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【長編】2022年01月07日 スターダスト後編

6・偽りのお母様


 私はあったことすべて教師に知らせて……まあいろいろ尋問されたけれど、なんとか一段落して、家に帰ってきた。


「お母さんーー!ただいま‼」

 大きな声で叫ぶ。

 そうするとお母さんが玄関に現れた。

「歩亜奈、おかえり」

 お母さんは優しく微笑む。

 ありがとう……傷つけても微笑んでくれて。

「今日、大変だったのでしょう?意味不回なことが起きて」

「ほんと、意味不回だったよ!」

「でも、大丈夫よ…」

 お母さんがこっちにおいでと手招きをする。

 なら、行こう。


 抱きしめられた。

「どんなことがあっても私は貴方を守る。だって、母ですもの」

「ありがとう……」

 お母さん、何かいい匂いがする。

 甘い……甘い匂いが。

「だから…歩亜奈……私に身を委ねなさい……」

「はぁい…………」

 甘くていい匂い。

 眠気が襲ってくる。眠いな。

「おかあ、さん」


 ドキリ

「歩亜奈……いつでも、私の味方、だわよね?」

 お母さんが笑みを浮かべる。

 そうだよ。いつでも、いつでも、いつでも、ずっと、ずっと。

 お母さんと…………。


「スターダストっ!」

 

 いきなり支えがなくなり、私はフラッとなる。

 それに変な声がしたような気が……。

「大丈夫?」

 ぐっと肩を持ち上げられた。

 っ!?誰!

「ごめんなさい、今、お母さんを弾き飛ばしたわ」

「お母さんを!?なんてことを!」

 なんで、私のお母さんに手を出すの‼

 どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして‼

 

 許せない‼

「怒りに染まらないで。貴方のお母さんは()()よ。現に今、魔術をかけようとしたのよ…?」

「魔術?偽物!?そんな、そんなことは、ない‼」

 私は叫んだ。

 だってお母さんは私の大切な人。

 その人を傷つけるなんて許さない。

「はあ……私は紫江瑠(しえる)、シエルよ。信じてくれないでしょうけれども…貴方の双子の妹。そして、私は貴方を助けに来たの」

 少女が私の肩を引き寄せる。

「触らないで!私のお母さんを侮辱したくせに‼」

「あら……迷惑だったかしら?歩亜奈……」

 なぜ、私の名前を知っているの!

 歩亜奈というお母さんから授かった名前を!

「なんで知ってんのよ!私の、お母さんから授かった名前を‼」

「貴方の双子の妹よ?会いたかったのに、お姉さん」

 少女が私をお姉さんという。

 言わないで言わないで言わないで。

 

 お姉さんと言われるのも悪くないかも……。

「ねえ、おねがい。気付いて。貴方のお母さんは偽物よ…。私があの母親を祓うわ。いえ、母親()()()を」

「やめて‼お母さんを……殺さないでっ!」

 私が泣き叫ぶのを構わず、少女は立ち上がったお母さんを睨む。

「お母さん‼」

「歩亜奈……すぐ終わらせるわ、待っててね」

 お母さんが微笑む。

 おねがい、死なないでね。……祈るよ。


☆★꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°★☆



「この、もどき。私のお姉さんを悪魔が育てていたなんて‼」

 シエルはほあなのお母さん面をしていた悪魔を睨んだ。

「出たわね……双子の妹?ああ、いたんだっけ、歩亜奈を助けに来たの?」

「……」

 シエルは答えない。ただ、隙がないか、見ているだけだ。

「歩亜奈は私の者よ。愛しい愛しい歩亜奈は」

「いつかは、その悪魔の力で食べようとしていたくせに」

「いいじゃない。肉をさらすことだって愛しい現れなのよ」

「……気持ち悪い」

 そっと小声でリイトを呼び出す。

「あら。精霊使いぃぃ?面白いわね、悪魔の私にピッタリ」

「やっと認めらのね、もどき悪魔‼」


 シエルは手で宙に星を描く。

「スターダスト!」

 次の瞬間、星の物体が悪魔をめがけていった。

 しかし。

「片割れ程度の力じゃ私を祓えないわ」

 余裕そうに悪魔は攻撃を躱した。

「それは承知の上。リイト、バックアップよろしく!」

「大丈夫!」

 白猫リイトが走り出す。


 シエルとほあなの母の姿をした悪魔の戦いが始まった。





7・悪魔の襲撃



☆★꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°★☆


 お母さん…死なないでね。

 そう私は願うしかない。大切な大切なお母さんだから。

 

 たった一人の肉親だから。


「あんたを祓う‼」


 少女が叫ぶ。

 たしか、シエルとか言ってたかな。

 私のお母さんを偽物とか侮辱し、自分は双子の妹だと意味不明なことを言ったヤツ。


 頭おかしいとしか言いようがない。


「スターダスト‼」


 彼女が手で宙に星を書く。

 ……!?それは星の物体をして飛んでいった。

 私と同じ……私もそうやって書くとでるんだよ……。


 同じ…同じ。どうして!?


「貴方、私を祓うつもりなの?馬鹿じゃない」

 お母さんが、鼻で笑う。

 だよね。馬鹿だよね。

 私も賛成するよ、お母さん!この人を退治してほしい!

「……悪魔」

 少女、……シエルが近くにいる白猫を呼び寄せる。

「リイト、補助、よろしく」

「分かった」

 !?声がした。

 男の子供の声が……。

 もしかして、猫から発せられたのか。

 いやいや、そんなはずはない。

 非現実的だから。

 でも、もう非現実的に慣れてきた。

 私の星とかシエルの星とか、猫が喋るとか。

「シエル……だったけ。貴方は人の愛ぐるみに首を突っ込みすぎ」

「何とでも言うがいいわ」

「邪魔をされないように、私が貴方を消す」

 お母さんが手を振り上げる。

「ねえ、歩亜奈は……こんな私でも受け止めてくれる!?」


バシーン!


「……!?」

 お母さんが手を振り下げただけで、近くにあった家具が吹き飛んだ。

 吹き飛ぶ……本当に吹き飛んだのだ。

「何……それ……」

 図工室で攻撃してきた男子が頭に浮かぶ。

 お母さんも。お母さんも。あれと同じなのか…?

「安心して。私はいつでも歩亜奈を受け止めるわ。だから歩亜奈も私を受け止めて。母だと敬って」

「もちろん‼」

 怖かった。お母さんに嫌われるのが。

 こんなお母さんでもいい。だって、自分の唯一の肉親なのだから。

「良かった……なら、私の後ろで隠れて、見ていてくれる?」

 お母さんが手招きをする。

 もちろんだ。

 お母さんの近くにいる。……ずっと‼

「駄目‼」

 シエルの悲鳴が聞こえる。

 そんなにお母さんと近寄らせたくないの?

 でも、私はお母さんだけ愛すから。

「お母さんだけ……愛すよ」

「……ありがとう、愛しの娘」

 お母さんが手を差し伸べる。

 私はその手をとろう。


「……!?」



「お前の肉親はこの悪魔じゃない」


 いきなり、声がしたかと思うとお母さんの手から鮮明な血が流れ出た。

「お母さんーーーっ!」

 悲鳴に近い声を上げる。

「いいかげん、目覚めろ。こいつは母親じゃない」

 黒猫が爪を伸ばしたまま冷たく言葉を吐いた。

「あんたが、私のお母さんを……!?」

「仕方がないだろ。おまえのためだからね」

 黒猫が金色の瞳で見つめてくる。

 こいつのせいで!お母さんが!


 ユルセナイ ユルセナイ ユルセナイ


「この猫っ!」

「無理だよ……だって俺は精霊だから」

 黒猫はため息をつき、私の蹴りをさっと避ける。

「お母さん、大丈夫!?」

 お母さんの方を見る。

「大丈夫」

 お母さんが手を宙にかざす。

 そうするとみるみるうちに傷が治っていた。

「……嘘、なんで傷が!」

 いくらお母さんでも、化け物すぎる。

 でも、お母さんが無事なら……それでいい。

「そうよ、歩亜奈。私は化け物よ。そこのシエルが言う通り、私は」

 お母さんがフッと笑う。


「悪魔よ」







8・真実




「私は悪魔よ」


 どういうこと??悪魔って……

 おとぎ話の世界の、非現実的なことが……。


 でも、お母さんははっきり言った。


 それなら、本当のことなのだろう。


 でも、悪魔って悪いヤツラ……?お母さんは悪い人に見えないのに!?

 なら、優しい悪魔ってことかな。


「騙されないで!」


 シエルが叫ぶ。


「あんたは関係ない‼」

 私はお母さんを見た。

「でも、いつまでも私は貴方の母。信じてくれるでしょ?」

「やめなさい、歩亜奈!あなたが、吸収されるわよ!?」

 しかし、私はお母さんにかけよった。

「信じるに決まっているじゃん」

 お母さんしか愛さない、信じない。

 お母さんは微笑んだ。

「そうよね、愛しの娘なんですもの」

 私の手をお母さんがそっと握る。

 握り返す。

「では……私に捧げて」

 ??

 手が光りだした。

「いけない‼食う気よ!」

 誰かの悲鳴が聞こえる。

 でも、無視。

 お母さんに全てを委ねるから。


 何も感じなくなった。


 するのは甘い匂い。心地の良い匂い。

 それだけ……。


☆★꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°★☆


 白い白い世界。

(お母さん……)

 愛すのはお母さんだけ。

 信じるのはお母さんだけ。

 お母さんだけ。

 ずっと一緒にいる。

 ずっとずっと。

(お母さん…)

 ずうっと……。


☆★꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°★☆


「ヤバい、侵食されかけてる」

 リイトが焦った声を出した。

「……そうね」

 シエルの声音からも焦りが伺われた。

「しかも、母愛が激しすぎるわ。マインドコントロールされている」

「俺の忠告も無視したし」

 クーガが猫の姿でため息をつく。

「でも、私じゃできない。人の夢に入れるのは精霊だけだから」

 シエルがクーガとリイトを見た。

「俺達の出番か」

「僕達の出番だ」

「そうね、あなたたちの出番よ。でも、リイトは私のパートナーだから、クーガに頼むわ」

「いいね、あいつを覚ますことぐらい簡単だし」

 サッとクーガがほあなのところまでジャンプする。


「無理」

 母親がほあなを抱き寄せた。

 意識を失っているほあなは支えがなくガクリとなっている。

「っつ!クーガ!横!」

 シエルの指摘でクーガは横を振り向いた。


バシーン


 間一髪、衝撃波からクーガは体を躱す。

「歩亜奈を助けに来たんじゃないの?避けるだけじゃ何もできないよ?」

 母親がシエルたちをせせ笑った。

「あいつがいたら人化になれるのに。……そのために、取り返す!」

 クーガは爪を伸ばし、母親に近寄る。

「近寄ってもいいけど、歩亜奈に傷がつくよ?」

「うるさい!」

 クーガの爪が母親の喉に迫った……しかし。

「あはは、無理だよ」

 母親の首から衝撃波が放たれた。

「く!」

「私の首をただであげるわけないでしょ」

 次はシエルが手を振り上げる。

「スターダスト」

 呪文と共に星の形の魔法陣が現れる。

「祓ってあげる……悪魔」

「魔法陣はきかないよ?」

 対峙するシエルと母親。

「…消えなさい、スターダスト」

 魔法陣が母親に迫る……が。

「!?」


 母親は毅然と立っていた。

「私は魔法陣に抗体があるの」

「まさか……」

 リイトがある悪魔の名前を思い出す。

「サラ・モン・ブッシュ・リフト…唯一魔法陣で生き延びられた悪魔」

 普通、悪魔は魔法陣に閉じ込められると祓われ、消え去る。

 つまり、”死ぬ”のだ。

 力が強いと、跳ね除けることができるが……今のは、受けた。

 それでも、消えなかった。


「そうよ、私はサラよ。魔法陣に閉じ込められて痛い目にあったことがあるの。でも、我慢したら、10年後に出られたから、それで抗体ついたってこと」

 シエルが驚きの形相をする。

「そんな悪魔がなんで、歩亜奈を育てていたのよ?」


「知りたい?」


 母親──否、サラが妖しく微笑む。

「星の精霊術を吸収したいから、歩亜奈を育ててあげたのよ。小さい頃に食べちゃうと美味しくないじゃない?それに、ここまでまつと、ほら、貴方も来るでしょ?貴方と歩亜奈、二人でやっと1だから」

 シエルとほあなは双子だ、生き別れの──。

 ほあなは自覚していないが、シエルと合わさって初めて巨大な力を出せるのだ。

 二人で一つ。

 覚醒しきると、二人でなくても力は出せるのだが……。

「っつ……なんで歩亜奈を見つけられた!」

「貴方たちの親御さんも馬鹿よね。子供を産んですぐに亡くなるのだから。孤児となっているところを、私が買ったのよ?感謝しなさいよ」

 サラが手を振り上げ、衝撃波を放つ。

 シエルが避けると、サラはほあなの額に手をかざした。

「まずいわ、食べられる……!」

 悲鳴に似た声を上げるシエル。

「しょうがないな。俺が夢に意識を飛ばすか?」

 クーガが爪を出しながら、つぶやく。

「やってくれる?」

 リイトが心配そうにクーガを見た。


「やるしかないだろ?」


「っ!」

 次の瞬間、クーガはほあなの夢に意識を飛ばした。

 クーガの体が崩れ落ち、瞳が閉じられる。

「クーガのためにも、早く決着をつけなければ」

 シエルが焦りの表情をする。

「そうだね。夢に意識を飛ばすと昏睡状態になる……あの悪魔が夢に邪魔をしたら、クーガまで取り込まれる可能性があるからね」

 リイトも焦っているようだ。

 夢に意識を飛ばすと、昏睡状態になるのだ。

 そのため、消費が多い。その状態で狙われたら反撃が難しいだろう。


「大丈夫。できるよ、僕とシエルなら。行こう」

「……そうね」

 シエルが手をかざす。

「スターダスト‼」

 星が、サラに飛んでいく。

「無理よ、貴方じゃ、私に勝てない」

「分かっているわ!でも、引き下がれないのっ‼」

 シエルがサラに接近する。

 サラは衝撃波を放つが、難なく避けられた。


 悪魔と精霊使いの攻防が続く。






9・夢の中で


☆★꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°★☆


 お母さんだけだよ……。


 そんな感情が私の中を駆け巡る。

 他の人なんか眼中にないから。


 あなただけ。


 あったのは白い白い空間。

 甘く心地いい、心を揺さぶられる匂いが漂う。

 ある想いだけの世界。

 他には何もない。

 あったとしても、除外する。


「俺のことも除外するの?」


 ??なんか声が聞こえるな。


 でも、邪魔だから。除外〜!


「できるの?」


 更に声が響く。


「できるよ」


 私はそう答えた。


「なら、やってみて」


 またも声が響いた。

 うるさいな……除外って念じれば消えるはずなのに。

 消えろ、消えろ、消えろ。

 除外、除外、除外、除外、除外ー!


 どうして……?


「できないよね」


 声が響いた。


 消えてほしいのに。

 いつもは消えていた。簡単に。

 念じるだけで消えていたのに、なぜ!?


「できないよね。だって、ほあなの記憶に俺が刻まれてるから……覚えてないけど、分かっているんだよ、心のなかでは」

「何の話?気持ち悪いこと言ってんじゃないっ!」

「じゃあ、自分の書いた星から物が出るのは何だと思ってるの?母親を傷つけたから追求しなかった”力”。知りたくないの?」


 ……あの星の物体は何だろう。

 私はあれでお母さんを傷つけた。

 ただ、星を書いただけなのに。

 りりに迫られてときも書いて人を傷つけた。

 そして、自分が攻撃された。


 あの男子が来なかったら死んでいたかもしれないという恐怖。

 そして、あのせいで人を傷つけてしまうという恐ろしさ。


 それから開放されたい。

 知ったら開放されるのではないか?


「そうだよ。知ったらその力をコントロールできるよ……教えよっか?」


 声が響く。

 開放されたい。知りたい。知りたい。

 もうお母さんのことなんて考えていなかった。


「教えて」


 声にすがる。

 そこしか、私の辛さを解き放てる人がいないのだから。


「……いいよ」


 声がする。

 振り向くと、同じ年頃の男子が立っていた。

 知っている人ではない。じゃあ、誰?

「俺は精霊のクーガ。普段は猫の姿なんだけど……本来はこれだから。あーもう、一から説明しなきゃいけないね」

 クーガが面倒くさそうに説明し始める。


「悪魔は知ってる?」

 悪魔は、よくファンタジーに出てくるな。

 悪いヤツ……私にはそれしか知識がない。

 そういえば、お母さんのことをシエルとか言うヤツが悪魔って言ってたけど。

 シエル、絶対許さない。

 私のお母さんを侮辱して……!

「ともかく、悪魔は人を食べる。でも、人側からしたら、悪魔に食べられるのは嫌でしょ?それで、対抗したのが精霊使いと他、悪魔に対抗できる力を持った者たち」

 精霊使い以外の悪魔に対抗できる人って誰だろう。

「よく聞け」


 声だけが響く。

 顔を見えない相手の声だけが、真剣さを訴えてくる。


「お前の母は悪魔だ。そしておまえは精霊使い……。おまえの実の母ではない、あの悪魔は」


「……?」


 訳がわからない。

 悪魔なんて言う概念は分かった。

 けれど、私が精霊使いだということと……。


「お母さんを侮辱しないで‼」

「……気付いてないの?」

「お母さんを‼」

「はーぁ。マインドコントロールかかってるね……おまえがここにいるのもあの悪魔の仕業だぞ?お前を食べようとしているから」

「殺す‼」


 私は叫んでいた。


 お母さんを侮辱しないで、しないで、しないで、しないで……!

 それと、今まで過ごしてきた思い出が偽りだとしたら、私は。

 何のために生きてきたのだろうか。


「……ならためしに、手で星を宙に描け」

「??」


 ああ、あの傷つけた意味のわからない力。

 私は手をかざす。


 星を描くと、一瞬で書いた星が光り始めた。


「……っ!?何これ……?」


 光が星を型どる魔法陣になる。


「それがおまえの力だ」

「……力」

「精霊使いの特権の力……分かってくれた?」


 声の問いになんとなく頷く。

 力が精霊使いなら、まだ納得するけれど……。


「まずはさ、真実より、ここから出たほうがいいと思うから……力を貸せ」

「……!?」


 次の瞬間、矢が降り注いできた。


「ほらね」


 しかし、矢は爪らしき何かで相殺される。

 今のは誰の……。


「俺だけど?」


 声がした。

 振り向いたら──同じぐらいの背の男子がいた。






10・脱出



 同じ背だ。


 しかも異性である男子。


「お前……黒猫見ただろ?あれが精霊の姿で、主の力を借りると俺は人間になるんだよ‼」


 少し怒り気味に言う。

 ちょっと顔が赤いですけれど……?


「俺の主はお前だから、お前から力を借りた」

「はい!?」

「お前が覚醒して、やっと力を出せる。今、お前だけじゃ戦闘不足だと思うから、俺が相手するから!」

「……まあ、なんとなくいいかな」


 私は、あの猫が人間だなんて……と思うと可愛く見えてきてしまう。


「名前は?」

「……クーガ」

「分かった。そう呼ぶね」

「主に呼ばれるぐらい別にいいけど……俺にもほあなって呼ばせてくれ」

「いいよ?そのぐらいお気がれなく」

「いいね‼リイトみたいに変なやつじゃなくて!じゃあ、脱出しようかー!」


 クーガが叫んだ瞬間、矢が飛んできた。

 え!?


「愚かなやつ」


 クーガが手の爪から刃を出し、弾く。

 猫人間的みたいな……。


「ん?お前変なこと……」

「考えてないって!」


 こうして、私とクーガがこの変なことから脱出することになった。


☆★꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°★☆


 その頃、まだシエルはサラと戦っていた。

 繰り返される攻防。


 決着は──ほあな次第。

 それが分かっているから両者睨み合うしかないのだ。


「……え」


 途端に、サラが声を上げた。


「夢の結界を壊しはじめてる。ヤバい、早く食わないと」

「させないっ‼」


 ほあなをより抱きしめようとするサラにシエルは一気に近づいた。


「私の姉に、!手を出すなぁぁぁぁぁ!!!!!」


 次の瞬間、シエルは「スターダスト‼」と叫ぶ!


「そんなの無駄」

 一瞬でシエルの作った魔法陣の膜が破壊された。

「……!?」

 ヤバいと誰もが固唾を呑んだが──。

























「六の術」

 一瞬でサラの吹き飛ばされた。

「……!?数字術?何……今の……!」

 サラを弾き飛ばした物が浮かび上がる。

 ──それは矢だった。


 細く、鋭く尖った矢。

 そして唱えられた術名。


「数字術……‼」

 悔し紛れにサラがうめき声をあげる。

「今のうちに!スターダストッ!」

 一瞬のすきを利用して、シエルが星の矢を放つ。

「……っつ‼」

 サラは飛び退いたが。

「やっと出れた〜!」

 膠着していた黒猫に意識が戻り、むくりと起き上がった。

「な、夢の脱出……」

 続いて、ほあなも目覚める。

「あ……うん……お母さん!?」

「目覚めてしまったのか……!」

 サラはほあなを抱き寄せる。

 しかし、一瞬で払い除け、拘束から脱出された。

「クーガ。お母さんって悪魔なの……?」

 震える声で言うほあな。

 当たり前だ、身近な人を悪魔だと思うなんて恐ろしいだろう。

 けれど、サラを突き飛ばした。

 ほあなのそれなりの勘だろう。

「悪魔……?何のこと?それより、帰りましょう?」

 あくまでもしらばっくれるサラ。

「あ母さん……ほ、本当のことを‼」

「私の愛しい歩亜奈……帰りましょう」

「騙されるな‼」

「悪魔よっ!」

「僕を信じろっ!」

 クーガ、リイト、シエルの三人が同時に叫ぶ。

「どうしたら……」

「……じゃあ、帰りましょう?」

 差し出される母親の手。

 ほあなは迷ってしまう。

 うん!とうなずき飛びつくこともできず。

 嫌だ!と払いのけることもできず。

「……ねえ」

 母親が、ニヤリと笑う。


「私が悪魔だったらどうする気?」


「……!」


 ほあなは黙る。

「私が悪魔でも払いのけるのかしら?本当の肉親を」

「……騙されないで。あいつは悪魔……貴方を食おうとしたやつ」

 シエルがサラを睨みつける。

「言っただろ?夢の中で説明しただろ?」

 言い聞かせるクーガ。

「シエルが本当の肉親だよ。そんなこと言っても信じないかもしれないけどさ、信じてほしいんだ」

 懇願するリイト。

「……私」

 迷い込んだほあなはつぶやく。

「どうすればいいですか……?」

 その声は心細くて。


 初めて迷った瞬間だった。





11・始末


「どうすればいいですか……?」


 オドオドとしたほあなの言葉。


「騙されないで‼」

「信じて!」

「シエルが本当の……」

01月19日 まで書いていましたね。ここで、どう締めくくっていいわからなくなって放り投げたあとに次の連載書いてます。謎ですねwww

色々癖キャラと言い、自身のやりたかったことが目に見えてわかると思うのですがそれでも最初といい結構あれですねえ。

というかもうすでに三年と一ヶ月経ってますからね(笑)


次回、ツッコミをさせていただきますので、お楽しみに〜

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