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バッドエンドのその先へ【総合5000pv突破感謝】  作者: ハニラビ
序章 Re:start
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第二十話 歩みを止めないという事⑦


 シオンによって災害が断ち切られた。災害の身体がバラバラと崩れ落ち、拘束からリンドウが解放される。



「リンドウ。」



 今度こそシオンはリンドウを掴んだ。シオンは力無く項垂れるリンドウを優しく抱き留めた。

 周囲には眷属の残骸が散らばっている。戦闘の痕跡も木々がへし折られていたり、地面が抉り取られていたりと様々だ。元の形を留めている方が少ない有様だ。

 


「よく、頑張ったね。」


「シオン・・・。」


「大丈夫、もう少しの辛抱だよ。」



 お互いに傷だらけであり、生きているのも不思議な状態だった。少なくともリンドウは眷属に連れ去られた際に自身の生存を諦めていた。それが、こうしてもう一度シオンと触れ合えている事に安堵感を覚えた。

 シオンが助けに戻って来てしまったことへの絶望感はまだ心に残っている。


 まだ現実感の湧かない中でリンドウは助かったのだと安堵した。歩くのも億劫な身体の不調を頭の隅に追いやる。



(・・・一緒に帰れる?みんな、無事に・・・。)



 シオンはリンドウを抱きしめる力をより強めた。シオンの表情は隠れていて見えない。何処か普段とは違う様子にリンドウは少しだけ違和感を覚えた。

 シオンはそのままの体勢で話す。優しい口調でリンドウへと告げた。



「リンドウ、よく聞いて。・・・今から振り返らずに、真っ直ぐに走って。障壁の端まで。」


「シ・・・オン?」


「大丈夫、・・・必ず助けるよ。」



 そうしてシオンの口から告げられた言葉に理解が追いつかない。リンドウは思わずシオンの名を呼んだ。しかし、返ってきたのは無言の抱擁だった。

 まるでこれが最期になるとでも言うように。シオンはリンドウをより強く抱きしめた。



 まだ何も終わってはいない、過去の悪意は止まらない。




◆ ◆ ◆




 シオンがリンドウを救い出した時より時間を少しだけ遡る。

 エリカたちは使徒の眷属によって生み出された障壁によって打開する策も見つけられず足止めされていた。


 エーテルの操作に習熟しているアルメリアは変化に対して敏感だ。眷属によって広範囲に展開された障壁を察知し、イレギュラーを認識したアルメリアは多少の無茶を押し通し合流を優先した。



「ユリ!いいから、一度止まりなさいよ!」


「いや!絶対に守るって約束したんだから・・・!」



 障壁の破壊を目指してユリが攻撃を続けている。衝突音が辺りに響くが障壁が壊れる様子はまるで見えない。

 エリカが止めるように言うがユリが武器を下ろす気配はまるで無い。ユリはこれ以上ないくらいに焦りを見せている。


 そんな混乱の中で冷静に辺りを観察している者がいた。この混沌とした空間の中でも彼女は最善を尽くそうとしている。



「・・・カルミアさん、貴女たちはどうやって障壁の外へ出て来たのですか?」


「その、・・・リベリオンがわたしたちを逃したんです。方法までは分からないですけど・・・、多分、戦ってどうにかしたんだと・・・。」


「リベリオンがですか・・・、なるほど。」



 カルミアから大まかな状況を聞き分析する。アルメリアの頭に一つの可能性が過ぎった。

 ただ、カルミアの言葉が事実であるなら、この障壁を今此処にいる戦力だけで突破する方法は限り無くゼロに近いとも思い至った。



(中に取り残されたシオンさんたちを助ける方法、・・・僅かな可能性にかけるしかないでしょうか。)



 それでもアルメリアは此処で諦めるような事はしない。後悔は全てが終わってからするものだから。

 アルメリアがユリの元へと近づく。エリカはカルミアが近寄って来たことを認識して、そちらへと訝し気な視線を向ける。



「ユリさん、ですね?その障壁を壊す方法は、・・・あります。ただ、確実なものではありません。成功するかも怪しい博打のようなーー


「出来ない理由なんていらないから!どうすればいいの!!」


「あんたね・・・。」



 ユリは手を止めてアルメリアの発言を遮るように食い気味に答えた。言葉は強めだが、その表情は不安に満ちていた。それでも真っ直ぐにアルメリアを見ている。強く自身の持つ武器を握りしめていた。

 エリカはユリの自分本位な態度を諌めようとしたが、アルメリアは手で制した。



「構いませんよ。・・・方法はシンプルです、ユリさんはそのまま障壁に向かって攻撃を加え続けてください。」


「分かった。」



 ユリは頷くと直ぐに攻撃を再開した。それがどんな意味を持つのか確認せず、藁にもすがる思いなのだろう。再び衝撃音が辺りに響く。

 エリカが怪訝そうな表情を浮かべながらアルメリアの方を見た。視線は直ぐに逸らしてしまったが。



「どういう訳?」


「外部からの攻撃のみで突破するのは難しいです。使徒の眷属が生み出した障壁であれば、資料に記載されていた通りなら尚更。」


「なら・・・ユリちゃんがしている事は。」



 カルミアは不安そうにユリに視線を向ける。であるなら、この行為に意味は無いのではないかと。アルメリアは小さく首を横に振った。


 カルミアの言葉からアルメリアはヒントを受け取っていた。シオンたち一行が力を合わせて障壁を破壊したのでなければ、細工は眷属に対して行われたものなのだろう。

 破壊が不可能に近い障壁であっても、壊れないと言う訳ではないと推測した。



「いいえ、意味はあります。まず、リベリオンが何らかの手段で障壁を一時的にとはいえ解除したのは事実です。」


「・・・不滅ではないって言いたいのね。」


「はい。そこから、現状考えられる最も高い可能性は障壁を維持出来なくなる程に眷属本体にダメージを与える事です。」



 障壁が永遠に残り続けることはないのだろう。

 しかしだ、だからといって何かが変わる訳ではない。



「それじゃあ、シオン隊長は。」


「ええ、それと同じことをしなくては障壁を突破する事は不可能でしょう。」


「だったらどうにかして壊すしかないじゃない。」



 あの災害を倒せはしなくともそれに近しいことをしなくてはならない。リベリオンはそれをどうにかしてクリアしたようだが、一筋縄ではなかっただろう。

 生身で成し遂げないといけないと考えると、その代償は重いものとなるだろう。


 シオンというワルキューレの戦力を疑っているのではない。



(『リンドウは必ず助ける。』、・・・あの隊長なら絶対にそうするでしょうね。)



 エリカは確信していた。それをさせてはいけないのだ、それではシオンが助からないと。



「その方法も考えましたが、現実的ではありません。障壁を壊すことは恐らく可能です、ですがその後にわたしは加勢出来なくなります。」



 どれだけ頑丈であっても障壁はエーテルで作られているに過ぎない。最上位ワルキューレのアルメリアがここにはいるのだ。

 本来では傷をつけることも難しい障壁を瞬間的に、尚且つ局所的に凌駕し穴を開けることが出来る筈だ。



 ただし、それは文字通りの全力を出せばの話しである。



 アルメリアはここに来るまでに数多の災害の相手をしてきた。加えて異変を察知して無理を押し通した。

 万全とはいえない状況でも障壁を破壊する所までは辿り着ける。しかし、そこ止まりだ。



(障壁を壊すだけでは足りない、・・・歯痒いものですね。)



 エリカたちだけではあの災害を相手にすることは出来ない。

 眷属本体の所までアルメリアが余力を残して辿り着く必要がある。ここでアルメリアが力を使えば眷属を倒せなくなる。



「それじゃあ出来ることは無いって言うの?」



 エリカは状況の深刻さを改めて理解した。アルメリアは彼女の焦りを感じとっていた。

 あちらの詳しい状況はエリカたちには分からない。捕まってしまったリンドウを助け出して、障壁の端まで駆け抜ける。それをシオンはやらなくてはならないと言う事だ。それは酷く細い蜘蛛の糸の様な道筋だろう。

 

 エリカの予想を裏切るようにアルメリアは作戦を口にした。



「ですから、ユリさんに攻撃をし続けて貰っています。」


「それは・・・?」



 カルミアにはその行為がどう繋がるのか分からなかった。現状、内部からしか破壊出来ないのであれば意味の無い行為にしか見えないのだから。

 ただ、アルメリアには一つの道筋が見えているようであった。



「シオンさんが上手く障壁を解除したとしても、そこから逃げ出す事は不可能に近いでしょう。助け出すのであればその瞬間を待つだけでは足りません。」


「なら。」


「はい、こちらから打って出るしかありません。」


「それが出来ないから此処で立ち止まっているんじゃないの。」


「重要なのは、障壁を維持するリソースが減れば障壁は脆くなる可能性があると言う事。」



 アルメリアは諭す様にそう告げた。障壁を維持しているのが眷属であるなら、その身体がダメージを受ければ障壁に回す余裕も自ずと減る事だろう。

 それが出来たからこそリベリオンは彼女たちを逃す事に成功した筈なのだから。



「つまり、シオンさんたちがどれだけ足掻けるか。そして、そこから一瞬の突破口を手繰り寄せられるかが鍵です。」



 障壁の中の様子は見えない。いつ、どの瞬間に障壁が緩むのかも分からない。

 だからアルメリアはこの方法を博打だと表したのだ。当たるかも分からない状況で、当たる事を信じて攻撃を続ける。ユリの負担は大きく疲労も凄まじいものだ。



「その瞬間が訪れたら、次の作戦を始めます。」


「・・・分かったわ。」


「わたしでは頼りないかも知れませんが、どうか安心して下さい。最上位ワルキューレとして全力を尽くすことを約束します。」


「有難うございますアルメリアさん!」



 ユリが障壁への攻撃を続ける中で、アルメリアはその内容を告げた。

 各々の反応を示したがその作戦自体に否は無いようだった。



「ですが、やはり妨害はありますか。構えて下さい、音を聞きつけて災害がやって来ています。」



 彼女たちを囲む様に災害が続々とやって来る。長居し過ぎたのだ。



「ちっ、しつこいわね!」


「・・・・・・・・・。」


「必ずみんなで一緒に帰ろうね。」



 戦闘体勢を取る。まだ、戦いは終わっていない。

 ただ、戦闘が始まる前、アルメリアだけがユリの攻撃によって障壁に刻まれた小さな罅に気がついた。



(まさか、・・・彼女も?・・・いえ、今は後回しにしましょう。)



 各々が最良の未来を掴む為に歩き出す。それはこの場にいないものも同様だ。






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