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禍つ黒鉄の機式魔女  作者: 黒肯倫理教団
2章

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59話

「んぅ……クロガネ様ぁ……っ」


 屍姫は目をとろけさせて従順に受け入れる。

 強引にキスされている状況を楽しんでいるらしい。


 絡み付く舌を通じて――屍姫の魔力を奪う。

 体が熱を帯びていくのを感じる。


 単なる回復手段ではない。

 この行為にクロガネ自身も夢中になってしまう。

 熱を感じるほどの濃い魔力が体内に流れ込み――そして、心地よい酩酊を得られる。


 消耗による苦痛を伴うかもしれない。

 様子を窺うが、やはり前回と同様に恍惚と見悶えるのみだった。


「んっ……ぷはっ」


 息苦しそうに、しかし嬉しそうに屍姫が笑みを見せる。

 そして乱れた上着のボタンを外していき――。


「クロガネ様ぁ……もっと私を見てください」


 はだけさせた服の中から、写し取った取引リストが現れる。

 視線を受けて屍姫は恥ずかしそうに身を捩らせた。


 腹部を撫でるように、リストに指を滑らせていく。

 その中には確かに"結因"の文字があり、移送先はマクガレーノ商会本部となっていた。


「はぁっ……い、いかがでしょうか?」


 その問いに、クロガネは無言で首輪を掴み――制御装置を『破壊』する。

 そのままロックも解除され、簡単に外すことが出来た。


「あっ……」


 屍姫はMEDから解放され、彼女は自由の身となった。

 大罪級の力を存分に発揮出来るだろう。


「――"ヴィンセント"、標的ターゲットから気付かれるよう派手に逃げなさい」


 ただ命じるだけ。

 この部屋と受付カウンターは随分離れているが、声が聞こえずとも指示は届いているらしい。


 何かが爆発するような大きな物音がして、直後にガラスの割れる音が響いた。

 娼館内にアラートが鳴り響く。


「……食い付きました」


 屍姫の報告にクロガネも頷く。

 娼館内を徘徊していた自立型の兵器が、アンデッドを追って駆け出しているのが『探知』で把握できた。


 凄まじい速度で追跡している。

 アンデッド自体も屍姫の魔力によって並外れた身体能力を持っているが、兵器はその比ではない。


 これでは何十秒と持たずに捕まってしまうことだろう。

 複雑な道を逃げているようだが、兵器は迷うことなく最短ルートで追跡している。


 やはり『探知』に似た機能を持っているようだ。

 屍姫の遊びに付き合って正解だったらしい。


「ついてきて」

「はい!」


 先ずは娼館から脱出する。

 そして、真兎と合流してマクガレーノ商会本部を襲撃する。


 一般客は混乱状態で、スタッフに安全な場所まで案内されていく。

 武装した警備員たちは娼館の出入り口を塞ぐ形で警戒していた。

 内部からの犯行だと勘付かれているのかもしれない。


「強行突破しますか?」

「いや――皆殺しにする」


 喋る口がなければ商会本部への報告も遅れるだろう。

 一人でも残せば、それだけ後の襲撃時に面倒を増やすことになってしまう。


「機式――"エーゲリッヒ・ブライ"」


 使い慣れた二丁拳銃を呼び出す。

 見た目こそ他の銃火器と変わらないが、貫通力は防弾チョッキを破るほど。


 階段を駆け降りて、勢いよく警備員の前に姿を見せる。

 数は十人。


「死ねッ――」


 容赦無く弾丸をばらまく。

 乱雑な射撃でも、相手の数が多ければ簡単に当たってしまう。

 三人が咄嗟に遮蔽物に隠れたが、それ以外は胴体を撃ち抜かれ致命傷だ。


 当然ながら『探知』で場所も把握できている。

 即座に距離を詰め、驚愕する警備員に肉迫し――。


「『能力向上』――」


 身体能力を高め、鋭い蹴りを放つ。

 足をめり込ませるどころか、内臓ごと背中に叩き付けるような強烈な一撃となっていた。


「……」


 以前よりも威力が増している。

 これも原初の魔女による恩恵だろうか。


 多くの魂を捧げれば、それだけ殺すための力を得られるのだ。

 基礎的な身体能力も魔法の効力も高まっている。

 強くなるほどに、より凶悪な相手も仕留められるようになるはずだ。


 残りの二人は――と、獲物を定めようとして手を止める。

 一ヵ所に逃げ集まったところを屍姫が仕留めていた。


「ふぅ……スッキリしました」


 晴れやかに笑う。

 散々酷い目に遭わされてきたのだから当然だろう。

 拷問にかける時間がないのが惜しいほどだ。


 武器も無しにこれだけ戦えるのだ。

 少なくとも、足手まといになるようなことはないだろう。


 既に『探知』に敵対者の反応は無い。

 安全が確保されている。


「――目覚めなさい」


 屍姫が命じると、足下で倒れていた二人が起き上がる。

 彼女の魔力を譲り受けてアンデッドと化したらしい。


 外見だけみれば人間と区別が付かない。

 目立つ傷を作らないように、最小限の打撃のみで仕留められている。


 痣程度にしかならない打撃跡だというのに、彼らの心臓は完全に停止していた。

 徒手空拳にしても魔法を付与することが可能なのかもしれない。


「アンデッド二名は、この場に残して時間稼ぎをさせましょう。人払いするだけでも効果はあるはず」


 屍姫は指示を簡単に出してからクロガネのもとに戻る。

 随分と手慣れているようだ。

 CEMケムに目を付けられたことも、捕まる以前にしていた何かに関係しているのかもしれない。


 当然、そこまで詮索するつもりは無い。


 互いの利益のため、共通した目的を持っている。

 それだけ分かっていれば十分だ。

File:大罪級『屍姫』-page2


直接的な戦闘よりもアンデッドを使った総力戦を得意とする。

使役する数に制限は無いが、指示を出すにも魔力を消耗するため、その時々の必要数を揃えるのみに留めている。

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