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第十三話 上位種

「オォラァッ!!」


 "暴勇"が屍体爆弾を投げ入れる。お返しとばかりに矢が飛来するも、素早く扉を閉めたお陰で被弾することはなかった。

 扉を閉めると同時に、ボボンッという破裂音が響いた。

 たちまち扉の向こうでは阿鼻叫喚が繰り広げられる。投げ込まれた屍体の急激な腐敗による毒ガスが広間を満たしたのだ。


 強烈な腐臭を放つ毒ガスから逃れようと、部屋唯一の扉に殺到するゴブリンたち。しかし魔法により施錠された扉はびくともしない。

 大柄なホブゴブリンが雑魚を踏み潰しながら押し退け数匹がかりで扉の破壊に挑むも、それを察知した少女勇者が骨ゴブリン数匹を素材に骨の壁を形成し扉を補強していたため、終ぞ叶うことはなかった。


 ゴブリンどもの悲鳴が少なくなった頃合いを見計らい、"暴勇"が扉を蹴破り吶喊を開始した。"鬼謀"は短弓で援護し、少女勇者もその場で新たな骨ゴブリンを生成し加勢する。

 爆発から難を逃れたゴブリンも居たようだが、部屋を満たす毒ガスで既に息も絶え絶えであり、最早"暴勇"にとって敵ですらないため骨ゴブリンに始末を任せた。

 狙うはこの群れを率いる、屈強な上位種のみ。


「オオオオオォォォォォォッ!!!」


 とてつもない殺気を込めた雄叫びを上げながら吶喊する"暴勇"に、さしもの上位種も気圧され反応が遅れる。

 瞬く間に2体のホブゴブリンを文字通り首にし、次の獲物に駆け出そうとした矢先、"暴勇"に火球が飛来する。


「ぐあっ……!?」

「あれは……シャーマンですか!」


 規模の大きな群れであれば複数の上位種が居てもおかしくはない。攻撃や回復の魔法を操るゴブリンシャーマンなど、その最たる例だ。


「チッ……ウザッてぇ!」


 灼熱の火球をモロに受けながらも意に介すことなく、手斧を投げつけ反撃する"暴勇"。しかし手斧はシャーマンに届くことなく、一際大柄な上位種に弾かれる。


「あ、あれは……!?」

「ゴブリンジェネラルです! 群れの規模から高位の上位種が居ると踏んで対策を打ちましたが……よもや『無傷』とは……!」


 "鬼謀"は憎々しげにジェネラルの足元に目を向ける。飛来した骨の破片を受けたであろうゴブリンの屍体や、毒と魔力欠乏で虫の息のシャーマンがそこにあった。


「っ、酷い……仲間を盾にするなんて……それに、自分の回復を優先させた……!?」

「ええ、実に合理的です。腹立たしいくらいに、ですがね」

「へっ、漸く斬り甲斐のある相手が出てきやがったか!」


 そう言うや否や"暴勇"は手斧から背中の大剣に得物を持ち換え一息に引き抜いた。

 ──勇者の持ち物とは思えない、禍々しい黒い刀身が露になった。


「いや、ちょ、待ってください! 何ですかその禍々しい剣は!?」

「こいつか? 昔、何とかって悪魔とタイマン張った時の戦利品よぉ! ゥオラァァァッ!!」


 言い終わる刹那、ジェネラルに向かって斬りかかる。ヒトとして大柄な部類の"暴勇"を、更に体格で上回るジェネラルに対して一歩も退かず渡り合っている。

 そんな拮抗状態を嫌ってか、シャーマンが火球で横槍を入れる。


「ンなもん何度も食らうかよ! ……ッラァ!」


 何と、飛来した火球を刀身で弾き返したではないか!

 跳ね返されることなど微塵も想定していなかったシャーマンは火球を避けられず、今度はシャーマン自身が火達磨になり即死!


「へっ、ざまぁみやがれ! ……ゴハッ!?」


 シャーマンに気を取られた一瞬の隙を突き、ジェネラルの金棒が"暴勇"を打ち据え壁に叩き付けた。


「"暴勇"さん!?」


 壁の瓦礫に埋もれた"暴勇"はピクリとも動かない。一刻も早く救出しなくては……!


「ッ、いけません!」


 "暴勇"の元に駆け出そうとする少女を捕まえ、間一髪で横飛びに転がる"鬼謀"。先程まで2人の居た場所に瓦礫が飛来する。ジェネラルが投擲したものだ。


 "暴勇"の次は、少女たちの番だった。

Tips.

 ゴブリンの生態 #3

 先にも述べた通り、ゴブリンの多くは力も知恵も子供並であるが、中にはその枠組みから外れて育つ個体が存在する。

 その多くは外敵からの襲撃を逃げ延び知恵を付けた個体や、十分な栄養を得たことで大柄に育った個体、上位種である親の血を色濃く受け継いだ個体など様々である。


 これらの上位種は群れの頭目や参謀、あるいは幹部的なポジションにあり、また上位種の子種からは上位種が産まれ易く、存在そのものが脅威と言っても過言ではない。

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