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禍つ黒鉄の機式魔女  作者: 黒肯倫理教団
7章

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339/339

339話

「……堪らないな、これは」


 カフカが身を捩らせる。

 湧き上がる魔力は戦慄級相当。

 この灼熱のようなエーテルを放つだけで、馬鹿げた規模の破壊を齎すことだろう。


 だが、それだけでは芸がない。

 彼女自身が納得できない。


「模造の神とはいえ、万能感に酔いしれてしまいそうだ」


 満足のいくシナリオが欲しい。

 過程を飛ばして、結果だけを手に入れてしまっては退屈だ。


 人生とはそういうものだ、と。

 カフカは手を翳し上げ、集束させた魔力を天に向けて一気に放出させる。


 チェリモッドが生み出したものこそ、あのラプラスシステムを模した煌学装置。

 莫大な力を秘めたコア部分をカフカは文字通り"喰らった"のだ。


 その結果は、見ての通り。


「誰もが思い知ることになる。トリリアム教会が――私こそが、何よりも優れているのだと」


 自らの威を示すように。

 圧倒的な魔力を見せ付け、カフカは改めて問う。


「さあ、マクガレーノ。貴女には、この光景はどう映って見える?」


 戦慄級の中でも上位に食い込むであろう魔力。

 これほどの力があれば、政府にも魔法省にもそう簡単に干渉されることはない。

 カフカは限りなく自由に近い位置にいる。


 そんな彼女を形容するならば、


「承認欲求を拗らせた贋作でしかないわね」


 まともな評価をするに値しない。

 何故ならば、


「脇役がどれだけ派手に演じたところで、最初からフォーカスされる人物は決まっているのよ」


 我らが首領こそ、この世界を牛耳るに相応しい。

 それ以外は全てが引き立て役でしかない。

 禍つ黒鉄が歩む道を整備する――光栄な役割を与えられているだけ自分たちは恵まれている。


 マクガレーノは決して揺るがない。

 あの時、カラミティに勧誘された時から身を捧ぐ覚悟でいるのだから。


 その様子を見て、カフカは苛立ちを露わにする。


「……そんなものを運命と受け入れるほど、私は利口じゃないんだよ」


 過酷な道程だった。

 本来の彼女は、こうして他を圧倒できるほど高位の魔女ではない。


 精神に干渉する特殊な能力を持っている。

 一方で、それが効かなければ直接的な戦闘能力は大したものではなかった。


 そんな彼女を、等級という括りで評価するならば。


「"愚者"の足掻きで終わるつもりはないんだッ――」


 下から二番目の等級。

 数多の虚構で着飾っただけの低位の魔女。

 ミラにも劣る魔力量――それでも、彼女はここまで成り上がってきた。


「あら、ようやく本気になってくれたみたいね」


 感情の発露を受け止める。

 マクガレーノは、ここでようやくカフカという人物を見定められた。


「けれど、残念ね」


 彼女が心の底から渇望しているものは決して手に入らない。

 どれだけ努力を積み重ねても、どれほどの運を以てしても。


 何故ならば、その席は既に埋まっている。


「アナタはこの物語の主人公じゃない」


 告げると同時に、カフカの身体が急にガクンと揺らぐ。

 複数個所からの出血。

 彼方に潜ませていた狙撃手たちが、クロガネによって錬成された特殊弾によって撃ち抜いたのだ。


 莫大な魔力によって影響を受けたのか、弾道は僅かに逸れて急所は外れている。

 それでも負傷したことには変わりない。

 唯一、狙い通りに膝を撃ち抜いて機動力を奪うことに成功したようだ。


「アタシたちと利害が対立する――そう宣言した時点で、トリリアム教会は蹂躙されるだけの役割に落ちてしまったの」


 際立った才覚の持ち主であるマクガレーノでさえ、クロガネという人物を測りきれない。

 年齢不相応な落ち着きと、底知れない能力。

 統一政府カリギュラを掌握するという途方もない野望でさえ、どうやらクロガネにとっては通り道の一つでしかないらしい。


 その先にある、得体の知れない"何か"を目的として行動している。

 常人では理解の及ばない思考の持ち主だ。


「まだ、会ったことさえないでしょう? ラトデアのように媚び諂っていれば、判断を誤らずに済んだかもしれないわね」


 魔女誑しだから、彼女――と。

 マクガレーノは愉快そうに嗤う。


「……判断を誤ったつもりはないよ。少なくとも、今は」


 カフカは自身の負傷度合いを確認しつつ、再び戦闘態勢に入る。


 魔力量こそ増えているが、さすがに身体強度まで引き上げられているというわけではない。

 特殊弾は十分に脅威足り得る。

 だが、狙われていると分かれば対処は容易だ。


「――『思考凍結』」


 強化された魔力で、効力を極めて広範囲に。

 狙撃可能な場所には重点的に力を注ぎ込んで。

 カフカは魔法によって、狙撃手の思考を完全に停止させる。


「……狙撃手を無力化したようね」

 

 全ての通信がオフラインに変わる。

 脳波を読み取って、簡素な意思疎通を可能とさせる煌学通信装置。

 狙撃の合図だけを目的として用いていたが、向こう側からの反応が完全に消えてしまった。


 恐らくは、同様の魔法を区画内いっぱいに発動したのだろう。

 狙撃手だけでなく、待機させていた各戦力も反応が消失してしまった。


 マクガレーノの周囲にいた部下たちも、その場で佇んだまま言葉を発さない。

 カフカの魔法は言葉通りの効果を発揮しているようだ。


「まあ、殺してはいないよ。時間が経てば元通りに動き出す」


 殺そうと思えば、もう一度能力を発動するだけで簡単に片付けられる。

 停止した思考に「自害しろ」と吹き込むだけでいい。

 精神に干渉する魔法とはそういうものだ。


 だが、彼女はそれをしない。

 そこまでして命を奪う必要性がない。


「だって、こちらも何ともなかったわけだからね」


 カフカは不敵な笑みを浮かべ、無傷であることを見せ付ける。

 先ほどまで負傷していたはずだというのに、血の跡が残るだけで体は万全のようだった。


「それも何かの仕掛けかしら?」

「気になるなら、戦いを終えた後に教えてあげてもいいけれど――」


――キミが生きていられる保証はない。


 そう言って、カフカが襲い掛かる。

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