第22話 大当たり
「私のかわいいニーナ。私の最強の付き人にして、そして魔王候補のニーナ」
「ま、魔王候補……ですか、ダリア様……」
「そうよ。あなたは魔王候補。それもあってあなたは私に付けられた。魔王はどうやったら覚醒するかわかる?」
「…………」
ニーナは答えられない。
ダリアの変化についていけていない。
「強いストレスを与えることが魔王覚醒のトリガーなの。でもニーナ、役立たずのあなたはもういらないわ」
「そんな! ダリア様!」
「我らが第一の目的は達成されたもの。あなたはもう用済みよ」
「おい、止めろ!」
ニーナは黒色のモヤにとらわれはじめている。
「あら、ザウス。負け犬の遠吠えね。愉快だわ、あの最強の魔王が私の手によって封印されたんだから」
「ああ、確かに大した封印だ。俺でもこれを解くのは少しばかり時間がかかりそうだ」
「なっ、その封印が解けるわけがないでしょ!」
「その通りだ! 幾重もの暗号をかけた結界を万と重ね合わせた特別製だ! 神でもこの封印は解けん!」
「神程度か、俺の評価は? まあ5分くらいはかかるだろうがな……」
「強がりを…………ダリア! 早くしろ!」
「ゔゔ……」
そこでダリアは頭痛がして頭をかかえる。
「ダリア?」
「……だ、大丈夫よ。まだいたのニーナ。どっかにいきなさい」
「嫌です! ダリア様、側においてください! 私を捨てないでください!! 見捨てないでください!!」
ニーナの周りの黒色のモヤが濃くなっていく。
その目も白目がなくなり、黒目だけになろうとしている。
「なら私の役に立ちなさい。あなたが今やるべきことはなにかしら?」
「邪神からダリア様をお守りすることです」
「じゃあ、それをよろしくお願いね。全力で、命をかけて」
「はい!」
ニーナはハルバードを掲げる。そして――
『理不尽達磨落とし!』
またあのよくわからないダルマ落としが出現した。
「よしよしよし! いいぞ、それだ、その能力だ! いけ、ニーナ!!」
ギレッドが煽っている。なんだ?
「いまだかつてない濃密な魔力だぁ!」
「これは当たりがでるぞぉ!」
「さっさと俺たちを落とせぇ!」
ダルマの一つひとつが好き勝手喋っている。
ニーナがハルバードでダルマを飛ばす。
ダルマの目が白目になって黒目になってを繰り返す。
「おめでとう大当たりだぁー! お前には100倍の膂力が与えられる!! 地獄へようこそ!!!」
瞬間。
ニーナが漆黒のオーラに覆われる。
オーラは巨大な炎のように揺らめく。
ニーナの白目部分はなくなり、完全に黒目だけになる。
「さあニーナ魔王の力を存分に振るえ!!」
「はぁあああああああ!!!」
ニーナは邪神に向かってハルバードを振るう。
ハルバードを横に薙ぎ払う。
すると、ニーナが横に薙ぎ払った箇所が一瞬――
時空が裂けた。
邪神は上下に真っ二つにされる。
「俺たちでも傷を負わせられてないのに……」
邪神と死闘を繰り広げていた、ダインたちも目を見開いて驚愕する。
ダルマはいつの間にか消えている。
ニーナは今度はハルバードを振り上げる。
邪神よりも宙高くを飛び上がり――――ハンマー部分を振り下ろした。
ドスーーーーーンッ!!!
轟音と同時に巨大地震がきたかのように魔王城が縦に揺れる。
邪神、いや邪神だったものは真っ赤な肉片へと変貌していた。




