに過剰な運動をしたせいか、23歳くらいを越えた現在、この身体は、おおよそ女とは思えない肉体へ成長してしまった。


 胸は、ほぼ筋肉の膨らみしかなく。

 腹筋はシックスを通り過ぎてエイトパック。

 男達に混ざった食生活だったせいか身長は190くらいまで伸びた。


 唯一、顔面は女っぽい顔に整っていたので、どう見てもただの長身細マッチョ美青年である。王子様である。


 どうしてこうなった。

 加護とやらのせいなのか、それともこの身体の本当の母か父がゴリラだったのか。

 男装の麗人のような色気も儚さも一切無く、っていうか、これはもはや完全にブツが付いてないだけの男だ。

 それもこれも全て、騎士団という男だらけの中で育ったせいで、仕草も所作も言動も何もかも男として根底まで染み付いてしまったせいだ。

 令嬢として育てられた六年よりも、騎士として育てられた11年の方が自分に合っていたなんて考えたくないが、完璧に上書きされてしまったのだからどうしようも無い。


 上流階級の人の警護で気品のある所作が出来る程度の微かにしか残ってない。

 女の子らしさなどもう分からない。なにそれ美味しいの。


 いやね? 自分だってちゃんとした恋愛とかしたかったよ?

 でも、なんで男だらけの大浴場に腰だけタオルで隠して乱入しても、誰も疑問に思わないような外見になってしまったの。

 いいなあ恋愛、したいなあ恋愛。


「そういやルシード知ってるか、団長とライアン・サンルーズ、出来ちまったらしい」

「は? ライアンってアレだろ、去年入った新人騎士の?」

「そうそう、お前に負けず劣らずの女みてえな顔した奴」

「……は? え、なんで団長が?」


 ライアンって女性騎士じゃなくて、普通の少年だったはずなんだが、なんで一番マトモだと思ってた団長とくっ付いてんの?


「新人虐め辺りから世話焼いてたからなぁ、あんなに女みてえな顔してたら男でも良いって奴も居たし、そーゆー事なんだろ」


 いやそういうBでLみたいなイベントこそ自分に起きるべきだったんじゃないの普通。待って待って待って。


「え、俺は?」

「何が」

「俺には居ねーの? 男でもいいとか言ってる奴」

「居る訳ねーだろ、だってルシードだぞ」

「はっはっは、そりゃそーか」

「だろ〜?」


 ………………いや、何がよ。

 いやいやいや、待て待て待て。

 こういうストーリーの主人公なら必ず団長や副団長、または同室の友達などと恋愛なりなんなりゴタゴタが発生するのがセオリーだろ。


 だがしかし、そんなものは一切無い。

 BでLな、なんかそういうのすらスルーである。


 自分はどんな人間からも恋愛対象外らしい。


 見た目はただの細マッチョ美青年なのに。


 性格だって特に問題なく、人当たりも良く、仲が良い友達だって多い。

 前世が陰キャだったと仮定したとしても、現在の私は陽キャと言って差し支えない程度に明るい。

 ウザ過ぎず、鬱陶し過ぎず、煩さ過ぎず、絶妙に良い人を心掛けていた。


 にも関わらずどうして恋愛イベントが自分以外で巻き起こされてんのだろうか。


 なんなんだよくそおおおおお!! 女の子ここにも居ますけどおおお!?


「何でワシ、恋人でけへんねやろ」

「待って、なんて?」

「悪い、噛んだ、なんで俺恋人出来ないんだろ、って言いたかった」

「あーびっくりした、全然何言ってるか分からんかった」

「すまん」


 謝罪はしたものの、そんなもんはどうでもよかった。

 原因があるなら知っておきたい、出来れば教えてくださいお願いします。


「うーん、ルシードはなー、なんだろ、不可侵なんだよな」

「は?」


「誰も触っちゃダメな気がする」

「は?」


「美術館の芸術品と一緒」

「は?」


「この騎士団の旗印みたいな?」

「は?」


 全然意味が分からんが、どうやら自分はこの騎士団のマスコット的存在らしい。

 一応性別は女なんだけど、どう頑張っても細マッチョ美青年で、更にマスコットらしいです。わけがわからないよ。


 いや納得出来るかああああ!!


「まぁ、元気出せ」

「出ねえよ!!」


 なんなんだよ!! マジでなんなんだよ!!


「はぁーあぁ……、恋愛してぇー……」

「すりゃいいじゃん、ちょっと遠い街で適当な子に声を掛けて人脈広げて、良い感じの子が居たら口説けば一発だろ」

「やだ」

「えぇー……」


 ワシ、ノーマルやねん。

 何が悲しくて同性に手を出さねばならんのよ。やだ。

 どうせなら影のあるイケオジとかと恋愛したい。俺の事めっちゃ大事にしてくれる年上の人とかがいい。


「運命の恋がしたい」

「えぇえー……」


「なんで引いてんだよ、真っ当な感覚だろ!」

「いや、だってお前……ルシードだし」


 は?


「どういう意味だよサム、その頭皮から毛根という毛根が存在しねぇようにすんぞコラ」

「やだよ! 何する気だよ!」

「引きちぎる」


 こう、頭頂部を掴んで引っ張ったらいいよねきっと。


「お前の馬鹿力でそんなんされたら頭皮ごと取れるだろ!! 嫌すぎるわ!! そんな死に方したくない!!」

「死なねぇよ頭皮むしられたくらいで」

「死ぬわ!! 出血と衝撃で心臓止まるわ!!」


 ギャーギャーと喚くサムの肩に手を置いて、フッと笑う。


「大丈夫……君は騎士だ、きっとそんなにヤワじゃない……多分……」

「自信なくしてんじゃねぇか!! おい!! どこ見てんだこっち見ろ!!」


 ちなみにサムは女子から見ると、どう考えても無いのでスルーです。

 だってコイツにデリカシーとか空気を読むとか気を使うとかねぇもん、無いわー。

 あと、顔面が残念なのでやっぱり無理です。お疲れ様でした。




 そんなやりとりはあったが、結局自分は騎士なので、恋愛フラグなんぞ一切無いまま時は過ぎた。

 あのサムにすら恋愛フラグが立ってたけど、さすがのサムというか、相手の気持ちなんぞ全然察せなくてあっという間にフラれていた。ざまぁ。


 だがしかし、だからといって焦らない訳がなく。なんと言うか、自分の中の恋したい乙女がぴえんぴえんと泣いていた。

 正直、なんでこんなに恋愛したいのかよく分からん。前世では義父に色々されて殺されたんだから男性不信に陥ってトラウマになっててもおかしくないのに。

 もしかすると、寂しいのかもしれないと最近は思うようになった。

 なにせずっと偽って過ごしているのだから、理解者なんて居ねーし、自分以外の転生者だって見たこともない。


 誰かと共に生きられたら、きっと寂しくは無いんだろう。そこまで考えて、つい嗤った。

 なんだそれ、依存する未来しか見えねーじゃん。


「はーぁあ、やめたやめた」


 そんな重い女を好きになるやつ居ねーよ。アカンわこれ。アウトだわ。

 恋愛とか向いてないよどう考えても。

 そのまま騎士として生きて、どっかで野垂れ死にするのがお似合いだ、そんな女。


 ぼんやりと街を見回りつつ、そんなことを考えた。


 ふと、見覚えのない容姿の男が視界に入った。

 大きな体躯を無理矢理丸めて、喫茶店の入口に設置されたメニューの看板を食い入るように見つめている大男。


 この街に住む人間は大体把握している。なにせそんなに大きくない小さな街だ。

 にも関わらず、見たことのない男だった。


 格好も怪しい。どう見ても年季の入った和服と雪駄だ。

 とはいえ、その服がこの世界に絶対に無いとも言いきれない。


 旅行者、にしては薄汚れている。しかし、浮浪者、にしては小綺麗過ぎる。冒険者とかか?

 とりあえず、不審者であることは確かだ。


「あー、おっさんおっさん。なにしてんすかそこで。営業妨害になるっすよ」

「…………」


 声を掛けたらこっちを見たけど、無反応はちょっと悲しいな?

 つーか、なんでそんなこっちガン見してるんかねこのおっさん。


「おなごがなにゆえ、おのこの格好をしているのだ?」

「はぇ?」


 んんん? 今なんつった?


「俺が、女に見えると?」

「おぬしはどう見てもおなごだろう」


 随分古臭い喋り方だな、とか、偉そうだな、とか思うところはあったけどもそれより。


「な……え……それ、マジで言ってる?」

「うむ」


 おいおいおい、ここに来てこんな事態になるとは思ってなかったんですけどおおお?



 

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