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バッドエンドのその先へ【総合5000pv突破感謝】  作者: 蕩けた蜂蜜ウサギ
第0.5章 追憶の先にあるもの
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第一話 休息


 燦々と輝く陽の光に照りつける太陽。潮風にさざなみの音。一歩足を踏み出せば砂へと沈み込み足跡を残す。砂浜特有の独特の感触が足元から伝わって来る。



「海だー!!」


「もうユリちゃん、はしゃぎ過ぎないようにね?」


「分かってるってばー!」



 シオン隊は海水浴へとやって来ていた。普段の装いとは違い、完全に遊ぶことしか考えていないものだ。


 ユリは一目散に海へと走り出した。ユリはキャミタイプのタンキニを着ており、年相応でとても可愛らしい。

 カルミアはワンピースタイプの水着に身につけており、普段以上に柔らかな印象を受ける。


 カルミアがやんわりと注意しているが、当の本人はまるで聞いていない。

 ユリは視界いっぱいに広がる大海原に興奮しているのか、リンドウの手を引きながら海の方へ走っていく。



(・・・砂浜、歩き辛い。)



 リンドウはトランクス型のサーフパンツにパーカーを羽織っている。

 手を引っ張られながらリンドウも転ばないように着いていく。ビーチサンダルに砂が入り込む。普段は感じることのない砂の感触を奇妙に思っていた。

 

 その様子を静かに眺めているルビアは、モノキニタイプのビキニにフリルがあしらわれている水着を着ておりビーチパラソルの下で座っている。



「火起こしはしておくから自由に楽しんでいいんだよ。」


「はぁ・・・、手伝うわよ・・・。」


「ふふっ、ありがとうエリカ。」



 バンドゥビキニに麦わら帽子を被ったシオンと、オフショルビキニに身を包んだエリカは何やら準備をしているようだ。

 砂浜へと設置されているのはバーベキューセットであり、シオンたちは昼食の用意をしていた。


 一人で黙々と準備を続ける姿を見かねたのかエリカが手伝いに近づいた。普段馴れ合いを嫌っている彼女にしては珍しい行動だろう。

 各々が水着に身を包んでおり、普段の殺伐とした雰囲気はまるで感じられない。見るからにワルキューレの仕事とは無関係そうだ。



「よく島を貸切紛いの事が出来たわね。」


「慰労をかねて本部が用意してくれたんだよ。」


「へえ、・・・まあ、天威なら幾らでも伝手はあるわよね。」


「何でも、『地図にも記されていない島』だそうで、一体何処でそういった情報を仕入れているんだろうね。」


「それこそ国家規模の繋がりでもあるでしょうし、何処からでも引っ張ってこられるわよ。」



 二人は手を動かしながら会話を続けている。そう、今回こうして海へと来ているのは本部の計らいである。何でも最近発見されたらしい名無しの島だそうだ。技術の発達した時代にまだ見つかっていない島などあるのかと思えるが、無人島事情など大して気に留めるものでもないだろう。

 ワルキューレは万年人手不足とはいえ、こうして休養の場を設けてくれた事になる。



「少しでも皆んなの心が休まるといいのだけれど。」


「あっちを見てみなさいよ、・・・はぁ。十分でしょうね。」


「ふふっ、それなら嬉しく思うよ。」



 エリカの呆れた視線は明らかにユリたちに向けられている。視界の端では海辺で水遊びをしているユリたちの姿が見える。

 彼女たちの様子を見れば一目瞭然だろう。ユリに釣られて楽しそうな表情を見せているカルミアに、普段通りのリンドウ。いや普段よりもリラックスは出来ているだろうか。


 緩み過ぎな気もしなくもないが、そんな姿を視界に収めてシオンは安心したように肩の力を抜いた。



「そうだ、日焼け止めを塗ってあげるのを忘れていたよ。エリカ、此処を少し任せていてもいいだろうか。」


「別にいいわよ。」


「ありがとうエリカ、それじゃあ暫くお願いするね。」



 ぶっきらぼうにエリカはそう返答した。視線はグリルから外さず団扇で風を送って火の調整をしている。

 シオンは遊んでいるリンドウたちを連れ戻しに足を進めた。




◆ ◆ ◆




 無事にシオンは新たに生まれたミッションを完了させ、再びエリカの元へと戻り食材の調理を続けていた。



「・・・しっかり焼けているね。好きなだけ食べるんだよ。」


「わーい!!」


「ユリちゃん、野菜も食べないといけないよ。」


「分かってるもん!」



 ジュウジュウと食材の焼ける音と共にいい匂いが辺りに漂っている。シオンがテキパキと小皿に乗せていく。

 真っ先にユリが受け取るが、そのまま食べるのかと思いきやリンドウの元へと駆け寄って行った。リンドウはその行動の意図が理解出来ずにユリの事を見ている。



「ほらリンドウ、あーん!」


「・・・・・・。」


 

 時折り見せる姉としての矜持なのか、ユリは今のように突拍子の無い行動をする。既に慣れたものだ。

 突き出された箸の先には焼けたばかりのお肉があり丁度食べ頃だ。ユリは期待の眼差しでリンドウを見ている。



「あーん!!」



 中々食べようとしないリンドウに強く迫るユリ。リンドウは悩んだ末に一歩を踏み出した。




◆ ◆ ◆




 一つ、感想を述べるならお肉は美味しかったとだけリンドウは答えるだろう。

 何故かほくほく顔のユリが野菜と格闘しているが何処となく満足気だ。何があったかなど聞かなくとも分かるだろう。



「シオン隊長、準備変わりますよ。隊長も休んで下さい。」


「それなら甘えさせて貰おうか。」


「はい、任せて下さい!」



 食材を焼いていったりと忙しくしているシオンに交代するようカルミアが言った。シオンは好意に甘えて場所を譲った。カルミアが多めに野菜を焼き始めている。ユリに食べさせる為だろうか。

 シオンは料理の乗った小皿を手にリンドウの横へと腰を下ろした。



「リンドウ、楽しんでいる?」


「・・・うん。」


「それなら良かった。」



 リンドウは頷いた。災害との命の削りあいと比べれば、こうして遊んでいるだけの時間の方が楽しんでいると言えるだろう。

 波の音が天然の歌声のように耳に届く。カルミアたちの話し声が時折り聞こえる。



「・・・傷は、もう治った?」


「ええ、もう平気だよ。」



 確かにシオンの身体に傷跡は見られない。天威の医療技術はとても高い事を窺わせる。だが、その身体に蓄積された疲労が直ぐに抜け切る事は無いだろう。

 リンドウも治療を受けたので傷は完治しているが、身体に異変が起きていた。診断結果には異常無しとあるのに、不思議な事に銀髪の占有量が増えていた。とはいえリンドウにはどうすることも出来ないので放置するしかないのだが。


 何はともあれシオンが快方に向かっているのであれば、他のことなど気にするほどのことでもない。



(・・・この時間がシオンにとって休息になるといいな。)



 陽の位置はまだ高くにある。彼らの楽しい時間が続く事だろう。

 食事でお腹を満たしたら、海で泳ぐのか、砂浜でビーチバレーをするのかもしれない。



 何にせよ災害とはかけ離れた時間になる事だろう。






第0.5章は序章に比べて短い話になる予定です。

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