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【短編】2022年04月05日 嫉妬のやり場

過去のネタ漁っていたらおもしろい物見つけたのでつい(笑)

今の文章に比べると拙いですので、純粋に読書を楽しむ方にとっては時間の無駄かもしれません……。

ただ、ただちょっと暇でよし、どんなだ?って思う人はどうぞ〜。

「嫉妬して恥ずかしくないのか!」

「す、すいません……!」

 父親の怒号に私は頭を上げられない。

「お前が!カノンよりできないからって嫉妬するんじゃないっ!」

 ……本当にごめんなさい。

 私はあの子に嫉妬したわ。

 どんだけ頑張ってもできなかった技をあの子は楽々と乗り越えた。

 私は努力してた。

 人一倍人一倍…寝る間も惜しんで。

 なのにあの子は才能という翼で軽々と私より高く高く飛翔した。

 輝いた。


 私は頑張ったんだよ。

 そんなあの子に嫉妬しないよう。

 あの子に妬む気持ち隠して。

 練習に励んだんだよ。


 だけど。

 努力が裏切られるのってあるのね。

 あの子が輝いてる中、私は練習のしすぎです怪我した。

 もう二度と練習ができないほどに。


 だから言ってしまった。


「カノン、なんでこんなに頑張った私より……!上手いのっ!」

 あの子には私にない才能がある。

 なのに私にはない。

 ひどいよ、神様。私だって……!

 言ってしまったあとは濁流のように感情が押し寄せてきた。

 止められない止まらない。

 あの子への憎しみすべて。

 秘めてたものまで流れて押しつぶされていく。


「ごめんなさい」

 父親に気づかれたその憎しみの妬みの感情が。

 だから私は…怒られている。


 自分でも笑うわ。

 あの子をこの手で蹴落とそうとしたことだってある。

 でも父親に阻止された。


 あの子が妬ましい。

 だからせめてあの子を……!


 いけないことをしようとしてるのに気づいた父は叱ったあとに私を反省部屋──牢屋に入れた。

 バタンと閉められる音。

 寂しさと冷たさ。

 私はあの子に嫉妬しなければ。

 こうならなかったのだろうか。


 あの子が悪いのに!

 あの子が才能を持ってるから。

 私より目立つから!

 

 あの子が……悪いのに……。


ポタリ


 泣いていたのね。

 嫉妬に狂った私は。


 もう妬もうと反省しようと私はここで去るわ。

 あの父が私を成敗する。


 ねえ嫉妬するのも疲れちゃった。


 だからって何すればいいの?


 無意味にぼーっとする。

 もう何もなかった、何も残っていない。


 私には何もない。


 妬む感情も練習する力も何もない。

 ましてやり直す力もない。


 どうしてこうなっちゃたのだろうね。

 なんでだろうね。


 カノンが悪いんじゃない。



 私が悪いのよ。


 気づくのが遅かったわね。

 ああ何も思わないわ。


 何もすることのない。

 私は転がっている羽ペンをとった。


 何に使おうか。

 何もないのに……。


 ペンを紙に走らせてみる。

 ただ適当に書いた線。

「くっ……!」

 何か書きたい感情が。

「わ、私には何もないわよ……」

 ペンは書くためのもの。

 だけど何を書けばいいのか。

 けど…ここで呆然としているのも疲れたわ。


 何を書けばいいのか。

 日記でも書こうか。


 私の感情ぶちまけてあげるわ。


 あの子が妬ましいけど妬んでもやりきれない行き場のない刃を。



















 謝る彼女。

 私に嫉妬を向けた彼女。

 しまいには私を痛めようとしたんですって。


 許すわけもないじゃない。

「ご、ごめんなさい……」

「まず、お前は!」

 怒鳴るお父様と口ごもるお姉さま。 

 貴方の心は私への憎しみでいっぱいそうね。

 ならまた同じことをしそう。

 あんな怖い思い願い下げだわ。だから。

「お父様」

「なんだ、カノン」

 私は頭を下げているお姉さまを見つめた。

 顔は見えない。けれど、想像はできる。

「お姉さま、まだ嫉妬してるんでしょ?」

「……──」

「ねえ、お父様。嫉妬の反省してないみたい」

 馬鹿なやつとお父様が呟いた。

「嫉妬は汚らわしきものだ」

 お父様は続ける。

「反省部屋……につれていってくれ」

 冷たい言葉。お父様……実の娘に……。

 だけど理解はできる。

 嫉妬したならと言って人を傷つけてはいけない。

 そもそも嫉妬するなら努力しなさいよ。

 努力もしてないものがのうのうと。


 馬鹿な者。


 お姉さま……。



 やがて彼女は追放されることになった。

 お姉さまのせいで噂話が悪評だからだ。


「さようなら……」

 お姉さま。

 私は嫌いでも好きでもなかったわ……。

 だけどあのときに嫌いになったの。

 もうお姉さまに未練はない。

「今までありがとう」

 お姉さまはそうつぶやいた。

 そして扉を開けた。


「幸せに……カノン」


 そうつぶやくと踏み出し……扉が閉められた。


 呆気なかった。

 そしてなぜだか切なかった。

 最後に名前が呼ばれたからかもしれない。

 あんなお姉さまに呼ばれただけなのに。


 今思えばお姉さまは私のことを嫉妬に狂っていたときのように睨んでこなかった。

 というか追放も素直に受け止めていた。

 嫉妬に狂っていたなら……そんなことはないはずなのに。

 なんでだろう。

 

 私は窓を見やる。

 そこにはお姉さまの下手くそな鼻歌が彷徨っていた。










 鼻歌を歌う。

 さようなら。

 そして幸せに。

 私はそれを込めて歌うわ。


 別に妬みがなくなったわけじゃないの。

 今でもあるけど。


 私は嫉妬のやり場を見つけたの。

 だから嫉妬しても……そこにぶつけて。

 人を傷つけないことにしたわ。


 今更戻せないから、これから、ね。







この作品へツッコミ、次回させていただきます(笑)

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― 新着の感想 ―
[良い点] おおお!これが過去のドロドロした嫉妬の感情から生まれたネタ小説ですか? 私、家族がいないから、もし娘がいてこういう問題にぶつかったらどうすれば・・・と、考えちゃいますねえ。擬似親体験をあり…
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