第13話 魔王敗北
『第2章 忘却の聖女編』のはじまりです。
「これで魔王様はもう終わり! やはり私のモグモグは最強!」
「モグモグは関係ないだろ! しかし、この俺がここまで追い込まれるとは……」
正に絶体絶命のピンチだった。
まさかイルマにここまで追い込まれるとは。
だが俺は最強の男。こんな所で敗れるわけにはいかない!
「これでどうだぁ!」
渾身の一撃を放つ。
「むむむ!」
「魔王様甘いの! もらったの!」
今度はエリザから声が上がる。
「何? お前まで俺に逆らうのか!」
「下剋上なの! 魔王様の天下も今日までなの!」
「くっ! いつの間にそんなに強く!」
俺は他に勝ち筋がないか考える。
……ダメだ。力も何もかもエリザたちには及ばない、
「俺の……負けだ」
「やったー、イルマの勝ちー!」
「勝利なの! 歴史的勝利なの!」
イルマとエリザは手を取って喜び合う。
「魔王様、紅茶をどうぞ」
「ああ、ありがとう、ラミア」
俺は紅茶を口にする。
その間もイルマとエリザは、魔王城の連中に俺に勝ったと吹聴している。
一体どこでどう間違えたというのだろう。
運がなかったといえばそれまでだが。
「ねーねー聞いてソフィー! 私とイルマ、魔王様に人生ゲームで勝利したの!」
「えっ!? エリザあのゲーム強くないです……」
「それは……私はソフィーよりは弱いけど、魔王様はそれより更に弱いの! 狙いがみえみえなの!」
「イルマも魔王様に勝った!」
「い、イルマにも魔王様負けたですか……どれだけ弱いですか……」
ぐっ……今にみているがいい。
この俺の知力をもって、こんなゲーム容易く攻略してくれよう。
「ん?」
そこで俺は遠方に妙な気配を察知する。
強大な魔力の起こり。これは……。
「魔王様どうかされましたか?」
ラミアが俺の様子がおかしいことに気づいて質問する。
「ま、魔王様、ゲームで勝ってちょっと調子にのっただけなの。怒らないで欲しいの」
「ゔゔ、ごめんなさい。魔王様……」
「いや、怒ってないから」
そこはすぐさま否定する。
やはりこの魔力は魔王級だ。
俺の知らないところで魔王が誕生した?
「天空魔王城、厳戒体制へ移れ! 強大な魔力を検知した! お前たちイルマを頼んだぞ」
「承知しました!」
「頼まれたの!」
「ですです!」
俺は走って城の外が展望できる場所へ移動する。
天空魔王城は雲海の中、進んでいる。
魔力を感知した方向を確認する。
凄まじい魔力が発散される気配を感じる。
今の所、目視で確認できるものは何もない。
その時だった。
黒色の光の柱が突如、魔力を感知した方向に発生する。
その光の柱が――爆ぜた。
目を開けていられないような眩い光と、爆風と衝撃とが魔王城に一瞬で飛来する。
俺はそれが到達する一瞬前に、魔王城のバリアをより強固なものにする。
おかげで魔王城に被害は一切ない。
だが光までは防げず、余りの明るさに俺は目をつぶる。
時間にして数秒だろうか。
閉じたまぶたから明るさが感じられなくなった為、俺は目を開ける。
すると世界はその様相を一変していた。
真っ青の空に、浮かんでいた雲は暗雲に変わっている。
明るかった世界は暗く変わってしまってる。
「ま、魔王様、これは一体!?」
魔王軍参謀のセバスチャンが駆けつけてきた。
「わからん。おそらく何者かが復活したようだ。ここまでの急激な世界の変質、魔王誕生によるものではないだろう。情報収集に力を入れろ。黒い光の柱が起こった方向へ探索部隊を送れ。魔王城の厳戒態勢は維持。警戒は怠るな」
「御意にて」
セバスチャンは一礼の後、指示を飛ばす為、俺から離れる。
魔王城は不気味な暗雲の雲海の中を、変わらず突き進んでいた。




