第十七話 私にとっては勇者でしたよ
あの後、少女は"鬼謀"からマントを借りて古城を後にした。血と肉片にまみれてはいたが、無いよりはマシであった。
街へ向かう馬車に揺られながら、3人の勇者は今日の依頼を振り返る。
「やっぱり私は勇者じゃなかったみたいです」
「おや、それはどうして?」
「結局、勇者らしいことは何も出来ませんでしたから」
「俺はそんなこと無ぇと思うけどな」
"暴勇"の言葉に"鬼謀"も頷く。
「貴女は自分で思ってる以上に立派に勇者でしたよ」
これがその証拠です。と、捕虜にされてた少女たちを見ながら"鬼謀"は微笑んだ。
「それでも……私はまだ、勇者じゃありません」
そう、まだ自分は勇者ではない。仮にそうだとしても、駆け出したばかりで半人前の落第勇者であった。
だがしかし、こんな勇者らしくない未熟な自分でも救えた命がここにある。それだけは胸を張って誇ってもいいかもしれない。
暖かいものを胸に感じ、少女は静かに微笑んだ。
「俺は勇者だったろう?」
「いえ、貴方は立派に狂戦士でしたよ、"暴勇"の」
「なんだとぉ……」
"暴勇"の主張に食い気味に返す"鬼謀"。それを見てクスリと笑う少女。
「私にとっては勇者でしたよ?」
「ほら見ろ、これで2対1だ」
少女の助け船に"暴勇"は嬉々として乗っかる。これには"鬼謀"も渋々認めざるを得まい。
「ふむ……まぁそういうことにしておきましょうか」
とはいえ実際"暴勇"は、常に最前線に立って仲間を鼓舞し、どんな巨大な敵にも勇敢に立ち向かい、最後まで諦めなかった。駆け出しの少女にとって"暴勇"は間違いなく勇者そのものだったのだ。
「"鬼謀"さんも勇者でしたよ」
「おやおや、嬉しい評価ですねぇ」
「そうかぁ? 発想はとてもじゃねぇが勇者のそれじゃねぇぞ?」
"暴勇"はそう反論するが、"鬼謀"もまた窮地にあれど最大限に知恵を絞って仲間を導き、そして最後まで諦めなかった。それは少女が一番よく知っていることだ。
「それで、も……私に……っては……勇者……すぅ……すぅ……」
「おやおや……」
「へへ、眠っちまいやがった」
寝息を立てる少女が寒くないようマントを整えてやった後、"暴勇"はいつになく真面目な面持ちで"鬼謀"に向き合った。
「──でだ、"鬼謀"の。お前、嬢ちゃんに隠してることあるよな?」




