【長編】2022年01月05日 スターダスト前篇
旧執筆中整理のためにこちらを更新しようかと思います。
こちらの作品は、旧執筆中小説の中では一番古参の作品となりますね。
よろしくお願いします。
1・不運な事故
あの日から星を描くのが怖くなった。
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私はお母さんしかいないシングルマザー。
お父さんはどこに行ったのか知らない。
お母さんは話してくれないから。
なぜか…そう聞いたら、お母さんにこう言われた。
「あのね、それは不幸よ…もう、思い出したくもない。二度と言わないで」
はじめてキツめの声を出して、私はびっくりした。
それから、もう言わなくなった。聞かなくなった。
でも、お母さんは優しかったから、いつもお母さんと話すのが楽しみだった。
「ね、今日は七夕だよ。歩亜奈は何を願いたいの?」
お母さんがそう、聞いてきたときは、
「…私達の家が平和でありますように、かな」
といつも答える。
「いいわね、もっとスケールが広い世界平和とか」
「でかすぎるよ」
「でかくても神様は叶えてくれるよ?」
ふふっと二人で笑い合う。
お母さん、お父さんはいないけれど、幸せ。
この時間がずっと続けばいい。
ずっと、ずっと──。
それが……。
私が7歳くらいの頃。
七夕の短冊に絵とお願い事を書いていた。
「平和、いいじゃない」
お母さんがクスクスと笑い、私が書いている短冊を指差した。
「ここ、星の絵を間違えてるよ」
トントンと、星の絵のところを指差す。
一筆書き用の星の書き方が分からなくて、テキトーに書いたところだ。
間違っていると言われて仕方ない。
「星の書き方分からなくて…」
「あらま。なら、教えてあげるわ」
お母さんは紙にこう書くのよ、と一筆書きで星を書いてみせた。
「わーすごい。こう?」
私は、短冊にお母さんの真似をして星を描く。
一筆書きで…できた!
「これでいいの?」
「いいわよ…上手い…!?ギャッ‼」
突如にお母さんがのけぞった。
「どうしたの……?」
星の形をした”何か”がお母さんのお腹に突き刺さっていた。
「お母さん‼」
私は叫ぶ。名を呼ぶ。
「大丈夫よ…心配しないで」
お母さんはそう言い、星の形を抜いた。
血が出る。けれども、止血を行い、はあっと息をつく。
「ごめんね、心配させて」
お母さんが優しく言う。
だけど…私は。
”なんてことをしてしまったのだろう”
そう思っていた。
星の形は、私が書いた星から飛び出した物だった。
なぜ…?どういうこと?混乱する中、ただ一つだけ言えることがある。
「私はお母さんを傷つけた」
なぜ、書いたところから星が飛び出したのか?
そんなのはもうどうでもいい。
私の最愛のお母さんを傷つけてしまったのだから。
この星を書いたせいで。
星を書いたせいで。
星の…星の…せいで。
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だから、今は星を書かない。
書きたくない。書くのが怖い。
自分の母を傷つけた星の存在が。
中学一年生になった今も…怖くて星は絶対書かないのだ。
2・魔力
とあるホテルの個室に少女と二匹の猫がいた。
「見つかったの?あの私のお姉さん…」
少女の傍らに白い毛並みの猫が寄り添う。
「まだ見つからない。だが、気配はする。きっとこの町にいるだろう」
猫が喋る。
これは不可思議なことだ。
しかし、実際に猫は喋っていた。
「はあ…私のお姉さん…早くしないと。悪魔に目をつけられてしまうわ」
「だから、一刻も早く探している。けど、見つからない」
「早くしてくれ」
ふと、近くにいた黒猫が文句を言う。
「あいつは俺のバートナーなんだ。あいつが悪魔に殺されたら俺も死ぬ。それだけはやめてほしい」
黒猫も喋れるらしい。
「リイト、引き続きお姉さんの調査をよろしく。そして、クーガ、貴方はリイトの報を待ってから動いてもらうわ」
チッと黒猫が舌打ちする。
どうやら、白猫がリイト、黒猫がクーガのようだ。
「分かった。引き続き、シエルの姉……ほあなを探して見せる」
白猫のリイトがさっと窓から出ていく。
情報を探しにいったようだ。
「お姉さん…歩亜奈……」
少女──シエルは何を思っているのか。
それは、シエルと猫たちしかまだ知らない。
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「ここがあの子の学校?」
シエルは数時間後に、とある学校の前に立っていた。
「そうだ。気配はする」
リイトが答える。
「たしかにな」
「ええ。感じるわ」
クーガとシエルがうなずく。
「でも、特定は難しいわ…生徒数一年だけで100人?冗談じゃないわ」
シエルが顔をしかめる。
「でも、やるしかないんだ、あいつを見つけるには」
クーガが何がなんでも、と意志ある目でシエルを見る。
「ふ…私だってあの子を見つけなければならないの。リイト、クーガ、できる?」
二匹の猫がうなずく。
「なら、任せるわ」
クーガとリイトは走り出した。
学校の裏に向かい、気配を探るようだ。
「…歩亜奈」
またもシエルはその名をつぶやいた。
3・星の暴走
次の時間は「図工」か。
「はい、ほあな〜!図工だから、絵の具セット持っていくよ〜!」
テンション高いりりの声が響く。
はっきり言ってうるさい。
でも、親切な友達なので、文句は内に秘め、絵の具セットを受け取る。
「いいね、ほあなって図工、得意なんでしょ?」
「ある程度はね」
「いいな〜今日は宇宙がテーマだって〜!どうしよう、わたし絵下手だから…」
りりがいいな〜と絵が上手いことを褒めてくる。
絵は確かに好きだけど…今日は宇宙がテーマか。
宇宙も好きなんだけど…宇宙には…星があるからな。
あの時から星は書くのが怖いし。
だって、お母さんを傷つけたから。思い出したくもない。
「ほあな〜?ぼーっとしてるじゃん。どうしたの??」
りりが不思議そうに顔を覗いてくる。
星のことを考えていたらぼーっとしていたようだ。
私はりりと会話を開始する。
「なんでもないよ。何の絵書こうかなって」
「お‼やる気になってんじゃん。地球と星とか銀河書けば?」
星は書かない。
けれど、なぜ?と言われるので押し黙る。
「銀河は書くよ」
「星は?そういえば、星書いてるほあな見たことないな〜」
うっ。なぜ、そこまで私を見てる!?
「なんでそこまで知っているのよ!」
「だって、友達じゃん?」
りりが笑う。
友達。いい響きだ。
「そうだね」
私もりりと笑いあった。
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図工室は絵の具の匂いで溢れている。
私は画用紙に地球の絵を書いた。
後は、背景の黒色と…銀河だけだ。
星は書きたいけれども、書かない。
「星書かないの〜?」
となりからりりの声がした。
「書かない」
即答。
だって……思い出したくない!
「え〜小学生のときも6年間書かなかったじゃん!中学生になっても書かないつもりぃ〜?」
「……書きたくない」
「書いて。書いて。書いて。書いてっ!」
うるさい。
なんでそんなに星にこだわるのっ。
「うるさい!書きたくないって言ってるでしょ‼」
思わず怒鳴ってしまった。
みんなの視線が私に集まる。……ううっ、恥ずかしい。
「うるさいよー、ほあな」
クラスメイトが迷惑そうに言ってきた。
「だって…りりが星を書いてって」
「なら書けばいいじゃん。なんで書かないの?」
クラスの男子がいいよってくる。
うるさい。……でも理由なんて…あんなの誰も信じてくれないから。
「書けるでしょ?書いてみな」
「書けー!書けー!」
「書いてっ」
涙目のりりを含め、クラスメイト男子女子問わず詰め寄ってくる。
……理由を説明するか?
でもそんなこと信じてもらえないし…。
「はい、書けるでしょ?」
近くにいたクラスメイトからペンを渡される。
これで書けということか。
………──。
もう…書くしかないのか。
あの、お母さんを傷つけた変なのが出てきたとしても…。
「わ、分かった」
手がプルプルと震える。
怖い怖い。
もしまた変なのが出てきて、誰かを傷つけるかと思うと怖い。
「書けないの?」
クラスメイトが煽ってくる。
書くしかないのか!
もうどうなってもいい……。
誰かが傷ついたら煽った人の責任になるから!
「何をしているんだ?」
突如にそんな声がした。
「…才雅、面白いと思わない?ほあなが星を書くのを拒むの」
クラスメイトの男子、サイガに友達であろう男子がにやりと笑いかける。
「書かせてみようとしてただけだよ」
「……──」
サイガは黙っている。
なにか言って。……書かせないように。
「集まって煽る必要ないんじゃないの?自分の時間が減るだろ」
「いいんだよ、星が書けないって何かの病気みたいで面白いし」
「…面白いか?」
サイガが眉をひそめる。
このまま、みんなが煽らないでくれれば。
「書けよっ!」
突如に近くにいたクラスメイトにペンを奪われる。
「こうやって書くんだよ!書けるだろ?」
星をかくと、そのクラスメイトは私にペンを持たせた。
「っ……」
「早く!」
急かされる。もう、サイガは勢いに押されて何も言わない。
……味方はいないのか。
書くしかないのか。
もう……。
どうにでもなれ!
ガッ
紙に勢いよく、星を書いた。
「け、やっと書いたぜ」
クラスメイトがつまんねぇな、とつぶやく。
私だって、頑張って書いたんだ!
…でも、何も起きない。
もしかして、あれは気のせいだったのか?
なら、それでいい。もう、星を書いても何も起きないだろう。
「……!?」
そう思った突如。
「なんだ!?」
私が書いた星から”星の形をした何か”が飛び出したのだ。
「……!」
またか。
やはり、お母さんのことは「気のせい」ではなかったのか。
……星は私が書いてはいけないものだったんだ。
「くっ……!いたっっっっい!」
近くにいたクラスメイトの目に突き刺さる。
「うそ!?目に突き刺さった!ほあな、魔女かよーー!」
恐怖で、クラスメイトは教室を走って出ていく。
「魔女!?」
恐怖が恐怖を呼ぶ。
クラスメイトを刺した星……。
それが恐れてクラスメイトは我が先よ、と扉からドッと飛び出していく。
…誰もいなくなった。
最後に出ていったクラスメイトは、扉に鍵を閉めていった。
私を出したくないらしい。
そうだろう。だって、不可思議なことの元凶なのだから……。
あのりりも出ていった。
友達ではないと見捨てたのだろう。
貴方が催促してせいで、こうなったのにね……。
残ったのは私と目に突き刺さって痛みに悶ている男子。
「……ごめんなさい」
謝ってもなにも起きない。
傷は治せないけれど。
…謝れずにはいられなかった。
「ああ?」
男子は立ち上がる。
傷は大丈夫なの?それでも、立ち上がっていた。
「おまえ、か…精霊使いはぁぁぁぁ!」
??何のことだろう。
恐怖で頭がおかしくなったのかもしれない。
「何のこと?」
しかし、男子は、目に突き刺さった星を抜き取る。
痛いはずなのに。痛くて激痛がはしるはずなのに。
男子は手を前に突き出した。
「やっと見つけたぜ!精霊使いさんよぉ!」
…………?
何のことか分からないけれど。
男子からは危険な匂いがしていた。
4・向けられる殺意
嫌な予感がした。
向けられる片手。
男子は怒り奮闘だ。
怒っている理由は分かる。
分かるけれども、なぜ、立っているのか。
それが分からない。
だって痛いはず。
私のせいだが…あんなの目に突き刺さったら痛いでしょ?
なのに…どうして暴言を吐き、立ち上がれるの??
「やっと見つけたぜ!精霊使いさんよぉ!」
男子は叫ぶ。
精霊使いとは。何のことか?頭おかしいの??
それはともかく………!
バシッ
男子が手を振るう。
それだけで、近くにあった机が両断された。
どういうこと?
あれだけで…机が壊れる…いや、切れるなんて。
触ってもいないのに。
振り下げただけで。
「抵抗、しないのかぁ?精霊使いさん!」
「精霊使いって何!」
叫ぶ、何が起こっているのか分からないから。
「知らないのか。ってことは、まだ目覚めていないということか」
男子はまた手を振り上げる。
……ヤバい!
バシンッ!
私が避けたところの床にひびが入る。
避けないとヤバいところだった。危ない…
って!
バカッ
再び、避けたところに亀裂が入る。
「何をしているの?しかも、その力…何?」
「知らないのか?悪魔の力だよ」
バシンー!
「くっ……」
今のは相当危なかった。
避けられただけでも幸運としか言いようがない。
「避けやがった…」
男子が残念そうにまた手を振り上げる。
避けなければ。
それより、悪魔の力ってなんだろ?
そんな非現実なこと、ありえない。
…や、私の書いた星のことだって、この男子の力だって非現実!
なら、悪魔の力ということも本当かもしれない。
ガンッ!
スパッと床に切れ目が入った。
怖い。怖い。でも、避けなければ、殺される。
まず、教室からでなければ。
でも、鍵をかけられたんだよね。
…どうする?
でも、でなければいけない。
死ぬから。この巨人的な力に殺される。
なら、扉壊せばいい!
ガンッ
扉の近くにいって思いっきり体当たり。
ガンッ
でも、無理だろう。
私の力は所詮弱い。女の子だし。
こんぐらいで扉が壊れるわけないか。
「んん……ううんんんん!」
力込めて押してみるが、動かない。
おねがい、開け!
もうちょっと…もうちょっと…。
すると、扉が少し外れた。
そのまま押せば壊れるだろう。よし、いい感じ。
もっと推して……っ!?
「捕まえたぜ!」
悪魔男子が目の前にいた。
しまった、ここまで来ていたのか。
扉を壊すのに時間がかかったみたいだ。
「くっ……しまった……!」
「遅いんだよ、今更。精霊使いにも覚醒しきっていないくせに」
「っつ!だから、精霊使いって何よーーーーー!」
めいいっぱい叫ぶ。
もはや、叫ぶしかないのではないか?もうそれしかすることはない。
それより、精霊使いって何なのか?
よく見る小説で書かれているやつ?非現実的この上ないのに。
「これで、終わりだ、未覚醒な精霊使いさんよ!」
男子が手を振り上げる。
あの刃で両断されるのだろうか?
抵抗は??できないの?
できない……。何をすればいい。
あんなかっこよくなんてできないのだから!
──ただの凡人だから
ザンッ
「くっ!?」
男子の悲鳴が響いた。
「五六の術。シュートアロー」
誰かの声が聞こえ、前にいた男子が崩れ落ちる。
「っつ、お前……せいれ、い、づか、い」
「消えろ」
次の瞬間、男子が苦しみに悶える。
そのまま、痛すぎたのか、失神した。
「……え?」
攻撃こなかったよね。何者かが男子を殺害……否、失神させた。
どういうこと??
もうそれしか言えないし、頭混乱して……。
「このまま職員室へ行けよ」
失神させた者が影のように忍び寄ってきた。
「クラスメイトとは関わるな。特にりり…。あいつ、嫌な予感がする。まあともかく、職員室でここでのこと本当のことを言え。あの男子のこともいい」
そのかわり……と彼は言う。
「俺の正体はバラすなよ。俺が来たことも、全部」
聞いたことある声だな……。
でも、誰かまでは分からない。しかも、暗いから顔も見れないし。
誰なんだろう。気になる。
けれど、彼は扉を開けて、ダーッと走り去っていてしまった。
5・騒動
「へえ」
シエルはリイトからの情報に感心した。
「そこまで、調べてきたのね」
「この町の中学校1年生2組……ということは分かったが、今日、気になる騒動があった」
リイトは、クーガを見る。
「はいはい。この新聞だろ?」
クーガが今日刷られたばかりの新聞を口にくわえて持ってくる。
「そうそう、見開きにそこの中学校の騒動事件が載っている」
リイトの説明を聞き流し、シエルは新聞を受け取った。
「弐大小学校……歩亜奈の中学校じゃないの」
その新聞には弐大小学校の「とある事件」が書かれていた。
『一年生図工の時間に男子生徒一名失神。理由は非現実だが、こう承認を得ている。一年生女子生徒が書いた星から何かの物体が飛び出したということが起き、教室を逃げ出した2組の生徒たち。その後に、残された男子生徒と女子生徒が何らかの理由で争い、男子生徒が失神したという情報。また、女子生徒は男子生徒から攻撃を仕掛けられてので回避したため、失神させる攻撃を放ったという。男子生徒は失神しただけで、命に別状はない。この不可解な非現実的なことは真実か?そんな疑問を専門家たちは説こうとしている模様』
その文面を読み、シエルは明るい顔になった。
「これ……2組よね?歩亜奈のいるクラスでしょ?この騒動は……」
「あいつの可能性があるのか?」
クーガが興味津々に尋ねる。
「ええ。充分あるわ。でも、早く見つけないと危ない……悪魔に狙われる」
「いや、もう狙われているからその騒動が起きたというのは?」
横からリイトが口出しをする。
「そんな……」
「確かに、可能性はある」
猫の姿で困惑な顔をするクーガ。
「そのわりには、よく回避できたわね?あの子はまだ覚醒していないはずよ。星から魔法が出たというのは、魔力が漏れているのでしょうけれども」
「確かにな…あいつは生まれたときに、まだ覚醒していなかった」
クーガがうんうんと頷く。
「なのに、回避できた……?」
疑問を浮かべるシエルにリイトがこんな思案を出した。
「ほあなを守っているやつがいる……確実に」
それは誰よ?とシエルに聞かれたが、首を振った。
「僕には分かるわけないだろ。精霊使いだろうな、とは思っているけど。精霊学校にも通わず、ほあなのサポートか……妬けるね」
「おまえは、シエルの精霊だろ!?何が妬けるとかふざけたこと言ってんだよっ!俺があいつの精霊なのにっ!」
「怖いね。一応、僕の使いのお姉さんなんだよ?家族愛とか抱いちゃ駄目?」
「駄目だ。あいつは俺の使いだ。家族愛は俺しかない」
「お、ヤキモチ?まだほあなに会ってもいないのにか。熱いね」
「あたりまえだ!」
シャーと威嚇する黒い猫・クーガ。
そして、それを面白そうに見る白猫・リイト。
二匹の間には火花がバチバチとちる。
「さっきからうるさいわね」
「シエル。こいつが……」
「シエル。僕を睨んできて……」
「黙りなさい。せっかく、情報が入ってきたのにやかましいわ」
次の瞬間。
「スターダスト!」
シエルの叫びと共に星が飛び出し、クーガとリイトの間に入る。
「……面白いことをしてくれるね、主は」
クスッとリイトが笑う。
「なんだよ、リイトが悪いのに」
文句を言うクーガ。
「二人共同等よ……。ああ、歩亜奈を今日中に探さなければ」
「大体の目星はつけた。2組の在籍生徒を探し、住所を付きあてておいたから。今日中に行く?」
「ええ、もちろん!」
ガバっと立ち上がるシエル。
ほあなとの再会が待ち遠しいようだ。
「じゃ、僕が案内するよ」
リイトが身軽に外に出る。
「よろしく頼むわ。それと、リイトは私の魔力保存よろしく」
「もちろんだよ」
二匹の猫と少女が優雅に歩き始める。
しかし、忠告しておく。
彼女らは優雅にお茶をしに行くわけでも、ダンスをしに行くわけでもない。
自分の生き別れの姉を連れ出すために。
そんな大事な試練のために行くのだ。
次から戦闘パートなのですが長いため分けさせていただきます。
次の話を投稿したあと、(つまり次の次)でツッコミをさせていただきますね(笑)